高さ975m断崖絶壁。ロープ無し、素手で登りきる。映画『フリーソロ』エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ監督インタビュー

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本年度アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞受賞、「人類史上最大の挑戦」と呼ばれる前人未踏のクライミングを描いたドキュメンタリー映画『フリーソロ(原題「Free Solo」)』が、いよいよ9月6日(金)より全国で順次公開される。公開前より注目度の高い本作品。監督、兼プロデューサーのエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィに、主役のアレックス・オノルドや作品について聞いた。

 

■エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ [監督、プロデューサー]

今までに監督として手掛けた作品には、『MERU/メルー』(2016年アカデミー賞のショートリスト入り、サンダンス映画祭2015観客賞受賞)、『Incorruptible(原題)』(インディペンデント・スピリット賞2016などがある。全米監督協会と映画芸術科学アカデミーの会員。夫で共に本作を手掛けたジミー・チン(監督・プロデューサー・撮影監督)とニューヨークで暮らしている。本作で初めて米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞の快挙を果たした。

 

− アレックス・オノルドと過ごしていて、彼のどんな部分に惹かれますか?

オノルドは、品格を大事にしています。“こう生きるんだ”という目的・意図を大事にしているところが素晴らしいです。子供のころは野菜を食べることが怖くて、人とハグするのも、人と話すのも怖かった。そんな人物が恐怖と向き合って、大きな夢を達成するために恐怖や苦手なことを乗り越えていきます。不可能なことを可能にしていく彼の生き様が本当に素晴らしいと思います。岩を登ることも、ひとつひとつの細かい部分を確認し、どう対処するかを考え、事前の準備をくまなくやりつくすことで、自分の目標を遂げているんです。

 

− 偉業を達成できた一番の成功要因は何だと思いますか?

彼の努力の賜物に尽きると思います。彼の壮大なビジョン、構想があり、頑なな決意があったからだと思います。入念な準備をしたことが成功の秘訣でした。例えば、毎朝午前4時に起きて、毎朝同じものを食べる。そうすることで登攀する前にトイレをすべて済ませて、空腹の状況で登ることを習慣化させていました。そして、毎日同じ服を着ていたんです。余計なことを考えないよう、とにかく同じことを繰り返し行うことを大事にしていました。あとは、練習の際は失敗も想定して練習していました。こうすると失敗するのかと体感してそれを成功に繋げていました。

 

− エリザベスの旦那さんもプロクライマーであり、登山家ですが、サンニと一緒にいて共感できたこと、また、逆に共感できない、マネできないと感じたことはありましたか?

よく聞かれる質問なんですが(笑)。当然、彼女の傍にいれば彼女の気持ちはよくわかるし、ただ私とジミーの関係と、サンニとオノルドの関係が同じというわけではありません。ドキュメンタリーの作り手として、対象者の気持ちや感情の揺れに対してアンテナを張っていたので、サンニの気持ちを理解できました。それは、作品に重要な役割を果たしていたと考えます。特に女性の視点、女性の存在がこの作品により奥深さを加えてくれました。

 

−日本の登山ファンに向けて、見逃さないでほしいシーンを教えてください。

ストーリー全体を楽しんでいただきたいです。美しい風景や描写が続くので、とても楽しめるはずです。あとは、登場する人たちの人間関係を見ても面白いと思いますし、人間関係を通してオノルドが人とコミュニケーションがとれるようになったり、心を開いていく様子も興味深いと思います。個人的には、高校でのシーンが気に入っています。オノルドが登山をしている様子だけではなく、彼が自分のチャリティー団体で世の中のために活動している部分も見せることができたので、私にとっては大切なシーンです。
 

ジミー・チン(左)とエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ(右)
© 2018 National Geographic Partners, LLC. All rights reserved.

 

ナショナル ジオグラフィック ドキュメンタリー フィルムズ製作による本作は、稀代のクライマー、アレックス・オノルドによるカリフォルニア州のヨセミテ国立公園にそびえる巨岩エル・キャピタンにフリーソロで挑む一部始終を臨場感溢れるカメラワークで捉えている。監督は、今回インタビューにこたえてくれたエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィとジミー・チンのコンビ。9月6日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。ぜひ、スクリーンでお楽しみいただきたい。

 

■作品概要

監督・製作:エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ、ジミー・チン(「MERU/メルー」)
出演:アレックス・オノルド、トミー・コールドウェル、ジミー・チン、サンニ・マッカンドレス
撮影監督:ジミー・チン、クレア・ポプキン、マイキー・シェイファー
音楽:マルコ・ベルトラミ(「クワイエット・プレイス」「LOGAN/ローガン」)
主題歌「Gravity(原題)」:ティム・マッグロウ
2018年/アメリカ/100分/
原題:Free solo
日本語字幕:畑アヤ子
字幕監修:平山ユージ
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム

9月6日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
© 2018 National Geographic Partners, LLC. All rights reserved.

 

■映画公式サイト

http://freesolo-jp.com/

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