暴風の伊豆大島・三原山で異次元の快適ブーツを体感 マムート/コンフォートハイGTXサラウンド[マムート]

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今月のPICK UP マムート/コンフォート ハイ GTX サラウンド [マムート]

ゴアの最新テクノロジーを搭載し、究極の快適性を手に入れたトレッキングブーツ

価格:33,000円+税
重量:459g(27cm)
サイズ:25cm~28cm
カラー:グラファイトスカイブルー(青)、グレイアーティチョーク(緑)、ブラックインフェルノ(赤)
※女性専用モデルあり

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履いてすぐ実感できる快適性

自宅を出て、高速船に乗り、登山口へ。伊豆大島の三原山外輪山へと向かう登山道をまだ歩き始めてもいないのに、僕は早くもその実力を感じ取っていた。これは、既存のシューズとは明らかに違う。

今回、僕がテストのために自宅から履いていったブーツは、マムートの「コンフォートハイGTX」という新型モデルだ。その最大の特徴は、発表されたばかりの「ゴアテックスサラウンドプロダクトテクノロジー」を搭載していること。

ローカットモデルが多い「ゴアテックスサラウンドフットウェア」のなかで、こちらはハイカット。山中でも足首をしっかりと守ってくれるタイプである

ブーツの内側のライナーにゴアテックスを使った透湿防水性のブーツはもはや普通の存在だが、足裏の面だけはソールによって透湿性が損なわれ、ブーツ内部のコンディションを快適に保つには限界があった。だが、このテクノロジーを使った「ゴアテックスサラウンドフットウェア」は特殊な構造により、アッパー全体のみならず、底とソールのあいだからも湿気を逃がすという画期的なものだ。「サラウンド=包囲」という意味からもわかるように、360度全方面に透湿性を持たせているわけである。

内部に敷かれているフットベッド(インソール)。これ自体が湿気をためにくい形状と材質になっているので、ゴアテックスの長所が生きてくるわけなのだ

家を出る前、僕はひとつ仕掛けをしていた。左足は付属のフットベッド(インソール)のままにして本来の透湿性を損なわない一方、右足は一般的に市販されているフットベッドに替え、足裏の透湿性を完全に遮断しておいたのだ。ある意味、右足はこれまでのゴアテックスを使用したブーツと大きく変わらない状態である。

左右の蒸れ具合を確かめるため、左足は付属のフットベッドを使い、右足には僕がいつも使っている透湿性がないフットベッドに。その結果、大きな違いを感じられた

もともと汗かきの僕は、ブーツ内部も蒸れやすい。本格的に歩いていなくても、ただハイカットのブーツを履いているだけで、ソックスの裏面がしっとりとしてくるほどだ。自宅から登山口に到着するまでの時間は5時間程度だったが、島に向かう高速船のなかはエアコンで暖かかったこともあり、バスに乗り継いで登山口に到着したときには案の定、すでに右足の裏はなんとなく湿り気を帯びている。だが、左足はさらりとしている。大したものだ。これから歩き始めれば、きっとその差は歴然としたものになるに違いない。

 

暴風の三原山で四苦八苦

たかだか標高758mしかないというのに、さすがは洋上に突きだした山である。この日の三原山の荒れ方は低気圧の影響でひどいものだった。雨はほとんど降っていないものの、すさまじい強風なのである。山頂口から標高を上げていき、火口をとりまく外輪山に出ると、地形の関係で強風どころか猛風ともいうべき箇所が何度も現れ、僕の体を吹き飛ばそうとする。

三原山の外輪山はガスで覆われ、火口どころか周囲の風景すらほとんどわからない状況。場所によっては体をなぎ倒されるほどの強風であった

以前にもこの山では悪天候に遭遇したことがあるが、そのときの比ではない。そこで飛ばされないように風上に全体重をかけ、重心を低くして歩いていく。だが風が弱まると、バランスを崩して何度も倒れてしまうのだ。しかし立ち上がると次の瞬間には数メートルも風下に押しやられ、ついには転倒してしまう。せっかくの新しいレインウェアも溶岩に擦れて破いてしまった。

これはマズイな……。引き返すことも考えたが、幸いなことに登山道の左右には手すりとして使えるようにロープが張られている。三原山は何度か歩いたことがあるので、おおよその地形は把握しており、少し歩けば風の影響を受けにくくなるという判断もできた。もう少しだけ先に進み、外輪山から下る道に入れば安全になるだろう。

風の力が弱まる低い場所まで下りてきてから、やっと記念撮影。登山口以外では誰にも会わず、セルフタイマーを使わざるを得なかった

外輪山を歩ききってテキサスコースへ下りていくと、予想通り風は弱まった。必死になって歩いていたため、ブーツ内部のコンディションのことはすっかり忘れていた。だが、改めて確認すると、どうやら歩き始めと大きくは変わらないようだ。つまり、左足の裏はほとんど乾燥しているようだが、右足の裏は相変わらず湿ってベタつく感じがするのである。

ブーツを脱いでみると、実際に左右のソックス裏面には違いが現れていた。指で触ってみると、右足だけがたしかに汗ばんで湿っているのである。ガスで真っ白になった外輪山の登山道で、あれほど踏ん張って歩き続けていたというのに、左足は乾燥したままだとは……。予想していたことであるが、感心するばかりだ。これまでもゴアテックスを使ったブーツの機能のよさは体感していたとはいえ、「ゴアテックスサラウンドプロダクトテクノロジー」は従来以上の機能性を持っていることは確実だった。

足底とソールのあいだの湿った空気はサイドから抜ける構造。サイドのパーツもその機能を損なわないように、メッシュ部分を覆い尽くさないようにデザインされている

ひさびさに手放しで褒め称えたくなる機能性だな、と考えながら、僕は一方で残念にも思っていた。「ゴアテックスサラウンドフットウェア」は構造上、ソールに近いサイドのメッシュ部分から湿気を逃すようになっている。だから、ソール上部を硬い樹脂のパーツでぐるりと覆う仕組みになっているゴツめのアルパイン系ブーツは現状作られていないのである。

「ゴアテックスサラウンドプロダクトテクノロジー」の機能にばかり目が行きがちだが、ソールのグリップ力も評価すべきもの。アッパーも柔らかく足を包み込んでくれた

今回のコンフォートハイGTXもアッパーのフィット感、ハイカットならではの安定性、ソールのグリップ力も充分という優れたブーツだったが、急峻な岩場や雪が残る道に適しているとは言い難いタイプだ。あくまでも無雪期、重い荷物を背負わなくてよい山行時、緩やかな低山などに適したモデルなのである。

樹林帯まで下りてくると、それまでの溶岩の砂礫から、枯れ葉と土が混じった滑りやすい道になる。しかし、こんな道でもブーツのグリップ力は上々だった

だが、これだけの快適な機能ならば、もっと重厚な登山靴にも採用できるものであってほしい。夏の高山でも使えるものであれば、ますます価値がある。今後の開発力に期待したいところだ。それまでは春から秋にかけての日帰り登山などで、このコンフォートハイGTXのような「ゴアテックスサラウンドプロダクトテクノロジー」のブーツが活躍するはずだ。そんなことを考えながら、僕はツバキの花が咲く大島公園へ向かう登山道を下って行った。

 

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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