片足別々で、機能性トレッキング・ソックス2本勝負!  VS-OW202 中厚・ミドル丈[ホシノ]、トレッキング エアー ステップ[シダス]

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今月のPICK UP

V-Systemタビ形状2本指ソックス/VS-OW202 中厚・ミドル丈 [ホシノ]
価格:2700円+税
サイズ:S(22~24cm)、M(24~26cm)、L(26~28cm)
素材:アクリル・ウール・ナイロン

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X-SOCKS/トレッキング エアー ステップ [シダス]
価格:3100円+税
サイズ:35~38(22.5~24.0cm)、39~41(24.5~26.0cm)、42~44(26.5~28.0cm)
素材:アクリル・ナイロン・メリノウール・ポリプロピレン・スパンデックス
※女性専用モデルあり

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履き心地と耐久性のバランスを山4日、自宅5日で履き比べる

アウトドア用のウェア類のなかで、もっとも「消耗品」的な要素が強いものがソックスだ。足全体をしっかりと包み込みつつ、それ自体はブーツに覆われ、内側からも外側からも強い摩擦と圧力を受けなくてはならず、傷みやすいのは当然だろう。
肌に直接触れるという点では、ソックスには「ベースレイヤー」の意味合いもあり、汗をしっかり吸い取り、かつ乾燥させる機能が望まれる。ブーツ内のコンディションを良好に保つために非常に重要だが、耐久力と吸汗速乾性を両立させるのは容易ではない。

今回テストしたソックスは、V Systemの「アウトラストウール」中厚・ミドル丈と、X SOCKSの「トレッキングエアーステップ」だ。「アウトラストウール」は素材にアクリル、ウール、ナイロンを用い、指先が2つに分かれたタビのような形状。「トレッキングエアーステップ」はアクリル、ナイロン、ウール、ポリプロピレン、スパンデックスを使用し、柔らかな風合いである。どちらも部分ごとにそれぞれの素材を使い分け、耐久性や吸汗速乾性だけではなく、デザインの工夫で動きやすさやフィット感も向上させたテクニカルなソックスになっている。

そんな工夫の一例を挙げておこう。

「アウトラストウール」は、足首の曲がる部分に生地の厚みを抑えながらも伸縮性がとくに高い素材を使っている(写真左)。これにより足を入れた際に自然な角度でソックスが曲がり、足首の動きもスムーズだ。ソックス内に足を入れるのが大変なほど全体的に伸縮感は高いが、いったん履いてしまえば違和感はほとんどない。
「トレッキングアエアーステップ」は足首から脛の内側にメッシュ状の素材を使用し、足の肌が透けて見えるほど(写真右)。当然ながらブーツ内外の空気の移動はすみやかに行なわれ、蒸れが排出されやすい。また、穴が空きやすいつま先には、特別に強靭な中空の繊維が使われ、衝撃吸収性も高められている。全体的にはゆるやかに足を包み込む感じで、かなりソフトな履き心地だ。

今回は短期間でこれらのソックスの特性をできるだけ把握するため、まずは皇海山へ日帰り山行。その後、自宅でも履き続けながら、他の山でも使用し続けた。その日数は、山中で述べ4日、自宅では5日間。両者の違いを把握しやすいように、左足に「アウトラストウール」、右足に「トレッキングエアーステップ」を常に着用していた。

11月となると登山道にはすでに凍結した場所もあるかもしれないと考え、ソックスの上に履いたのは、この山にしては少々ゴツめのライトアルパイン系ブーツ。防水透湿性に優れたモデルだが、ブーツの下部から先端にかけて硬いラバーのランドで覆われているため、足裏やつま先部分はいくぶん蒸れやすい形状である。

まずは晩秋の皇海山で使う

早速、皇海山山頂へと登山道を歩きはじめる。薄曇りだが気温はそこそこ高く、歩いているとすぐに汗ばんでくるほどだ。

登山道には長い霜柱が立っていたが、沢沿いにも凍結箇所はなかった。もう少し、軽いブーツでもよかったかもしれないと考えながら、紅葉が終わった晩秋の山をスピーディーに進んでいく。

不動沢のコルに到着。皇海山とは反対側にある鋸山の切り立った岩峰が、やけにカッコよく見える。

ここまで僕の足で1時間。ブーツ内のソックスのコンディションは、すでに出発前と異なってきているのがわかる。「アウトラストウール」は若干湿り気を帯びた感じでしかないが、「トレッキングエアーステップ」のほうは、足全体がべたつくというか、少々ヌルっとした感触だ。
「アウトラストウール」はタビ状のデザインで親指と人差し指の間の汗も吸い取り、フィット感も高いため、しっかりと汗を吸い取ってくれたのだろう。だが「トレッキングエアーステップ」は一般的な形状だ。そして、どうも汗を吸い取る力が弱いように感じる。また、その湿り気とすべやかな素材のせいか、ブーツ内で足が少々滑ってずれてしまうのが気になる。合わないブーツを履いていれば、靴擦れを起こすかもしれない。反面、「アウトラストウール」にはほとんど違和感がなく、快適そのものだ。

ブーツ内に指を入れてみると、湿気と熱をダイレクトに感じるのは「トレッキングエアーステップ」のほうだ。言い方を変えれば、蒸れをどんどん発散させているような印象である。「アウトラストウール」は吸い取った汗を少しずつ排出しているようで、熱もあまり感じられない。

