富士山に登る前にも、登ったあとにも、富士山頂を目指す人たちに贈るWebサイト
富士山ナビ
富士山豆知識 富士山の謎に迫る!

 富士山にはさまざまな伝説、謎が存在する。せっかく富士山に登るなら、そんな富士山のさまざまな話を知っておいて損はない。

 普段の生活では、まったく役に立たない知識でも、富士山に登る際には、きっと、必ず、間違いなく役に立つ知識が満載!

初めて富士山に登った女性は、チョンマゲを結っていた

 富士山は今でこそ性別、年齢を問わず誰でも登れる山であるが、1872(明治5)年までは、女人禁制の山だった。そんな女性禁制の時代に、男装して登った男(女)がいるのだ。

 女子禁制が解禁される40年も前の1832(天保3)年9月、「高山たつ」という女性は男の髷を結い、男装してに吉田口から登頂したという。これが、記録に残る女性の初登頂となっている。

 高山たつは、男女平等を説く富士講の小谷三志らとともに登り、雪の降った山頂にこごえながらもたどり着いたとされている(一緒に登頂した三志の日記に記されている)。なお、外国人では、1860(万延元)年、イギリスの初代駐日公使オールコック一行が登頂している。

富士山頂は全部で9つもある

 遠くから見ると、富士山の山頂は平らに見えるが、行ってみると平らどころか険しい尾根道である。富士山の山頂部は、火口を取り囲むように9つの峰があるのだ。

 吉田口・須走口の頂上の久須志岳、成就岳、伊豆ヶ岳、朝日岳、御殿場口の浅間岳、駒ヶ岳、富士宮頂上の三島岳と、日本最高標高の3776mの剣ヶ峰、そして白山岳の9峰に囲まれている。

 ちなみに最高峰は、富士山測候所のある剣ヶ峰で、これが一般的に富士山頂と言われる場所だ。2002年8月に国土交通省国土地理院によって三角点わきに設置されたプレートによれば、剣ヶ峰の正確な標高は3775.63m。世界測地系による位置は、北緯35度21分38.261秒、東経138度43分38.515秒となっている。

 なお、山名には仏教にちなんだ別名もある。例えば、久須志岳は薬師ヶ岳、朝日岳は大日岳、伊豆ヶ岳が阿弥陀岳、成就ヶ岳が勢至ヶ岳などだ。

 これは明治維新前後の神仏分離政策で、浅間神社境内である富士山頂にあって、仏教色の濃い地名が改称された結果である。ただし、朝日岳だけはその名があまり定着せず、現在も大日岳(大日如来にちなむ)と呼んだ方が通りがよい。

富士山で初めてスキーをしたのは、日本スキーの父

 日本人に愛されてきた神聖な山、富士山だが、スキーで一気に滑降となると、日本人が初めて挑戦したわけではない。最初に挑戦したのは、日本に初めてスキーを伝え、「日本スキーの父」とも称されているオーストリアの軍人レルヒだ。

 レルヒ少佐は、1911(明治44)年に友人クラッセルと九合目からスキー滑降した。これが富士山でのスキー滑降の最初として記されている。

 なお、山頂からのスキー滑降を成し遂げた第1号は日本人で、1935(昭和10)年、学生の筧弘毅と勝田甫だ。雪のコンディションがよく、風のおだやかな気象条件に恵まれ、東面の不浄沢から太郎坊まで一気に滑降している。

富士山頂は、かつては日本最大の賽銭箱だった

 上記の8峰に囲まれた山頂火口は、かつて日本最大の賽銭箱であった。富士山そのものを御神体としてあがめていた信仰登山の時代、無事登頂した人々は、さまざまな御利益を願って噴火口にお金を投げ入れていたのだ。つまり直径800m、深さ200m、東京ドーム約40個ぶんが入る火口そのものが巨大な賽銭箱だったのだ。

 なお、現在では自然保護の観点からも、火口にお金などの異物を投げ入れてはいけない。くれぐれも注意してほしい。

富士五湖は、かつて富士三湖だった

 富士五湖として親しまれている、河口湖、山中湖、本栖湖、精進湖、西湖は、1万年以上前、富士五湖は3つの湖だった。現在の青木ヶ原一帯に広がる大きな「古せの海」と「古河口湖」それに山中湖と忍野地域にまたがる「宇津湖」の3つであった。

 しかし、「古せの海」が青木ヶ原溶岩流によって、本栖湖、精進湖、西湖に分かれ、「古河口湖」は形や大きさが変化して現在の河口湖に、「宇津湖」は鷹丸尾溶岩流によって分断され、一方が山中湖に、もう一方が干上がって忍野地域になった。

 ちなみに本栖湖、精進湖、西湖の標高はともに900m、河口湖は最も低くて831m、山中湖が981mである。水深は本栖湖が126mで最も深く、つぎに西湖76m、河口湖と山中湖が約15m、一番浅いのは精進湖で約12m。

