親子登山 子どもと一緒に山へ行こう!
子どもの登山道具をそろえる際のポイントを紹介 登山道具選び
安全と楽しみ、が用具選びのキーワード

 子どもが小さいころから家族で登山を楽しんでいる安藤さん一家だが、子どもを最初に山へ連れて行くときは、装備すべてが山用のものだったわけではない。「子どもが登山を続けたがるかわからない間は、安全に関係する主要な装備だけ登山専門店などで購入し、残りは大手衣類メーカーのものなどで代用するのも方法です」。

 まずそろえるべき主要な装備とはレインウェアと靴だと言う。「これらは標高が高くても低くても必要ですし、外界と接する部分なので、安全性を左右します。余裕があれば、これにザックやベースレイヤーなどを追加し、徐々に装備を増やすのがいいでしょう」。

 親子で登山するときは、ウェアやギアなどの装備のほかに、楽しむための装備を加えるといいと言う。特に初めての子は、登山が退屈でただ苦しいだけに感じられると、登山が嫌いになってしまう可能性がある。「お寿司が好きな子だったら、『山頂で炙りトロを食べよう』なんて言って、モチベーションを上げるといいですね」。親は楽しみをプロデュースしてあげることが大切なのだ。「登山は自然が相手ですから、ほかのスポーツのようにすぐに危険から避難したり、病院へ行くことはできません。だからこそ、親はきちんとリスクマネジメントし、安全を最も重視して装備を選び、山を楽しんでください」。

Contents
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足にあったものでなけば歩けなくなるので一番重要視している。
男性/親子登山歴7年以上/(お子さんの年齢)13歳以上

岩場の多い登山が多かったので、足下の安全を重視した。成長に追いつくために買い換えが大変だったけど・・・。
男性/親子登山歴7年以上/(お子さんの年齢)13歳以上

しっかりしたレインウエアは防寒着も兼用できる。装備やパッキングの練習や軽量化の工夫など学ぶことも多いので。
男性/親子登山歴7年以上/(お子さんの年齢)13歳以上

子供が背負ってみたくなり、山に登りたくなるようなモチベーションをあげてくれることをザックに求め、そのザックを背負い歩きたくなるよう、ザックのデザインを子供好みの可愛いものにした。その際、機能は後回しにした。
男性/親子登山歴5~6年/(お子さんの年齢)9歳、13歳以上

登山靴、シューズ
必ず試着! 靴下とセットで考える

 ミドルカットやハイカットで足首を保護できるものがいいが、未就学児用の登山靴は少なく、本人もいやがったりするので、荒地でもグリップ力のあるスニーカーを代用しても可。撥水性のあるものがベター。防水透湿性があればベストだ。サイズは1㎝刻みが多いので、必ず試着し、靴下や中敷でサイズを調節するといい。「子どもが初めて登山靴を履くと、足首の自由がなくなり、いやがる子もいます。そんなときは、普段履いている靴と登山靴を2足携行し、アプローチや整備された登山道では、普段履いている靴を使うのも方法です」。

レインウェア
防水透湿性が必須

 登山用につくられたレインウェアは、フードがしっかり顔にフィットするなど、雨や風の浸入を極力抑えるつくりになっている。素材には防水透湿性が必須だ。「値段はそれなりにしますが、安全を第一に考えれば、ウェア内が汗でびしょびしょになりにくいよう、透湿性があるものを選んだほうがいいです」。購入の際は、あまりにサイズが大きいと足をとられたりするので注意。「少し大きいかな」程度のサイズを選んでおくと、3年くらい着られる。成長して、パンツの裾が短いと感じたら、スパッツを使うといい。



防寒着
小さくなり、携行しやすいものを

 防寒着は基本的に行動時に着ないので、できるだけ小さくなって携行しやすいものがいい。「うちでは軽くて小さくなる薄手のインナーダウンを携行します。子どもと登山すると、荷物がかさばりがちなので、コンパクト性は大事ですね」。山用ブランドの防寒着は高機能で保温性も高いが、価格もそれなり。大手衣類メーカーのダウンを使うのも手だ。ただ、気をつけたいのは入手のタイミング。夏山で使うころには、大手衣類メーカーはダウン製品を販売していないのだ。夏に親子登山を計画しているなら、半年前の冬の終わりに少し大きめのダウンを入手しておこう。

ベースレイヤー
吸汗速乾性の高い化繊がおすすめ

 「子どもは汗っかき。汗が冷えると急速に体温が奪われます。また、子どもは体温調節が未熟です。だから早く乾くベースレイヤーがベストです」。吸汗速乾性の高い化繊のものがおすすめだ。夏山登山ならTシャツタイプが着やすい。山用ブランドでも、綿100%のものがあるので、よく確認してから購入しよう。体にぴったりするアンダーウェアタイプを着せるといやがる子もいる。普段から着させて、慣らしておくといい。