30分後には山頂に到着。周囲には木々が生い茂り、景色をあまり楽しめないのが残念だ。

休憩後、このウェブサイトでも紹介されている「山Qプロジェクト」のため、メッセージを入れた手ぬぐいを持ってセルフ撮影。興味のある方は、そちらもぜひ見ていただきたい。

このまま下山しては歩き足りない。僕は不動沢のコルから見えていた鋸山へも往復することにした。

皇海山は、皇海橋の登山道から往復するだけではどこからも山容を眺められない。だが鋸山の方向にいくらか歩いていけば、皇海山の山頂付近がかなり見えてくる。もちろん鋸山山頂からの眺望はますますよく、西側の男体山や日光白根山の姿も楽しめる。

途中には岩場もあり、歩いていて飽きない山だ。僕の好みでいえば、皇海山よりもむしろ鋸山のほうが圧倒的に面白い。
山頂でのんびりしていると体が凍え始め、それと同時に足も冷たくなってきた。足に直接感じる湿気のためか、「アウトラストウール」を履いた左足よりも、「トレッキングエアーステップ」の右足のほうが少々冷たくなるのが早かったようだ。

結局、登山口に戻ったのは約6時間後。日帰り登山としては、一般的な時間の長さであろう。そして、ブーツを脱いでみる。

左の「アウトラストウール」は汗による蒸れとブーツとの擦れによって指先、とくに親指の部分の色が濃くなり、一部は毛羽立っているのがわかる。それに対し、「トレッキングエアーステップ」の見た目はあまり変わらず、とくに摩耗している部分もない。素材はソフトなのに、生地はかなり強いようだ。

ブーツを脱いだ後、そのままコンクリートの上に立ち、5分ほど待ってみる。すると、ソックスの汗がコンクリートの上に移り、うっすらと足跡ができた。

左が「アウトラストウール」で、右が「トレッキングエアーステップ」。「トレッキングエアーステップ」のほうが汗をコンクリートにより多く移している。実際、下山後にブーツ内で湿り気を感じたのは、相変わらず「トレッキングエアーステップ」だった。ただし、「アウトラストウール」は湿気を生地のなかにため込んでいるだけで、「トレッキングエアーステップ」のようにわかりやすい形で水分が外に見えないだけとも考えられる。しかし正直なところ、着用感でいえば「アウトラストウール」に軍配が上がる。

帰宅時のクルマのなかでは、ブーツではなく通気性が高いサンダルを履いていた。エアコンを使っているとどちらもすぐに乾燥していったが、「トレッキングエアーステップ」のほうが足の湿り気は早く取れた。この乾きの早さはありがたい。

耐久性はどうか? 洗うとどうか?

さて、前述したように、僕はその後もこれらのソックスを履き続けた。雨の山中でソックスが完全に濡れたこともあるが、その間あえて洗濯は一度もしなかった。すると気温が低い時期でもさすがに臭い始めてくる。
面白いのは、両者の匂いが異なることだ。すえた土のような臭いがするのは、「アウトラストウール」。アンモニア臭が漂うのは「トレッキングエアーステップ」。「トレッキングエアーステップ」には抗菌防臭機能を持つミットランという素材が使われ、バクテリアの増加を抑制するというが、4日も履き続ければ、どうしても臭ってしまうようである。とはいえ、「アウトラストウール」よりもすぐには臭いが出にくいようであった。

9日ほど山と家で履き続けた後、薄汚れ、繊維の起毛感も失われた2つのソックスをとうとう洗濯する。乾燥させると繊維の起毛が戻り、臭いも充分に取れていた。
しかし「アウトラストウール」はあちこちが擦れて毛羽立ちが激しい。一方、「トレッキングエアーステップ」の見た目は購入時とほとんど変わらない。

再び着用してみると、「アウトラストウール」はフィット感が以前と違わない。「トレッキングエアーステップ」は少々生地が締まり、フィット感が高まっている気がする。着用していれば再び緩くなる可能性もあるが、もしかしたら買ったままの状態よりも一度洗濯したほうが履き心地はよくなるのかもしれない。

改めて、ソックス全体を確認してみる。「アウトラストウール」の親指の部分は、爪と擦れたために繊維の一部が摩耗し、すでに剥げ始めていた。一般的なトレッキング用ソックスに比べ、傷みが早いような気がする。それに対し、つま先部分を重点的に補強している「トレッキングエアーステップ」にはほとんど摩耗が感じられない。

耐久性では「トレッキングエアーステップ」のほうが確実に秀でているようだった。

今回のテストはあくまでも述べ9日間に過ぎない。日帰り山行がメインの人が毎回洗って使うのか、長距離の縦走で何日も履き続けるのかでも、ソックスのコンディションは変わってくる。僕個人の感想をいえば、この2つのソックスのうち、日帰り登山にはフィット感が高く、ブーツ内での蒸れた感じも少ない「アウトラストウール」、数日の縦走ならば耐久性が高く、ブーツを脱げば乾燥が早い「トレッキングエアーステップ」を使い分けたい。もしも購入できるのが一足だけだとすれば……、着用時の快適さを重視して「アウトラストウール」だろうか。

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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