はじめての テント泊登山

HOWTO テント泊登山 - 準備編 -

何ごとも準備は大切。装備も心構えも、用意ができていないと本番で大きなミスにつながってしまうかも。ここで基本的な知識をおさえ、次第に経験を積みながら自分のスタイルを作っていこう。

イラストレーション:ヤマグチ カヨ

山行計画の立て方

これからテント泊を初めてみたいという方にとってまずアドバイスさせていただきたいポイントを挙げます。 当たり前の話ですが一泊二日でも荷物が5キロほど重くなります。テント・シュラフ・マットで3キロ。火器と食料で2キロ程度でしょうか。その為の身体作りはまずは必須です。近場の低山でもよいので一度はペットボトルや重りを利用して、その荷重を背負ってみることをおすすめします。水を重りにすれば、最悪の場合も水を捨てて軽くして帰ることもできます。

まずは"適度な快適"

テント泊山行は限られた装備で、衣・食・住を大切にする工夫が必要ですが、むやみに軽量化して、夜寒すぎて眠れなかったり、食料が足りなかったりでは、体力を消耗してしまい、行動に支障をきたします。中でも燃料が足りなくなるのは致命的。燃料不足は食料が足りないよりもずっと辛いこと。慣れないうちはガスであれば1缶余るほど持っていき、徐々に適正な量を把握してください。

最初から軽量化・コンパクト化を極めたギアを揃えるよりも、まずは適度な快適さを求めたものを選びましょう。経験を増やしていく中で、自分の限界を見極めつつ道具と山行スタイルを変えていくことは登山の楽しみの一つです。

多少の苦い経験も不可欠

ただ結局は道具や重さのことをあれこれ考えすぎず、まずは手軽にアクセスできるキャンプサイトを使って野外で寝ることの素晴らしさを知っていただきたいと思います。多少の苦い経験も、登山のスキルアップには不可欠。荷物の重さに慣れない場合は縦走よりも、テント場からピストン(往復)するようなスタイルをおすすめします。きっと山小屋利用の登山より自然が近くに感じられ、奥深い山登りの世界に魅せられていくことでしょう。

新名健太郎
新名健太郎(しんみょうけんたろう) さん

アルパインクライミングとトレイルランニングをどちらもこなすハイブリッド山岳ガイド。大峰奥駈道、高島トレイルなどの最速ワンデイ走破記録は多数。奈良県在住。関西山岳ガイド協会所属・山岳ガイド

食料計画について

テント泊のときは、基本的に「自分が食べる食糧は全部自分で担ぎ上げる」ことになります。調理をする場合は食材も、調理道具もです。多くの場合、テント場で食べるもの(夕食、朝食)はストーブで温めたり調理をしたもの、行動中(歩いている休憩時間)に食べるもの(おやつや昼食)は調理の手間がいらないものを選びます。

軽くて日持ちする乾燥食材も

なので重さは大事なポイントです。荷物が軽い方が疲れず快適に歩けることは言うまでもないので、できるだけ軽い食材を選びます。

たとえば麺類なら生麺より乾麺とか。軽くて日持ちのする乾燥野菜や乾物、お湯で戻すだけのアルファ米も活用します。最近はフリーズドライの食料も増えました。
味噌汁やスープだけでなく、麺類、カレーや丼ものなどもあり、かなり味もよいです。軽いだけでなく、お湯を沸かしてもどすだけなので手間もいりません。手軽さの面では、レトルト食品も人気がありますが、それなりに重いのでたくさん持ち運ぶのには適していないかも。経験を増やしていく中で、自分の限界を見極めつつ道具と山行スタイルを変えていくことは登山の楽しみの一つです。

短時間でできる料理を

歩いて疲れた状態で調理をすることを考えると「短時間でできる料理を選ぶこと」も大切でしょう。何十分もかかるような煮込み料理はそれだけで燃料も多く使います。たとえば野菜などはあらかじめ切った状態で持ってきたり、火の通りにくいものは下茹でしてくると時間短縮ができますし、ゴミを減らす効果もあります。