ザック
大きすぎるザックはNG

 試着して、体に合うかをチェックして購入しよう。「必要以上に大きなザックは背負わせないほうがいいです。身長や体格にもよりますが、小学校3年生で18ℓ前後までにとどめておきましょう。容量が大きいとバランスが悪くなりますし、ぶれやすい。荷物が下にたまって、後ろへ引っ張られないように、コンプレッション機能もあったほうがいいですね」。必要ならザックに手を加えるのもいい。安藤家では、背負ったときにザックが体に引き付けられるようザック上部をショルダーハーネスと縫い付け、歩行時のぶれが起きないようカスタマイズしている。

帽子
首まで日陰にできるものがベスト

 「頭にフィットするのはもちろん、できれば首まで日陰にできるものがいいですね。また、生地が厚かったりするとムレるので注意」。ハットタイプは風で飛ばされないようにひも付きのものが◎。キャップタイプでも、首を隠す布が付いているものがある。もし、前ツバだけのキャップなら、首に手ぬぐい等をかけるのも手。

靴下
クッション性のあるものを

 靴とセットで考えるため、やむなく薄い靴下をはかせることもあるが、あまりに薄いものはよくない。「靴擦れを防止し、内部の当たりを柔らかくするため、大人同様に、少しクッション性がある中厚の靴下を選ぶといいでしょう」。子どもの成長は早い。登山前にチェックし、合わないようなら靴下で調節を。

ミドルレイヤー
薄手のものをそろえると◎

 ミドルレイヤーにはシャツ、フリース、ソフトシェルなどがあるが、大人ほど選択肢がないのが事実。大手衣類メーカーのウェアなどをうまく代用してもいい。ポイントは薄手のものをそろえること。「子どもは大人よりも暑がりなので、意外と薄着で大丈夫なんですね。着替えも含め、薄手が数枚あったほうが汎用性が高いですよ」。汗で濡れても乾きやすいもので、体にフィットし動きやすいものを選ぼう。行動時に着るウェアは、ブカブカだったり、大きなフードが付いていたりすると、枝や岩場などでひっかかって危険なので注意。


その他
ヘッドランプとサングラス等について

 子どもが歩けるようになったら、ヘッドランプは必携。子どもは背が低いので、頭と地面までの距離が近く、ライトの光が狭くなりがち。広範囲で照らせるものを選ぶといい。サングラスは紫外線対策や雪渓のある山へ行くときには携行したい。レンズの色の濃いものではなく、薄めを選んだほうがいい。危険なコースではヘルメットは必携だ。登山専門店で売っているもので、頭にフィットするものを選ぼう。もしテント泊するのであれば、未就学児は親の寝袋に一緒に入ると装備が減らせて効率的。小学生からは寝袋とマットを個別に用意しよう。

親子登山にあると便利なモノ
あれば、登山が安全快適になる

 子どもは何もないところでも転ぶ。危険な箇所では確保が必要だ。スリングとカラビナを持っていれば、簡易ハーネスが簡単にできるので、携行しよう。熱疲労や熱射病、低体温症には気をつけたい。体温計があると便利だ。自然の中では多少の汚れや砂などは気にしないが、子どもは大人の想像以上に汚すので、ウェットティッシュがあるといい。ビニール袋やジプロックなども少し多めに携行しよう。汚れた服を入れるのもそうだが、どんぐりや石など、子どもはお土産を持って帰りたがる。トランシーバーがあると、パーティが二分されたときなどに大人が2人いれば連絡が取れて便利だ。折りたたみ傘は、子どもが雨具を着るまでの間、さすという使い方も。子ども用に小包装で軽いお菓子を持つのもおすすめ。「○○まで歩いたら1個」といった使い方ができる。

おやつ、泊まりの時はトランプやすごろく等のゲーム、子供専用カメラ、子供のテンションがあがるもの。
女性/親子登山歴3~4年/(お子さんの年齢)8歳、10歳、13歳以上

どんぐりなどを入れる袋。ジップロックは色々使えて便利です。
女性/親子登山歴1年未満/(お子さんの年齢)6歳

子どもは靴に石が入りやすいのでスパッツが必携
男性/親子登山歴3~4年/(お子さんの年齢)8歳

手鏡 背負っているとき、子供の様子が見えないので手鏡で見る
女性/親子登山歴1年未満/(お子さんの年齢)3歳以下

安藤隼人・真由子(あんどうはやと・まゆこ)
夫婦共に健康運動指導士。隼人さんは日本登山医学会評議員、スマートコーチング代表(www.smart-coaching.jp)。真由子さんは三浦雄一郎氏率いる「ミウラドルフィンズ」に所属。長男が4歳、次男1歳のころから親子でアルプスのテント泊縦走を楽しむ。