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(信州往還)白泰山から十文字峠(毛木平)ワンデイハイク

栃本関所跡、信州往還、白泰山、赤沢山、十文字峠、毛木平( 関東)

パーティ: 1人 (加藤キーチ(モンターニャ) さん )

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行程・コース

天候

晴れ、多く北面に出るとやや風あり。日中の限られた時間をのぞき、とても冷え込んだ。

登山口へのアクセス

その他: 行き_
秩父駅近くのネットカフェに前泊。秩父駅06:35~06:57三峰口駅07:20(西武観光バス)~07:36大滝温泉遊湯館07:41(市営バス)~08:06栃本関所跡
帰り_
毛木平16:15(軽トラックに拾ってもらう)~16:48信濃川上駅18:02~18:50小淵沢駅…徒歩で移動…中央道小淵沢バス停20:04(京王バス)~22:35バスタ新宿

この登山記録の行程

(丸ガッコ内は地理院地図の表記)
08:25~栃本関所跡スタート
09:11~林道に上がる~09:18
09:42~一里観音(P1395の南)
10:35~白泰山頂
10:50~二里観音=白泰避難小屋(記念碑記号付近)~11:10
11:12~のぞき岩(避難小屋の西南すぐ)~11:16
11:29~(P1729)
12:20~赤沢山(1819.1三角点)~12:35
12:38~往還に戻るが逆方向に進む道迷い~12:54
13:22~三里観音(P1691の西200m)~13:28
13:47~広場(P1860東の林道終点)
14:27~奥秩父林道への下降地点(P1867南300m)
14:52~四里観音(柳小屋への分岐手前)
15:11~十文字小屋・十文字峠
15:40~沢に下りる
16:15~毛木平フィニッシュ

コース

総距離
約21.9km
累積標高差
上り約2,643m
下り約1,938m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

