山には山用ウェアが安心 「ファーストレイヤー編」 低体温症は夏山でも起こる

 悪天が予想されるなら日程を変更しよう。そのためにも余裕のある日程で計画を立てたい。すでに入山しているなら、参加者の年齢や体力を考慮したうえで、小屋やテントで待機したり、行動時間や歩行距離を短くするなりしよう。

 昨年の白馬岳の低体温症遭難のように「疑似好天」で天候を見誤る場合も(詳しくは「低体温症について」)。天候の急変にも対応できるよう、エスケープルートの設定や安全なビバーク場所の確認など、登山中も常に緊急事態を意識しよう。

 低体温症を現場で把握することは難しい。まずは低体温症を引き起こす環境を自覚することが大切だ。低体温症は体が冷える条件がそろえば起こる。夏でも、雨や汗で体が濡れた状態で風に吹かれれば、驚くほど急速に冷やされる。

 個人の体力や装備によって違いはあるが、過去の夏山での低体温症の事例を見ると、雨が降っていて、気温10℃以下、風速10‌m/s以上の天候で起こりやすい。個人差があるので、これより条件がよくても発症する恐れはある。

 登山専門店などで販売されている登山専用ウェアは、山での過酷な条件を考慮し、安全性を優先した開発設計がなされている。

 レインウェアであれば、蒸れで体が濡れるのを抑制するために高性能の防水透湿素材が採用され、暴風雨でも雨の浸入を防ぐよう、顔の露出が小さくなるようにデザインされ、手首がぴったりフィットする。また、ミッドレイヤーやファーストレイヤーには速乾性のある素材や、濡れても保温力を維持する素材を使用している。

 登山用ウェアに採用される素材や機能は低体温症を防ぐのにも非常に効果的といえる。登山の際はこういったウェアを適切にレイヤリング(重ね着)することで、低体温症の予防に努めたい。

 せっかく登山用ウェアを着用していても、暴風雨の際に正しく着用していないと、低体温症を抑制する効果が半減する。

 レインウェアのファスナー類は端部まで閉め、各部のドローコードをしっかりと締めて、雨風が浸入する隙間を与えないこと。

 袖口は締め直し、手首にぴったりフィットさせる。シャツ類はレインウェアのパンツ内に収めて、ばたつかないようにするなどだ。稜線に出たりして暴風雨にさらされる前に正しく着用し直そう。

 また、行動中はどうしてもレインウェアが少しずつずれていき、そこから雨が浸入する。手を伸ばしたり、足を大きく上げたりしたときは、ジャケットやパンツの裾をこまめに直すことを心がけたい。

 体から奪われる熱が多くても、それを上回る量の熱を体内で産生し続けることができれば、低体温症にはならない。

 つまり、歩き続ける(筋肉を動かし続ける)ことで常に熱をつくり出せばいいのだ。そのためには、悪天候下でも休みなく行動を続けられるだけの持久力が不可欠となる。

 歩き続けるためには、行動中のエネルギーと水分摂取が重要だ。暴風雨だろうが、継続的に摂取してエネルギーの枯渇を防がねばならない。

 行動食は、速やかにエネルギーに変わってくれる糖質を多く含む高カロリーなものを選びたい。

 また、立ち止まって休むと急激に冷えるので、歩きながら食べられるよう、行動食はレインウェアの前ポケットなどに入れておこう。

 低体温症を防ぐには保温が重要だ。体から熱が奪われないよう防寒着を着よう。

 暴風雨にさらされてからでは、ウェアがばたつき防寒着を重ね着することは難しい。第一、瞬時に体が濡れてしまう。天候が本格的に崩れる前に、早めに判断して防寒着を着込もう。

 休憩や行動不能に陥った際は、岩陰や窪地で待機したり、エマージェンシーシートにくるまったりして、風雨をしのぐこと。ザックやエアマットをお尻に敷くといい。テントが張れれば、中で乾いた衣類に着替え、寝袋の中へ。

 低体温症になると軽度の場合でも思考が薄れ、物事に無関心となる傾向がある。そうなる前に「防寒着の着用」「雨風をしのげる場所での待機」を行ないたい。

 保温や熱産生に加え、「加温」するのも低体温症の対処法のひとつ。保温ポットの温かい飲み物を飲むなどして、外から温かいものを取り込むといい。ストーブで湯を沸かすなどして湯たんぽをつくったり、使い捨てカイロで体を温めたりするのも方法だ。

 ただ、加温は体温が34℃までならいいが、それよりも低いときに急激に加温すると、末端の冷たい血液が全身に回り、かえって体温を下げ、低体温症が悪化してしまうこともあるので注意が必要だ。

Supported by...