富士山の金剛杖は、富士山自身をデフォルメした杖だった

 富士講の食行身禄という行者によると、富士山には八角の金剛杖が良いという。この食行身禄という人物、物見遊山で富士山に登る風潮を嘆き、富士山の烏帽子岩で断食の末に死をもって人々の目を覚まそうとした人物。その彼の遺言に、「八角の金剛杖を使って登った方がいい」という言葉があるという。

 というのも、富士山には8つの峰と、八百八沢のうち大きな8つの沢という説があり(最近では9つの峰とされている)、山が「八」というかたち。実は杖の側面の八角は、これらを表し、杖の頭が丸いのは富士山の御神体を表すものだという。つまり、金剛杖は、実は富士山の形をしているのだ。

 ちなみに五合目の売店で「富士登山杖」として売られる金剛杖の相場は、鈴つき1000円、鈴と旗つき1200円。これに合目ごと、山小屋で1回200円の焼き印を押してもらいながら登るのが慣例。実際、富士登山ではこの八角形の杖が役立ち、とくに下りでは重宝すること間違いない。

山頂の金明水、銀明水は、本当に水が湧き出ていた

 地形図を見ると、富士山頂には金明水と銀明水という、ふたつの「水」がある。まさかこんなに高い場所に水が湧くのだろうかという疑問を持っている人も多いだろうが、予想どおり現在は水は涸れている。

 「最初から湧いていなかったのでは?」という疑問については、間違いなく湧いていた。富士山頂にある神聖な泉としてあがめられてきた金明水と銀明水は、調査の結果、溶けた雪が岩から染み出して浅い井戸に溜まったものとされている。

 金明水は白山岳と久須志岳の間、銀明水は成就ヶ岳と駒ヶ岳の間の御殿場口頂上にある。お鉢めぐりで火口縁を1周するときにそれぞれ見つけてみよう。

 なお、登山シーズンの夏でも、富士山頂では、残雪や岩に垂れ下がる氷柱を見ることができる。

 ところで、水といえば富士山には年間30億t以上の降雨量があり、植物に吸収される以外は山の内部を流れ下って地下水になる。1年間で地下水として涵養される量は、全体で数億ともいわれる。富士山は天然のダムでもあるのだ。

富士山にかかる雲の形で、天気や気温は、ある程度予測できる

 「山頂を覆う笠雲の、ひとつ笠は雨の兆し」「頂の上空にある、はなれ笠は日和の兆し」など、富士山山麓には、富士山と雲に関係したことわざも多い。昔から人々は富士山にかかる雲の様子を見て、天気を予想し、農作業や生活に役立ててきた。

 実際、河口湖測候所が昭和8年から27年までの20年間、富士山の雲形を観測、分類し、その予報精度の高さが証明されている。

 富士山にかかる雲のなかでも、笠雲と吊し雲が有名だ。ともにレンズ雲の一種で、富士山だけでなく、山であれば比較的よく見られるもの。ただ、富士山のものは、その美しさと変化が特有で、形によって笠雲が20種、吊し雲は12種にも分けられている。


■変幻自在の空の語り部を、さらに読み解こう

 笠雲と吊し雲の出現時の気圧配置は、ほとんどが日本海低気圧型のときであるが、ひさし笠は南岸不連続線型、うねり笠や、よこすじ笠は日本海低気圧と南岸低気圧型のときなど、雲の種類と気圧配置の関係も密接である。

 いずれの場合も現れている時間は、2~3時間が多い。笠雲の出た当日または翌日に、雨の降る確率は72%、吊し雲の場合は82%となる。笠雲と吊し雲が同時に現れるのは、単独で現れる日数の10%以下で、雨の降る確率は70%となる。

 このように笠雲や吊し雲は悪天の兆しとなることが多い。しかし、なかには「日和笠」と呼ばれ、好天の兆しとなるものもある。はなれ笠、つみ笠などがそれである。吊し雲は「雨俵」とも呼ばれるほど、この雲が出ると雨となる確率は高い。なかでも、だえん吊しがもっとも多く見られ、次につばさ吊しが多い。

 笠雲でも、とくに降水確率の高いのが、ひとつ笠、ひさし笠、まえかけ笠、えんどう笠、れんず笠などで、これらを総称して「雨笠」と呼ぶ。強風の兆しとなる、みだれ笠、とさか笠は「風笠」とも呼ばれる。また、雨風ともに強い荒天の兆しとなるのが、にがい笠、かいまき笠、はふ笠、おひき笠、すえひろ笠、うず笠で、「風雨笠」の別名もある。富士山の雲は古くから人々に愛され、絵画などに描かれてきた。

(文=栗田和彦/参考文献=『富士山にかかる笠雲と吊し雲の統計的調査』湯山生著・気象庁「研究時報」24巻・報文 『富士山ブック2004』より)

富士山ブック2018

発売日 2018.05.114発売
販売価格 926円+税

「3776m 日本のテッペンへ!!」富士山4大登頂ルート&お鉢巡り徹底ガイド、富士山登山情報のバイブル!