季節としてはあまり良くはないが、どうしても信州往還を歩きたくてふたたび栃本へ向かった。コースタイムを計算すると時間が余る(と思った)。白泰山の他にもいくつかのピークを踏むことを目論み、観音さまを探したり道迷いをおこしたりしながら歩いてみれば、帰りのバスにそれほど余裕はなかった。奥秩父が簡単に歩かせてくれるわけもなく、想像より険しく疲弊した。
赤沢山は強くお奨めしたい。
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○ 白泰山まで
東大農学部の演習林のなかをゆくトレイルは石尾根や長沢背稜同様、傾斜を緩くとり歩きやすい。手入れもされている。往還(=十文字峠への尾根道)をはずれる部分、往還~白泰山頂〜白泰山避難小屋は踏み跡を見失いがちだが危険な箇所はないと思う。ここまではアプローチの延長と捉えてもよいかもしれない。
緊張せずに歩ける栃本~白泰山コースの魅力は4日前に歩いた記録に残したつもりだから、当パートは短く切り上げる。
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○ 三里観音まで
気温が低く避難小屋でフリースを着足す。軽く食べたあと、冷え切った体をあたためるためにP1729へ往復する。ピークではなにも見つけられなかった。
往還に戻り西へ向かうとすぐに悪場に出会う(写真18)。ごく小さな岩場だが左(南面)は崖、手がかり足がかりがはっきりせず緊張する。今日のなかでいちばん悪かった。
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P1818(地図によっては「岩ドヤ」)の南を巻き稜線に戻り、赤沢山(1819.1三角点)への登りにかかる。途切れがちでも踏み跡はある。期待せずに上がった赤沢山はとても好ましい雰囲気だった。急斜面に囲まれこんもり盛り上がったピークは、いかにも山頂でございます、といった風情だ。展望は樹林ごしになるのもかえって奥秩父らしい。辺見尾根の瞽女ヶ岳に似ている。あちらは3人で一杯だが、こちらはもう少し広く6~7人は立てるだろうか。下調べをしているときに栃本から赤沢山へピストンするハイカーがいることに気づいてはいた。そういうことか。同好の方々なんだな、と合点がいく。
ピークから直進して往還に合流できないか試してみるも岩の上に出てしまい(写真25)ここは降りられない。北面にトレイルか獣道か判然としない踏み跡はあるがきょうの冒険はここまで。おとなしく来た道を戻る。
※往還を東進しながら北を巻き上がった記録を帰宅後に見つけた。
ここで「道迷いの第一原則」に引っかかる。少し前から気温が上がっていた。ぬくぬくした気分で眠くなりながら、ああ、気持ちの良いピークだったな、これだけで今日のハイキングは儲けものだ、ぽややんとしながら往還に戻り逆方向に進んでしまう。おなじようなトラバース道をたどり東大農学部演習林の看板をもういちど見かけ、ハッとわれに返る。「何かに気をとられたあとの進行方向に注意せよ」の原則に見事にハマったわけだ。
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20分近くロスし往還を西へ。このあたり、スマホの電池残量が少なく写真を残せていないが、赤沢山の北面を巻きP1691の手前で稜線に戻るまでのトラバース道が全般的に悪かった。崩壊気味の印象なのだ。ボイスレコーダーに「赤沢の巻き部分は通過要注意」と吹き込んでいる。
ざっとさらってみても最近の記録は多くない。可能性として、2019年の台風以前と以降ではトレイルの状態がかなりかわっているかもしれない。ただし、通行に支障があるような倒木などはなかった。
P1691の北を巻き鞍部に着くと三里観音さま。ここでザックを降ろしたのがこの日最後の休憩になった。
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○ 十文字峠まで
三里観音を発ってからが辛かった。鞍部の標高が1630m、峠が2000m。標高400m差は登り降りのオマケつき、あいかわらずときに急斜面のトラバース道は緊張を緩められない。
P1860の基部で奥秩父林道が北からあがり広場を作っている(写真30)。そこから数十メートル、林道を赤沢谷側に伸ばすつもりだったようで工事の跡があるが(写真31)、またトラバース道に戻ってしまう。
緊張から開放されたのは奥秩父林道への下降の道標がある平場(写真34)あたり、アップダウンから逃れることができたのは柳小屋への分岐を過ぎてから、だったと記憶している。奥秩父らしい苔むしたトレイルを歩く愉しみを味わいたかったが、疲労に加えてバスの時間が気になっていたのが残念だ。
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○ 十文字峠から毛木平へ下降する
あちこちに散らばるブルーシートから遠目に十文字小屋の所在はわかる。立ち寄る時間はなかった。ピンテがずいぶん多いトレイルを降りながら、五里観音さまだけは逃さないで下りようと考えていた。
やがて沢に降り、ときに渡渉しながら沢沿いをゆくがたいへん荒れていた(写真41、42)。トレイルの倒木などは取り除いてもらっているが、河床は流された石で一杯。不安になりながらスピードを落とし、観音さまを探したがとうとう見つけることができなかった。
