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行程・コース

天候

終日雨。強くなったり小降りになったり。

登山口へのアクセス

その他: 行き_
西糸屋山荘の大部屋に前泊。
帰り_
上高地(アルピコ交通)17:30~18:35新島々駅18:39(松本電鉄)~19:09松本駅

この登山記録の行程

河童橋(03:20)・・・明神・・・徳沢(04:34)[休憩 5分]・・・横尾(05:19)[休憩 35分]・・・一ノ俣・・・槍沢ロッヂ(06:47)[休憩 13分]・・・ババ平・・・水俣乗越分岐(07:32)[休憩 3分]・・・天狗原分岐(08:07)[休憩 3分]・・・グリーンバンド・・・槍ヶ岳殺生ヒュッテ[休憩 3分]・・・槍ヶ岳山荘(09:29)・・・槍ヶ岳(09:48)[休憩 20分]・・・槍ヶ岳山荘(10:34)[休憩 20分]・・・槍ヶ岳殺生ヒュッテ・・・グリーンバンド・・・天狗原分岐・・・水俣乗越分岐(12:15)[休憩 5分]・・・ババ平・・・槍沢ロッヂ(12:46)[休憩 30分]・・・一ノ俣・・・横尾(14:09)[休憩 23分]・・・徳沢(15:11)[休憩 3分]・・・明神・・・河童橋(16:20)

コース

総距離
約37.2km
累積標高差
上り約2,573m
下り約2,573m
コースタイム
標準17時間25
自己10時間17
倍率0.59

高低図

標準タイム比較グラフ

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

歩き通したいコースがあり準備をしてきた。この一年の山歩きはそのためのトレーニングでもあった。ところが地震・大雨によって変化があったかもしれない直近のルート情報がコロナ禍のために手に入らない。天気予報もよろしくない。一週間前には計画をあきらめたものの、宿や交通機関の予約はそのままにしてあった。上高地へ向かう車中で地図を眺めながら、25年ぶりに槍の穂先に上がってみようかと思いつく。そうして登った槍ヶ岳は、ふだん1000mから1500mの低山をうろうろしているハイカーに、3000mに上がる戒めを与えてくれたようだった。
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○ アプローチ
元の計画では明け方に西穂高岳に着いている予定だったから前泊。登山者向けの大部屋のある西糸屋山荘さんにお世話になった(写真2)。寝床も食事も簡素だが、清潔な宿でスタッフの対応も気持ちよい。大浴場のカランから湯は勢い良く出ないので、のんびり浸かるにかぎる。一泊二食付き9000円。