西野淑子
西野淑子(にしのとしこ) さん

山と旅をテーマにするフリーライター。関東近辺の日帰り低山ハイキングから、縦走登山や沢登り、冬山まで一年を通じてオールラウンドに山を楽しんでいる。著書に「東京近郊ゆる登山」(実業之日本社)など。

パッキングの基本

テント山行に関わらずまず決めるのが、どの山域のどの山をいつの時期にどのルートでどういったスタイルで、そしてソロか仲間とか…。おそらくこの遊びで一番ワクワクする(妄想の‥)時間ではないでしょうか。
そして何をどれだけ現場に持ち込むのか悩むものです。一般的にザックは28、38、45、55リットル前後のサイズをメインに山行によって使い分けます。それ以上のサイズを使う場合は軽量コンパクトなモノがある現代では、遊びの内容が特殊かと。つまり、初めたての方は55Lサイズ前後のザックが背負う重さも量も適切ではないでしょうか。

山道具は自身の身体との相性を最優先

ちなみに、ザックに関わらず身に付ける山道具は自身の身体との相性を最優先すべきであり、販売店で最低10キロ以上のあんこをいれて一つひとつ背負い比べる事をお奨めします。ショルダーベルトの位置や角度、背面長、ヒップベルトのホールド感など丁寧に味わってください。遠慮はいりません。いやな顔をする店員がいたらその店はNG(笑)すごく大事なことです。

参考までに私は持ち物をカテゴリー別に仕分けして沈めています。基本は下部に軽いもの、背面に近い場所や上部に重たいものを配置するのが理想的。あとは使用頻度を鑑みてオリジナルの配置があるはずです。

ザックカバーは万能ではないので、メインの荷室に防水スタッフバッグを入れておくとなお良いです。登山ではモノをブラブラぶら下げて歩くのは基本的にNGです。落とすし藪や岩に引っかけて危ないですから。上記をすべてひとりで持ち歩くと私の場合30~40キロ位なので、負荷を減らしてくれるトレッキングポールの使用頻度は高いです。

共同装備という考え方

快適かつ安全に過ごす為に全て積載すると前項の量であり重さになってしまいます。初めての方は現実的ではありません。また、ソロで行動するには事故のリスクが高くなることを踏まえ、この標題を語っていきます。

スペースに限りがある稜線のテント場

5、6年ほど前からテント場で一人用のテントを多く見るようになりました。いつの時代もソロをせざるを得ない、またはそれを望む人はいました。ただし、現代のそれは大きく違うようです。よく見かけるのは仲間とワイワイ山中に来て、生活空間(時には食事も)は別なのです。自分の道具を自分のみが使う悦びはわからない訳ではありません。雑誌の影響なのか個人主義の見栄なのか、ハイシーズンは迷惑といわざるをえません。
レジャー目的のキャンプ場と異なり、稜線のテント場はそうはいきません。スペースに限りがあることは周知の事実。共用スペース(お互いに譲り合って使う場所)なので、そのことを踏まえた使用を心掛けたいものです。お金を払えば良いという発想はやめましょう。

共同生活は下界にはない信頼関係を生む

一方、仲間で行動すれば荷物を分担できます(軽量化できる)。安全登山の面から鑑みてもとても重要なアプローチです。行動時間は短縮できるだろうし、なにしろ軽くなった分、美味しい食材等を積載して山中の生活を華やかにすることができます。

スピードが増せば昼過ぎに目的地へ到着することも可能になるかもしれません。そして休息に努めながら仲間と豊かな時間を過ごすことは如何でしょうか。 その共同生活は下界にはない信頼関係を生むでしょうし、緊急時に最大のチームワークを発揮する要因になると思います。「同じ釜の飯を食った・・」という類の話は今も通じると思います。

井出光俊
井出光俊(いでみつとし) さん

35歳で客だった山の店デナリのスタッフになる。厳しいオーナーの下、道具や生き方を学びつつガイド業をスタート。個人やスクールのガイドをしながら自分のお山。月の殆どを東京以外ですごしています。クライミング、テンカラ、シーカヤックをもっと堪能したい・・・。

テントの設営は練習しておきましょう

テントを山へ持って行く前に、最低でも一度は自分で設営してみましょう。
近所の公園や、部屋の中でも構いません。
山では天候によって状況が変わります。練習しておけば段取り良く設営できますよ!