毛木平着が16時15分、梓山発のバスが17時33分。バス停で20~30分は時間が余る計算だ。ハイドレーションは凍ったままだし、ザックを降ろさなかったから道中テルモスの紅茶も飲めなかった。まず喉を潤してから一服し、場所があれば着替えもできるな。算段しながら駐車場を横切りはじめると、手前で追い越していった軽トラックが止まっていて「どこまで?乗ってゆくかい」と声をかけてもらう。渡りに船、ザックを荷台に預けて助手席の客になった。
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● エピローグ
日曜日にもかかわらず山仕事の車だと思っていたら、甲武信を往復してきた地元のかただった。驚くことに80歳。結局、「うちはもっと下だから」とバス停を素通りし信濃川上駅まで送ってもらう。車中、対岸にひときわ目立つ山がある。
― あの山は?
― 天狗山。登りにくる人、けっこういるよ。
― 正面からは難しそうですね。
― 岩がボロボロだからねえ。縦走路があるんだよ。
山の話をしたり、
― 川上村から宇宙飛行士が出たんだよ。もうすぐ……ほらこれが実家だ。
なんて地元案内をしてもらっているうちに、つい白状する気分になった。いつかはこの日が来るのだから。
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はじめて単独で山登りらしい山登りをしたのがこのエリア、そのままはじめて遭難した。高校2年のときだ。
当時は山登りよりサイクリングに熱心だった。広く読まれていた雑誌が、よせば良いのに「山岳サイクリング」の特集をした。もちろんピークハント目的ではなく、たとえば奥秩父林道を稜線まで上がってみる、なんてコースの紹介だったと思う。
しかし馬鹿な高校生はこう考えた。サイクリングプラス山登りか。よし。どっちもやってるんだから、峠まで上がって○○山を目指そう。小屋で一泊して翌日は小淵沢へ降ろう。
たしか10月の連休だった。輪行袋に入れた自転車を夜行で着いた信濃川上駅で組み立て、千曲川沿いに登り川端下で南に折れる。すでに林道から大石がゴロゴロ、自転車は押し上げた。峠に着きそのまま稜線に入ったが、自転車を押したり引いたり担いだり、いくつかのピークを越え巨岩が点在する山頂までの記憶がまったくない。思い出すのは山小屋が見つからず途方にくれているシーンからだ。
もう日が暮れている。ランプで照らされた空間をガスが流れてゆく。自転車を置き大石のあいだをあっちへ降りたりこっちを探ったりしたが、山小屋の位置がわからずルートも判然としない。万事休して叫び続けた。おーい、誰かいませんかー、と。
しばらくして鐘の音がした。カンカンと鳴る音を聞き、とりあえず助かるかもしれないと全身の力が抜けた。
小屋の主人はひと言も口をきいてくれなかった。どうしたんだ、だいじょうぶかなどと聞いてくれなかった。叱ることもしなかった。山の格好ではなくセーターにペラペラのウインドブレーカー姿の子供が宿代を払うときでさえ、いっさい口を開かなかった。
翌朝、目が覚めたのは8時くらいか。登山者はすべて出発したあとの、口をきいてくれない主人と二人きりの山小屋は非常に居心地が悪かった。濡れた衣類を着込み下山をはじめたが、前日昼からなにも食べていないので歩けない。行き違う登山者たちに、なにかわけてもらえませんかと物乞いみたいな真似をして食いつなぎ、この日も死にそうな思いをして増富ラジウム鉱泉にたどりついた。
真新らしい丸石のランドナーを傷だらけにしたのも残念だったが、おれは馬鹿なことをしたんだなあ、愚かだったんだな、気づかされたのがとてつもないショックだった。
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この遭難話をかいつまみ、助手席で話した。ひとっ言も口をきいてくれないので、自分の馬鹿さ加減が身にしみましたよ、と。ハンドルを握りながら笑い、
― ○○○さんだね。仲間だったんだよ。そういう人だったなあ、あの人は。
いまは娘さん夫婦が山小屋を切り盛りされているそうだ。
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足を向けるなら真っ先にその山小屋を訪ねるべきだと、ずっと思ってきた。お礼とお詫びをしなければこの山域にもういちど入る資格はオマエにはないだろ。いっぽう、その山名と山小屋を地図で見かけるだけで、馬鹿な自分を思い出して嫌な気分になってしまう。三つ子の魂百まで。いまでもそう変わりはないが、少なくとも「ここから先は馬鹿」くらいの線引きはできるようになったのだろうか。
何十年も経ち、避けてきた出発の地点に戻ろうとしている。当時の記憶がますます大きくなってゆく。
「歳を経るにつれ、忘れていた幼いころの記憶が蘇る」。かたや「脳は記憶を選別する」。好ましい記憶は増幅し、そうでないものは消去される。「人が『わたし』というとき、無意識に選別した記憶のかたまりを指している」とウンベルト・エーコは言う。
愚かだった若いころを思い出すのが好ましい記憶のはずもない。しかしじっさい、この記憶に呼び起こされて2年前にハイキングを再開したのだ。いったいどこに連れて行かれるのだろう。
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/ウンベルト・エーコ『記憶について』第一部/
https://youtu.be/Hq66X9f-zgc
.
(了)

