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ジャンダルム周回(西・奥・前穂高岳)ワンデイ スクランブリング

西穂登山口(田代橋)、西穂独標、西穂高岳、天狗岳、ジャンダルム、奥穂高岳、吊り尾根、前穂高岳、重太郎新道、河童橋( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 1人 (加藤キーチ(モンターニャ) さん )

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行程・コース

天候

晴れときどきガス、下山直後に激しい雷雨があり上高地は停電、松本電鉄は運休

登山口へのアクセス

その他: 行き_西糸屋山荘の大部屋に前泊
帰り_上高地17:30(アルピコ交通)~18:30ごろ新島々~19:10ごろ松本駅19:30(あずさ58号)~22:07新宿駅
※落雷の影響で松本電鉄はストップ、アルピコ交通の代替バスで松本駅へ

この登山記録の行程

西穂登山口(02:10)・・・上高地・焼岳分岐・・・西穂山荘(03:39)[休憩 3分]・・・西穂独標(04:29)[休憩 26分]・・・西穂高岳(05:44)[休憩 5分]・・・天狗のコル(08:01)[休憩 4分]・・・ジャンダルム(09:21)[休憩 32分]・・・奥穂高岳(10:58)[休憩 3分]・・・最低コル[休憩 8分]・・・紀美子平(12:06)[休憩 3分]・・・前穂高岳(12:30)[休憩 13分]・・・紀美子平(13:06)・・・岳沢パノラマ[休憩 3分]・・・岳沢小屋(14:40)[休憩 5分]・・・河童橋(16:05)

