丹沢キャンプで防水性ヘッドランプを試した ブラックダイヤモンド/ストーム[ロストアロー]

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今月のPICK UP ブラックダイヤモンド/ストーム [ロストアロー]

安心の防水性を備えたLEDヘッドランプの定番

価格:5,700円+税
全光束:160ルーメン(クワッドパワーLED)
照射距離:70m(クワッドパワーLED/高照度)
電池寿命:200時間(クワッドパワーLED/低照度)
電池:単4アルカリ×4本 / 重量:110g(電池込)
カラー:マットブラック、ダークシャドウ、レボリューショングリーン、ウルトラホワイト、ビブラントオレンジ / 防水性:IPX-7

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まずは、その光量に驚くヘッドライト

ときどき、ただひたすら山中でゆっくりと過ごしたいときがある。できればひとりだけで、誰にも邪魔されない時間を味わいたい。自分の好きな時間にメシを食い、好きな時間に眠るためには、山小屋よりもテント泊。目的が歩くことよりも、ゆったりとした時間を過ごすには、テント場は登山口から近い場所にあるとよい。

そこで僕が今回やってきたのは、丹沢の塔ノ岳の南側にある「大倉高原山の家」のテント場だ。クルマで行くことができない、いいかえれば自分の足で歩かなければいけないテント場としては、丹沢山塊で唯一の場所だ。登山口は秦野市大倉にある秦野ビジターセンター。ここから30~40分も歩けば到着してしまうほど、アクセスしやすい場所にある。

「大倉高原山の家」のキャンプ地。水場、トイレともに備えられている。管理人不在の際は、小屋近くの料金箱に400円を入れる

塔ノ岳山頂へ登る途中にあるので、もちろん塔ノ岳登山と組み合わせて利用するのもよい。僕は今回、山には無理に登らず、テント場でただメシを食って眠り、心身をリフレッシュさせるだけも悪くないと思っていた。だが翌日は結局、塔ノ岳に登ってしまったのだ……。塔ノ岳への往復の話はまた次回にして、今回はテント場のみのレポートとしたい。

ともあれ、昼過ぎに東京を出た僕は、夕方前に秦野ビジターセンターに到着。早速、大倉高原山の家を目指して歩いていく。最初は舗装路で、途中からは遊歩道の趣になり、それから高度を少々上げていくと、やっと登山道らしくなる。だが登山道らしさを十分に味わう間もないうちに、大倉高原山の家に到着してしまった。いやはや、あっけない。

僕はこの場所にくるのは、なんと10数年ぶり。テント場の記憶はあやふやだった。しかし……。あれ、こんなによい場所だったっけ?

平日とあって誰もいないこともあって、非常に静か。森に囲まれたテント場は適度に広く、解放感とともに奥まった場所にいる感覚もあり、とても落ち着けるのだ。

テント設営後にメシを食っていると、夕方に。小屋の前には美しい夕焼けが広がり、日没後には夜景を楽しんだ。たった30~40分歩いただけで、このような風景をひとり占めできる静かなテント場に泊まれるのだ。よい一夜になるだろう。

今回の僕の相棒は、ブラックダイヤモンドの「ストーム」というヘッドライトだ。

重量は電池込みで約110g。より軽いヘッドライトはいくらでもあるが、防水性のうえにあの光量なのだから、重くはないだろう

中央の大型LED1灯による遠距離モードでは、最大160ルーメンという強力な光を発揮する。もちろん最新のヘッドライトだけあって、光量は無段階で調節可能。必要に応じて光の強さを変え、無駄にバッテリーを消費しないように設計している。また、小型LED2灯の近距離モードは広範囲に光を放ち、狭いテント内でも使いやすいようにしてある。遠/近両用のハイブリッドタイプなのである。

パワーを最高にして、遠距離モードの最大照度160ルーメンで前方を照らしてみたところ。数十m先の木々もはっきり確認できる
遠距離モードのまま160ルーメンから少しずつ光量を低くし、もっとも弱くすると、このような感じ。まともに見えるのは4~5m先程度だ

