はじめての テント泊登山

初めてのテント泊登山レポート

南アルプス 広河原~北岳 2泊3日

文=神田めぐみ / 写真=高橋郁子

日本で2番目の標高を誇る北岳は、登山者が憧れる山のひとつ。
それぞれのバックパックに共同装備をつめて、憧れの山頂をめざす

甲府駅からバスに揺られること2時間。今回の山行の出発点となる広河原に到着した。天気は晴れ。メンバーは私を含めて男性2人と女性2人の4人だ。共同装備は皆で分担、男性2名はテント、女性2人は食材を担ぐ。
同じバスに乗ってきた登山者がそれぞれのペースで出発していくなか、私たの今回の計画はは2泊3日で広河原~北岳間をピストンする、のんびり山行。1日目の計画は白根御池小屋までの行程となっている。
白根御池までの急登を木の根をまたぎながら、ゆっくりと歩を進める。空は気持ちよく晴れているが、樹林帯なので日陰が続く。体力の消耗も思ったより少なくて、足取りは軽い。

午後3時半ごろに白根御池へ到着。テントを張り、夕食の支度にかかろうとすると、食事担当の池田さんが申し訳なさそうに口を開いた。
「生米からご飯を炊くのは、山では初めてです。失敗したらごめんなさい・・・」
連休前だったせいか、都心の登山用具店ではアルファ米の白米が軒並み品切れで、赤飯しか手に入らなかったそう。赤飯は2日目に回して、今日はガスストーブで炊いたご飯とカレーで夕飯だ。ご飯の炊き方をメモした紙とにらめっこしつつ、4人であーだこーだ言いながら米が入った鍋を火にかける。結果は大成功! おこげの取り合いまでして楽しい夕食を終え、それぞれの寝袋に入った。

2日目、晴天。 憧れの"2番目"に立つ!

2日目も晴天。まぶしい朝の光とともに、草すべりを登っていく。長く苦しい急登が終わると、楽しい稜線歩きが待っていた。稜線に出てから30分ほどで北岳肩ノ小屋に着く。
背後に北岳を従えて建つ小屋からは、アルプスの山々が連なる大パノラマを望める。小屋の屋根の上では、小屋番さんが布団を干している。なんとも青空が似合う風景だ。誰かが「コーラ飲みたいな」と言うと、「俺も!」「私も!」と"炭酸飲みたい欲"が伝染し、結局全員がコーラやサイダーを買っていた。このロケーションに炭酸飲料。夏山はこうでなくちゃ!

肩ノ小屋から北岳山頂へは稜線をさらに1時間弱歩く。標高3193m、日本で2番目に高い山頂には少しガスがかかってきた。北岳から、雲のなかで見え隠れしている富士山を眺めた。標高だけがすべてではないが、高い場所に立つと優越感を得られるから不思議だ。

2泊目は、北岳山荘の広いテント場に幕営した。今日の夕飯は、アルファ米の赤飯と、マーボー茄子。赤飯の上に豪快にマーボー茄子をのっけて食べると、意外にも合う。地べたに輪になって座りながら食べていたが、夕飯を食べ終わると同時に雨に降られ、食後のコーヒーを飲む暇もなく、慌ててテントの中へ逃げた。

3日目、雨の中色とりどりのレインウェアでにぎわう

最終日は雨のなかのテント撤収から始まり、終始レインウェアを着ての下山となった。八本歯のコルを経由して大樺沢二俣をめざす。先日の台風の影響でガレ場では浮き石が多く、階段やハシゴがたくさんあるルートなので、雨の日はとくに気をつけて慎重に歩く。

行きのルートとはまったく違う雰囲気の登山道を黙々と歩き、やっと白根御池小屋に着くと、そこは登山客であふれ返っていた。こんな天気の悪い日でも"2番目に高い山〟の人気は衰えないのである。いっこうにやまない雨のなか、色とりどりのレインウェアとすれ違いながら下山した。

(取材日=2011年9月15日~17日)


2泊3日(1泊目)白根御池小屋(2泊目)北岳山荘

北岳

アクセス[往復]

JR中央本線 甲府駅~広河原 山梨交通バス 2時間 4,100円 055-223-0821

※片道1,950円+利用者協力金100円

コースタイム

1日目 計3時間10分

広河原 (3時間10分) 白根御池小屋

2日目 計5時間30分

白根御池小屋 (3時間10分) 小太郎尾根分岐 (30分) 北岳肩ノ小屋 (50分)
北岳 (1時間) 北岳山荘

3日目 計5時間

北岳山荘 (1時間10分) 八本歯のコル (1時間20分) 大樺沢二俣 (30分)
白根御池小屋 (2時間) 広河原

初日は広河原から白根御池までは樹林帯の登山道を登る。傾斜はきついが3時間ほどの行程だからゆっくり行けば疲労も少ない。白根御池小屋のテント場は、小屋の正面と御池の周辺に分かれている。トイレや水場に遠いが、御池の周りのほうが静かだ。
2日目は、草すべりと呼ばれる草原状の急斜面の登りから始まる。行動時間は5時間ほどと長くはないが、飛ばすと後半がきつい。小太郎尾根分岐まで急登だがお花畑が点在する箇所でもある。ここまで来れば甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳が見える。やがて北岳山頂に到着だ。ここから北岳山荘までは約1時間、露岩の登山道をゆく。
北岳山荘からは北面につけられたトラバース道を通り、八本歯のコルへ向かう。ここから大樺沢二俣までの沢沿いの道は、大雨後に不安定になることが多いので注意が必要。二俣から白根御池に向かう道は樹林帯となる。所々で急な斜面が出てくるので膝をいたわりながらゆっくり下ろう。

アドバイス

大樺沢に沿ってつけられている登山道は、近年通行止めになるケースが多い。最新の登山道情報は事前に確認しよう。
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問合せ先

南アルプス市観光課 : TEL055-282-6294
白根御池小屋 : TEL090-3201-7683
北岳山荘 : TEL090-4529-4947

2万5000分ノ1地形図

鳳凰山・仙丈ヶ岳・間ノ岳