コース

総距離
約14.6km
累積標高差
上り約2,492m
下り約2,485m
コースタイム
標準19時間25
自己12時間10
倍率0.63

高低図

標準タイム比較グラフ

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

2年前、ハイキング再開の半年後にジャンダルムを歩いている。馬鹿なことをしたなあと思う。よく無事に帰ってこれたものだ。内容がグダグダなうえに時間切れで前穂のピークを踏めず、バスターミナルのベンチで予定外の後泊までする破目になり、自分のなかでは「ちゃんとしたデイハイク」になっていなかった。
昨年再チャレンジしたがいちどは悪天候。もういちどの好天には松本駅でとなりのJR大糸線に乗り間違えるという痛恨のミスをしでかしている。
龍神〈リョウカミ〉様にはけっこう気にいられていると思うが、穂高の山々にはだいぶ嫌われている様子だ。ドキドキしながら上高地にむかった。
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(参考)"スクランブリング"=「ロープ使用が必須ではないが、手を使う頻度の高いハイキング」の意味で使用しています。
https://ymtours.exblog.jp/26402046/
https://www.redbull.com/jp-ja/beginners-guide-scrambling-tips
(参考)2019年の、今となっては無謀なチャレンジ
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=167616
(参考)2020年、大雨で槍ヶ岳にプラン変更、高山病と低体温症にかかる
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=195886
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● 当日の記録は写真のキャプションに文字多めに残しました。参照ください。
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○ 山行を終えて
2年ぶりのジャンダルムがまるきり別の山のようだったのには驚いた。高くて細い場所であれだけ味わった恐怖や、ルートに迷って押し潰されそうになる不安や焦燥を、感じることがなかった。クサリのない垂直にちかい岩場を岩と向きあいクライムダウンした記憶が強烈なのだが、今回そんな場所はひとつもない。前回はルートを外して無理やり難しいところを降っていたのだろう。怖いはずだ。
奥穂高岳の山頂で、別のハイカーが歩いたみたいだと不思議な感覚にとらわれる。昔の自分ならどこでどう間違うだろうかと記憶を探ってみたが、手繰りよせることができなかった。自転車に乗り慣れたひとが、はじめてサドルにまたがりハンドルを握ったときの「不安定で思うにまかせない」感覚を思い出せないのと同じかもしれない。
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○ この稜線を歩き通す条件
ひとりで歩くハイカーに、少しでも客観的な視点を提供することでプランニングの参考になればと思う。
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まず十分な山体力が備わっていることが必須となる。ふだんの移動速度がコースタイムの0.8程度だと、記録者自身なら心もとなく思うだろう。
正しくルートを追うことができれば、何十とある難所のひとつひとつはシビれるほど難しくはない。ただ高いところを行くから、この稜線はミスに対して寛容ではない。5時間から10時間のあいだ、集中力をMAXに維持できるかどうか。基本になるのは体力のはずだ。
体力とスピードがあればこそ、周囲を注意深く観察する余裕が生まれる。クサリを見落とし岩場を降る危険に身をさらさずにすむ(※)。プランが予定どおりに進まない場合でも思考し判断する冷静さを保つことができる。天候が悪化したとき、安全地帯まで逃げる時間を短縮できる。
(※前述のとおり記録者も何ヶ所かやったし、動画サイトを眺めていると、先行パーティのミスに気づかずぞろぞろくっついて天狗のコルへ岩場を降る etc の「クサリ場見逃し」は多い)
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ふたつめは山歩きの経験量。「昔取った杵柄」には遠慮してもらい、直近の2年間をほぼ毎週歩いているかどうかが問われている。経験が豊富になるほど、稜線の難所は相対化され難度が低くなってゆく。あるいは難所を分解してポイントを絞ることができる。「いま歩いているところは変だぞ」と気づくこともできる。
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みっつめ、定期的に登山道ではないオフトレイル=バリエーションルートを歩くことをおすすめしたい。記録者が歩いているのは秩父や奥多摩のヤブ山ばかり、ジャン周辺とは山の様相がだいぶ異なるのだが、自分でルートを探すクセがつき「まてよ、ここじゃないな。危なすぎるもんな」の感覚が身についたのは大きい。
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よっつめ。「細くて高い」高度感のある場所が苦手なら、やはり克服しておく必要がある。あまり思い出したくない記憶だが、社会人になり仲間と一緒にはじめたゲレンデスキーの「上級者コース=斜度30度くらい」を降れるようになったのが、いちばん遅かった(「お~い○○くん、はやく下りてこいよ~」)。高いところが苦手だったのだ。滑ってもスリキズですむトラバース道から徐々にはじめて、歩行バランスに自信がもてるようになると高度感も気にならなくなっていった。関東なら埼玉・小鹿野町の二子山の稜線を問題なく歩ければ、この点はクリアしたことになる。
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(参考)
素人ハイカーがたどり着いたガイドラインでは信憑性に乏しいだろうから、ふたりの山岳ガイドさんの文章を紹介する。
"バリエーションルート初級以上コース 参加条件及び基準”
②登山は観光の延長ではなく、あくまでもスポーツの一分野としての認識を持っていること。
④平均して少なくとも10日に1回以上は合計標高差1000m以上、又は6時間行動以上のトレーニング山行(又は本番山行)を必ず行っていること。
http://eguchi-mt.sakura.ne.jp/koubovari.html
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"『第四目標:体重の20%重量の荷物を背負って、1時間あたり標高差450mを登ることができる、且つ、10時間連続して山を歩き続けられる。』~「奥穂高岳~ジャンダルム~西穂高岳」ルートを安全に楽しむなら、第四目標を継続的にクリアできるようになってから計画してはいかがでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/byline/katotomoji/20190823-00139378
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○ これから
繰り返し眺めていた馬ノ背通過の動画がある。ガイト登山のパーティなのだが、先頭を歩くガイドさんの脚運びが異次元すぎる。
https://www.youtube.com/watch?v=XzEnPq2ijQY
今回、一歩でもこの脚運びに近づこう・手を使わずに歩いてみようとしたが、現場ではベタに手を使うことに終始したw。将棋でいえばアマ初段と奨励会を抜けたプロ四段くらいの、圧倒的な差がある。
2年前、東京に戻ってから1週間ほどは頭が疲れてしまい日常生活に変調をきたした。今回はむしろリセットされ、
― 残り時間はそんなにないが、いっぽうで改善の余地はずいぶんある。少しでも安全に、ラクに遠くまで歩けるようになりたい。
山に向かうのが新鮮になった気分だ。穂高の山々にお礼を言いたい。
.
(了)

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フォトギャラリー:52枚

1.
昨年「電車乗り間違え事件」をおこした現場。高速バスが中央道の大渋滞に巻き込まれ、新島々ゆきの終電ギリギリに松本駅に着いたものだから気が急いていた。
部活帰りの少年少女と一緒に走って飛び乗ったのが大糸線だった、というお粗末。

2.
山中よりよほど念入りに行き先を確認する。進路よし!