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フォトギャラリー:43枚

1.
秩父市営バス「せせらぎ号」川又線。シートは12席だがコロナ対応で10席。

2.
栃本関所跡、ここで降りる。

3.
入山口。

4.
両面神社。地図上の神社マーク。

5.
いったん舗装された林道に上がり対面のトレイルに入りなおす。ここまで車でくる記録も多い。

6.

7.
一里観音さま。どうぞよろしくお願いします。

8.
前の写真とおなじ位置、別の角度で。

9.
白泰山頂。

10.
二里観音さま。

11.
白泰山避難小屋。

12.
さいきんのお気に入り、ロッテの「ガーナ・特濃ガトーショコラ」。
腹持ちが良い気がする。半生タイプなので疲れていたり水分なしでも飲みこめる。圧迫されても変形するだけでバラバラにならない。おいしい!ハイドレーションが凍りスニ○○ーズがカチカチだったのに柔らかいまま。
セブンとファミマには置いてあります。

13.
宿泊者がいたらしくストーブの熾火が残っていた。

14.
小屋からすぐの「のぞき岩」からの眺望。山座同定をやらないのでどこがどこやら。アプリでも入れますかw
左。

15.
正面。

16.
右。

17.
往還をゆく。P1729付近。

18.
とつぜんあらわれる悪場、振り返って撮影。左の潅木を頼りにしたがこの細さ、体重のあるハイカーは要注意かと。右(南面)は崖。

19.
トラバース道が続く。

20.
おなじく。

21.
右に進む往還をわけ、赤沢山ピークを目指す踏み跡。

22.
さきのピークが山頂。良い感じでしょう。

23.
三角点と立ち木に手製の山名標識。

24.
アップ。

25.
直進して往還に戻れるか試みるもこの岩のむこうが崖で引き返す。踏み跡?は右(北面)についていた。

26.
帰宅して調べてみた。鍾乳洞はこの地点の「上」らしい。
http://1203.air-nifty.com/_aozora/2013/12/post-cc87.html

27.
三里観音さま。
写真が飛んでいるが、本文中に記したとおりここまでのトラバース道は剣呑。

28.
道中。

29.
道中。右に折れる地点。

30.
広場にて。右から歩いてきた。林道は左向こうから上がり撮影者の背後に続いている。

31.
ごく短い区間、林道の続きを歩く。

32.
すぐまたトラバース道に戻る。

33.
ときおり見かける沢はすべて凍結。

34.
ここを左に下ると四里観音避難小屋らしい。立ち寄らず。

35.
かなり距離をおいて四里観音さま。

36.
そのとき周囲の風景。

37.
奥秩父らしいトレイル。

38.
十文字小屋。

39.
トラバース道から開放される下降路。

40.
対岸の小滝をズームで。

41.
お祭り状態のピンテ。

42.
沢の様子。五里観音さまを探すも見つけられず。。。

43.
1時間待ちの信濃川上駅。建て替え中だがプレハブの待合室はエアコンつき、別棟でトイレあり、自販機あり。誰もいないのでぜんぶ着替えた。

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装備・携行品

【その他】 ラ・スポルティーバのアキラ。テスラのタイツにモンベルのロングパンツ。モンベルのメリノウール+マウンテンハードウェアの速乾性長袖シャツの重ね着にモンベルの綿入りアウター、バラクルバ、ペツルのヘルメット、ブラックダイヤモンドのフルフィンガーグローブとモンベルの綿入りグローブ。ザックはロウアルパインの25リッターにモンベルのギアホルダーを外付け、ココヘリ発信機・モンベルのチェーンアイゼン・モンベルの雨具上下・薄手フリース、ロールペーパー・ヘッドランプ・スマホ(カメラ+GPS)・バッテリー充電器と予備電池・キャメルバックのハイドレーションに水1.5Lとテルモス0.4L・菓子パン・菓子・非常食のカロリーメイト、下山後の着替え一式・サンダル。スタート時重量8.0kg。

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登った山

白泰山

白泰山

1,794m

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