「理想のテント泊」について聞いてみました。

主稜線上で圧倒的に広い星空 新名健太郎/山岳ガイド

せっかくテント泊をするなら、凹地形に張るベースキャンプ的なスタイルよりも凸地形、つまりは主稜線上にに張るアタックキャンプ的なほうが個人的には好きだ。 特に日本アルプスの3000m級の山々の主稜線には特別な空気感がある。僕にとっては山登りは山頂に立つこと自体にあまり意味はなく、その非日常の世界観にどれだけどっぷり浸れるかが重要だ。それには言うまでもなくテントがいい。山小屋に泊まっても、その感じは全く消えてしまうわけではないのだけれど、あのゾクゾクするようなダイレクト感はテントでしか味わえない。

主稜線なら朝日も夕陽もバッチリ拝める上、満点の星空だって見える面積が圧倒的に広い!明日の行動や天気への適度は不安も、景色を美しく、そしてちょっと切なく見せてくれるスパイスとなる。そして何よりも標高が高いから、空が美しい。

日が沈んだら何もやることがなくて、日常生活の多少の疲れも、その日の行動の適度な疲れも一緒くたになって、すぐに瞼は重くなる。風に揺られるテントの天井を眺めながら、眠るまでのひととき。そんな時に、なぜか人生が俯瞰して見える一瞬があったり…。

そんな夜を過ごす時、いつもこう思う。
 「これが最高の贅沢だな。」と。

テントの中で仲間と話す時間に幸せを感じる 西野淑子/ライター

他の登山者に全然出逢わないようなマイナーな山域で、下手をしたら登山道もないようなさほど標高も高くない山を、本当に気心の知れた仲間と、テントを担いでのんびりと歩く、というのが私の理想のテント泊登山です。他の登山者の声もなく、鳥のさえずりや風の音、沢のせせらぎが響くなかを、ただただ歩く。道ばたに食べられる草やきのこがあればちょっとだけいただいていきます。

お昼を過ぎて、快適なテン場に出逢ったら、今日はここまで行かなきゃ!とかこだわらずに行動終了。さっくりとテントを張って、素敵な景色を眺めながら宴会。軽量化とか言いながら、お酒を担ぎ上げることは忘れません。ちびちび飲みながら、景色を眺め、山の話に盛り上がる時間。一人は寂しいからちょっと苦手です。とくにテント泊だと、テントの中で仲間と話す時間に幸せを感じます。歩いて来たときに採ってきた草やきのこは、さっとゆがいて酒のつまみにしたり、晩ご飯の材料になったりします。

いい感じに酔っ払って就寝。夏の夜ならシュラフとマットを外に出し、樹林のすき間から見える星空をぼんやりと眺めながら、気がついたら寝ていた…というのが最高です。

テンカラ釣りに興じる「大人の夏休み」 井出光俊/ライター

私のはじめての本格的登山は親友との厳冬期の南八ヶ岳テント縦走でした。その時のつらさと感動の両方を仲間と共有できた悦びが今も忘れられません。ピークに立てた感動もさることながら、そのプロセスの1つ1つ最高だったのだと思います。

街で遊んで帰るのと違って、山はそのプロセス1つ1つを堪能する遊びだと思います。場所・ルート・季節・メンバー、同じ山行は一度とありません。そのプロセスの質をこだわること、つまり遊びの質をこだわると本当に奥が深いのです。

それはいわゆるテント泊山行だと思います。衣・食・住の大部分をお金で解決するのではく、自身の背中に夢として積んでゆく。つらいわけがありません。その重さが楽しみの量なのです。

毎年夏にカメラマンのK君と1週間ほどテンカラ釣りに興じる「大人の夏休み」がここ数年の楽しみです。源流域まで遡行し、タープで焚火をする。最低限の食材は担ぎ上げ、メインは現地調達。技術的、体力的、知識的、慣れ的(笑)にはテント泊の進化系だが、これが野営の原型だと思います。今年はどこの沢に入るのか、毎度の作戦会議が楽しくてたまりません。

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(日本気象協会提供:2019年12月15日 17時00分発表)
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