3.
上高地に着く。予報どおり、このあと雨が降り出し夜半まで降り続いた。
ここまでが前日、7月31日土曜日。

4.
当日。01時起床、01時40分に西糸屋山荘を出る。02時10分に西穂高登山口スタート。
山行をお釈迦にしたくないのでヘッドランプは2丁持ち。

5.
西穂山荘。ちょうど灯りをともしたテントが多くなる時間。道中は前日の降雨で濡れていた。

6.
独標へ向かう途中で夜明け。

7.
独標。草むらの水滴と汗で体が濡れており、風に吹かれ震えながら宿の弁当を食べる。おかずは残し、おおきなおにぎりをふたつ。

8.
西穂山荘方向を振り返って。ランプの灯りが点々と続く縦走路。

9.
これから向かう西穂方向。

10.
ピラミッドピーク。おそらく西穂山荘をスタートしたらしいパーティやソロ登山者が数人、先行していた。

11.
西穂高岳。ふだん山中で泊まらないからヘッドランプ山行でないと出会えない景色。やっぱり山は朝が良い。そしてここまでが公の「一般登山道」。

12.
おなじく、山荘方向を振り返って。

13.
おなじく、槍ヶ岳方面。

14.
おなじく、笠ヶ岳方面。

15.
西穂を発ち、P1から西穂を振り返る。
前夜の雨で足元がスリッピーな状態が間ノ岳をこえるあたりまで続いた。

16.
P1。西穂から直線で100mと少し。

17.
道中のサイン。朝の太陽が真正面なので手で遮り撮影。

18.
道中。「たばこー!落としてませんかー!」なんてやりとりがピーク越しに聞こえることも。

19.
なぜ撮ったのか思い出せない。おそらく赤岩岳付近=西穂と間ノ岳の中間P。

20.
間ノ岳を見上げる。真ん中のコブみたいな小尾根を左に乗り越してから上に向かうサインがつけられている。
「2020年の地震多発で足元が落ち着かなくなった」とされる登り。落石をおこさないよう、足運びに注意した。

21.
やや時間が経過して間ノ岳からの降り。難しいとされる、たしか2ヵ所あったクサリ場の下降の1本目を振り返って。
足をかけるとグラつく岩があり「こいつはもうすぐ抜けるな」と思い撮ったのだが、どれかは忘れた。

22.
おなじく2本目。評判の悪い「途中で終わるクサリ」。

23.
逆層スラブを見上げる。てっぺんの登山者とはクサリ場をゴボウで登る途中、この日はじめてのすれ違い。

24.
逆層スラブをこなすと天狗岳。消えかかっているが。

25.
天狗のコル。クサリを下降するあいだ待ってくださったソロ男子の登り。
「わっ!」と叫んで足を滑らせ、こちらの心臓にも悪かった。

26.
おなじ場所。フレームの外、左には大昔の避難小屋の基礎部分のみ残る。少し調べてみると落石で潰れたらしい、場所が場所だけに。

27.
気分は「待ってろよジャンダルム!」なのだが天狗のコル~ジャンの標高差300mが厳しい。泣きながら帰りたくなるレベル3。

28.
徐々に徐々に近づく。

29.
ジャンのてっぺんに二人、左下には降りてきた一人。写真撮影地点の直近のピークはコブ尾根の頭というらしい。

30.
基部。右にクサリと、その右上に「オクホはこっち」のサイン。ジャンのピークはここを左へ。

31.
雪渓のお尻。

32.
ジャンダルム。素敵な演出のおかげでたどり着いた感激もひとしお。
ピークに先着のお二人はトランシーバーを持ち、上空のヘリが無線交信をはじめるたびに雑談を中止し聞き入っていたから、遭対協のメンバーさんかも。