だが僕がこのヘッドライトに目を付けたのは、光量以外の点にもあった。じつはこの「ストーム」、水深1mの水中に30分つけておいても影響を受けないというすばらしい防水性を誇るのだ。なんといっても、名前が「ストーム」。暴風雨のなかでも行動しなければならないときにも信頼できるのである。

テント内では近距離モード。左右2つの小型LEDにより広がりのある光を得られ、狭い場所でもまぶしくない

よく考えられたディテールの使い勝手

本当はテントのなかでただぼんやりと時間を過ごしてリラックスするつもりだったが、こんなハイスペックのヘッドライトをもってきてしまった僕は、なんだか落ち着かない。結局、性能を試してみたくて、夜の森を歩き回りはじめた。すると、「ストーム」のスゴさが実感として伝わってくる。

「ナイトビジョン」の赤い光。通常の白い光よりも刺激が弱く、周囲の人に迷惑をかけない。動物の観察などにも適している

カタログのスペックにある160ルーメンで最大70mという照射距離だが、実際にはもっと遠くまで照らせるのではないだろうか。これならば夜が明ける前の出発時や、トラブルの際の深夜行動時にも山中の道標などを見逃さず、危険な岩場などでも行動しやすい。ちょっと驚くほどの光量だ。しかも、いったん照度を低くしても、サイドを軽くタップするだけで、瞬間的に最大高度を取り戻せるシステムになっている。指先だけで感覚的に操作でき、非常に便利なのだ。

バッテリーの残量を表すブルーの光。3段階で電池の残量を示してくれる。ちなみに必要なバッテリーは、単4電池4本だ

光が分散せず、まっすぐに照らしてくれるのもありがたい。見たいところが確実に明るくなる。僕は森の中でシカやネズミなどの小動物、はたまたツキノワグマでもいないかと探してみたが、なにも見つからなかったのはちょっと残念だった。

今期のリニューアルで「ストーム」はレンズの改良により60%も照度が上がっているという。たしかに明るいのに省電力なのはありがたい。だが実際の山中では、高照度で使用する時間はそれほど長くはないだろう。むしろヘッドライトの使用時間が長いテントの中では低照度で使う時間が長く、この場合は200時間ももつ。使用する電池の数は、単4電池4本だが、それほど重いわけではない。

​ バッテリー残量メーターの反対側には、タップ式のボタンが。これを軽く触るだけで、低めに設定しておいた光が、一気に最大光量に戻る

テントのなかでの読書は快適だった。この低照度ならば200時間ももち、しかもこのテント場には僕だけなのだから、いくら起きていてもかまわないのだ。期待していた通りに、ゆったりとした時間が過ぎていく。どこか遠くからケーンというシカの鳴き声が聞こえた。

さて、翌朝。「光」に関しては昨日のうちにチェックができ、申し分ないことがわかった。問題は「防水性」だった。幸い、前夜は晴れていて、雨が降らなかった。そこで僕はわざわざ「ストーム」を濡らし、防水性を確認することにした。自然の状態でのテストではないが、ストームがきていないのだから致し方ない。

非常に耐水性が高い構造になっており、水をかけた程度では浸水せず、安定して光を発する。暴風雨のときも安心して使える

テント場の水につけること30分。ライトを点灯してみる。うん、まったく問題ない。電池ケースには柔らかなパッキンがあり、さらにしっかりとネジで押さえつけるために、水を一切浸入させないのだ。僕はこれだけではなく、あえて水を上から流れ落とす状態にして、強い水圧もかけてみた。台風などで強烈な雨が吹き付けてくることを想定した状況だ。だが、それでもまったく支障はない。通常の山行で壊れることはないだろう。

いいねえ、「ストーム」。僕が使っていた防水性のヘッドライトは旧式で、電池のもちが悪い。買いなおすならば、第一の候補になりそうだ。

(写真=加戸昭太郎)

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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