○ 槍沢ロッジまで
軒先を出たとたんに本降りの雨の中をヘッドランプは手にもって歩く。道標を照らしながらキャンプ場を抜け、遊歩道は水溜りやぬかるみを避けるつもりがそうもいかない。暗いままの明神を過ぎ、徳沢は目覚めて明かりを灯したテントが多くなる。途中でヘッドランプを消し横尾への到着が5時半前(写真5・6)、軒先を借りて宿が朝食のかわりに用意してくれた弁当を食べる。大きなおにぎりがふたつに小魚の甘露煮・鶏の唐揚げ・佃煮など。たっぷりでありがたいなあと思う。周囲はすっかり明るくなった。
横尾を発って槍沢ロッジ(HP上はロッヂ)に向かうと登山道らしくなる。右から水量の多い支流が流れこんでくるのを何度か渡り(写真8)、小川状態の登山道を歩いてロッジ着。ここで標高1825m。
往復とも上高地〜横尾間が実歩行で2時間、横尾〜ロッジ間が55分。感覚的には、谷川岳に登るために新宿駅から在来線を長々と土合駅まで移動するのが上高地〜横尾、土合駅の地下ホームから462段の階段を上って地上に出るのが横尾〜槍沢ロッジに相当するかな、とは山行終了後の印象。
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○ 槍ヶ岳山頂まで
槍沢ロッジを離れてもしばらく道の傾斜はそれほど変わらないが、ババ平(テント場)を過ぎ、水俣乗越への道を右にわけた標高2100m過ぎから傾斜が急になったと記憶している。まだ1000m登らないといけないのかと呆然としながらあえぎあえぎ登ってゆく。雪渓があらわれ道が横断する場所もある。滑ったら怪我をしそうなので可能なところは下を巻いた(写真18)。
1300、1100……の白ペンキは槍の肩までの残りメートル数らしいが(写真19・21)、これが効いた。ラクになるのではなく、数字がなかなか減らないからキツいのだ。ないほうがむしろ良かったよ、と心中愚痴りながら立ち止まって息を整え、石の階段を登り続ける。
殺生ヒュッテへの道を右にわけ、最後に見かけたのは「200」だったか、しばらくすると右手上方に人の声がする。いま歩いている道はまっすぐ槍ヶ岳山荘へ上がる。槍の頂上を目指すなら一段上の右の道のほうが近いようなので、ガレ場を手をついて上がった。
ほどなく「肩」に着くと、あとはクサリ・ハシゴ・足がかりの金具の連続、手を使った登りになる。頂上近くは急に風が強くなり、風雨にたたきつけられながら最後の長いハシゴを上がって槍ヶ岳山頂に着いた(写真22)。
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○ 山頂にて
風に吹かれたときにはっきり自覚したが、体調に異変が生じた。じつはそれ以前、たぶん標高2500mをこえたあたりだと思うが、うっすらと体調の変化を感じてはいた。頭痛はない、激しい疲労感もない、でも不快な感覚。ごく軽い吐き気がしたのだ。高山病になりかけているかもしれないなと頭の片隅で意識しながら、しかし槍の肩に着いてもとくに悪化していない。ザックを背負ったまま立ち止まらずいっきに山頂を目指してしまった。
ところが、岩場に入ると運動強度は落ちる。先行パーティがあり待ち時間も生じる。それまでハイペースの高強度で歩いていたから体温を保てたが、雨と汗で濡れた体を強い風によって急速冷却されてしまった。おいおい、ヘモグロビンが運んでくる酸素が足りないよな、と筋肉が不平をいっているところに急激な冷えがくわわって血管が収縮する。ますます酸素が足りなくなる。
具体的におこったのは手と脚の痙攣だった。「小刻みに震える」のではなく、がくんがくんと大きく動く。ロレツも回らなくなった。
狭い山頂で立っているのは危険だから座りこむ。降りに備えて手袋を(ここまで素手)出そうとするが、指が思うように動かずザックのストラップをはずすのに手間どる。手袋を取り出してもなかなかはめられない。ヘルメットのあごヒモを調節しようとしてバックルをはずしてしまい、つけるのに時間を費やす。どんどん体が冷えてゆく。
一刻もはやくここから降りよう。山荘で体を温めないと。山頂で「休憩20分」とあるのは休憩していたのではない。穂先には1人・1人・1人・2人と多くて5人いたが、一人が「これじゃ長居は無用ですね」といったとおり、展望はなし、風雨は激しい。20分は降るための準備に悪戦苦闘していたのだった。
細心の注意をはらってハシゴにとりつく。意識ははっきりしているから用心しろよ慎重に行けと肝に命ずるが、手脚の痙攣は自律神経の働きだろうから意思ではなんともしがたい。5本の指がハシゴの桟を、足が岩角を確実にとらえるのをいちいち目で確認しつつ、三点確保でゆっくり降る。肩に降り立ったときには心底ほっとした。
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○ 下山
歩幅の小さい不自然な歩きかたで槍ヶ岳山荘へ。雨具とヘルメットをとり休憩室でココアを注文する。ストーブが点いていたので手をかざすが、なかなか温まらない。今日は天気が悪いから山頂に上がるのは明日にしようかと思って、という3人パーティに、ここに泊まるならそのほうが良いかも、山頂まで濡れてるし風はあるしですごく悪いですから、とロレツの回らない口を動かす。低体温症の入口はみっともないものだ。こぼさないよう気をつけてココアをいただいた。
痙攣はまだおさまらない。標高を下げ体のボイラーに薪をくべなければ症状は改善しないはずだ。そのためには歩くことだ。時間をかけて雨具をつけヘルメットをかぶる。よちよち歩いて下降をはじめた。
10分して痙攣がおさまった。30分後にはなにもなかったかのようにいつもどおりのペースで脚を動かし、水が流れる岩の登山道を先行者を抜きながらとんとんと降ってゆく。降りたらどこでなにを食べようか、早くビールが飲みたいな、などと考える。あきれたものだ。
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○ エピローグ
槍沢ロッジで軒先を借りて菓子パンをほおばり一服する。もう山頂でおきたことなど忘れかけている。
『ジャンダルム周回をやりたかったな。去年、登りそこねた前穂高岳にも上がり、まともな時間に歩き終えたかった。でも目の前の張り紙は「前穂高岳から岳沢小屋に下る重太郎新道は落石が激しく通行困難」だって。ここが通れないならジャンダルムの日帰り周回はやっぱり難しかったなあ』
3時間前のピンチはどこへ行ったのだろう、まるっきりあさってのことを考えている。時間に余裕があるので横尾でも長々と一服する。横尾から上高地までの11kmは単調な道にぶつぶつ言いながら脚を運んだ。
計画のルートをやれないからと渋々の予定変更でなんとなくモチベーションが低いまま上がってしまった山はいつもの1500mではない。「頭ではわかっていたつもり」の3000mの怖さを久しぶりに実感した、雨にうたれ続けた13時間のハイキングだった。
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● 反省と考察
高山病らしい症状があらわれるにいたった原因は、登山ガイドさんの指摘(以下リンク記事参照)するとおりだと思う。ふだん低山中心のハイカーが2500m超をおなじペースで歩こうというのが慢心だ。高山病が主たる疾患、続いておきた低体温は体が弱っているなかで風に吹かれた副次的な症状だと思う。ほとんどの登山者は手袋なしで上がってきていたから。
初期のごく軽い吐き気・山頂に上がっての痙攣のほかは、頭痛・激しい疲労感・意識の障害などがまったくなかったのは幸いだった。
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『ハイペースで一気に標高を上げると高山病になりやすいため、3000m級登山の経験が浅い人は体力に自信があってもゆっくり登ることを心がけましょう。』
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=738

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装備・携行品

【その他】 サレワのMTN Trainerにモンベルのストレッチゲイター。テスラの冬用起毛タイツにモンベルのショートパンツ、マウンテンハードウェアの速乾性長袖シャツ。ペツルのヘルメットとモンベルの雨具上下を全行程で着用。頂上から肩への下りのみブラックダイヤモンドのフルフィンガーグローブ。ザックはロウアルパインの25リッターに、モンベルのヤッケ・薄手フリース・ユニクロのライトダウン、ロールペーパー・ヘッドランプ・スマホ・バッテリー充電器と予備電池・地図、キャメルバックのハイドレーションに水2L。宿の弁当と菓子パン、非常食など。スタート時重量6.5kg(推測)。

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登った山

槍ヶ岳

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3,180m

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