33.
しみじみと自撮り。弁当の残りのおかずとコッペパンひとつの昼ごはん。SNSに自慢の投稿と返信w

34.
前回も今回も「ロバの耳」がどこかわからず通り過ぎてしまう(ルートはピークを通過しない)。次回の課題だな。
すでに馬ノ背へ向かう途中。

35.
馬ノ背入口。細くて高いのはたしかだが、進路が明確でホールドがはっきりしている。高度感さえ克服できれば難しくないはず。

36.
馬ノ背を歩き終え、奥穂ピーク少し手前、振り返って。「一般登山道ではありません」。

37.
爺さんらしく説教くさい話を少し。たびたび感じるものですからね。
ピークの標識・標石のわきで休憩に入ったり、火器を使い出したり、はなはだしいのは濡れたアウターをひっかけて乾かしたり。
景色を楽しんで写真1枚撮ったらさっさと離れて休みませんか。人気の山こそ、みんなの場所ですから。

38.
吊り尾根へ。ガスがまた素晴らしい。

39.
おなじく、振り返って。

40.
梓川・上高地を見下ろす。

41.
吊り尾根はほとんどトラバース道。

42.
雷鳥の親子。かわいすぎてひとつポケットに入れ持ち帰ろうかと思った。

43.
紀美子平。今田重太郎さんのお嬢さんの名前なのか。

44.
紀美子平から前穂を見上げて。サインがベタ打ちだが、この山はサインがないととても難しいように思えた。

45.
前穂高岳。2年越しの宿題をやりおえた達成感からリラックスしてしまい、一緒に上がったソロ女子にべらべら話しかけるハイテンション。迷惑をおかけしました。

46.
紀美子平に戻る。登りで脚を使い果たし、あとは並足で降るのみ。
トレランシューズは軽くて良いが、岩稜でやや滑る印象。来年はビブラム底のアプローチシューズで歩こうかな。もうひとつ、グローブはフルフィンガーを用意すること。細かなキズをたくさん作った。

47.
重太郎新道を降る。下降路なのに上るハシゴ。

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雷鳥広場。

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カモシカ立場。

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岳沢小屋。見えてからなかなか近づかない長い下り。重太郎新道はハシゴやクサリが多い。

51.
やっと着いた~

52.
登山道から自然探勝路に下りたとたんに激しい雷雨。山中でこの雨に遭っていたら、きょうの装備では困ったことになっていただろう。3000mは気象遭難がいちばん怖い。

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装備・携行品

【その他】 ラ・スポルティーバのアキラ二代目。テスラのタイツにモンベルのショートパンツ、マウンテンハードウェアの長袖にブラックダイヤモンドのハーフフィンガーグローブ、ペツルのヘルメット。
荷物は軽量を旨として削ぎに削いだ。フェリーノの17Lのザックにハイドレーション2L+モンベルのフレックスウォーターバッグ1L=3L(残量1L)、ヘッドランプ×2、宿の弁当、菓子パン、非常食のカロリーメイト、塩あめ、雨具上のみ、エマージェンシーシュラフなど。スタート時重量推定5kg。

みんなのコメント

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  • モンターニャさん、お久しぶりです。またやりましたね、ジャンダルム。冷静なでわかりやすい分析にいつも感心させられます。相変わらず精進を重ねられているようで、素晴らしいと思います。自分はまだ実力不足で挑戦する自信がありませんが、目標があるという事が大切だと考えて少しずつ準備しております。今後とも参考とさせていただきます。シャドー

  • シャドウさん、こんにちは。また歩いてしまいました(笑
    ジャンダルム周回ルートを「きちんと歩き通す」のを目標にし、そのために後ろ指さされようが2年間山に通ってきました。簡単な稜線ではありませんが、しかし今回難しいとも感じませんでした。このトシでも成長できるんだなあと驚いています。
    目標をもつと張り合いがあって楽しいですよね。一歩一歩ちかづき、シャドウさんの「その日」がやってくるのが楽しみですね。

登った山

奥穂高岳

奥穂高岳

3,190m

前穂高岳

前穂高岳

3,090m

西穂高岳

西穂高岳

2,909m

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