稜線を飾るミツバツツジの大群落 福岡・佐賀 井原山 

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※緊急事態宣言による外出自粛要請が出ている状況ですが、来年以降の登山の参考のため、また、外出ができないなかでも山行の楽しみを記事を読んで感じていただければと思います。

福岡県と佐賀県の県境にある背振山地。井原山は花の名山としても人気です。4月下旬にはミツバツツジの花が稜線を彩ります。

ミツバツツジのトンネルを抜けて(写真=池田浩伸)

水無の谷を白く飾った、イチリンソウやニリンソウなどのスプリングエフェメラル(春の儚き妖精たち)の季節が終わる4月下旬になると、山頂部では初夏の陽射しを待ちわびていたミツバツツジの花が一斉に咲き誇り、井原山(いわらやま)から雷山にかけての稜線を明るく鮮やかな赤紫色に染めます。

ミツバツツジは、ツツジ科の落葉低木で4~5月頃に紫紅色の美しい花を付けます。花が終わると枝先に3枚の葉を付けることが名前の由来です。井原山一帯に自生するミツバツツジは、葉が少し小さいコバノミツバツツジが多いと言われています。

福岡・佐賀の県境に東から西へ長大な尾根を伸ばす脊振山地第2の高峰である井原山は、花の名山としても知られています。いくつかの登山コースの中でも、花に恵まれ美しい渓流美に癒やされながら、紫紅色に染まる山頂へ向かう水無谷コースを紹介します。

 

モデルコース:水無登山口~水無分岐~井原山~新村分岐~水無登山口

行程:
【日帰り】水無登山口(20分)水無分岐(55分)井原山(40分)新村分岐(30分)水無登山口(計2時間25分)

※2020年ゴールデンウィーク期間中、水無登山口は閉鎖されています。http://www.itoshima-kanko.net/anews/stay_home/

⇒井原山周辺のコースタイム付き登山地図

 

水無登山口(水無鍾乳洞)へは、前原駅などからコミュニティ・バスが運行していまが、終点の井原山入口バス停から水無登山口までは距離が長く、マイカーがおすすめです。

糸島市の県道49号井原交差点から南進すると、井原山自然歩道から山頂を目指すキトク橋登山口があります。ここから道幅が狭く離合にも注意が必要です。水無登山口の駐車スペースは10台ほどで、満車になることもあります。

水無登山口(写真=池田浩伸)

登山口には、「井原・雷山登山歩道」の案内板の横に山ナビBOXがあり、登山ルートや野草が詳しく書かれた、無料のリーフレットが用意されていてます。

水無谷にかかる木橋を渡ると、花のプロムナードの始まりです。清らかな流に頭上からの木漏れ陽がキラキラと輝いて、足元にはコンロンソウ、スミレ、ラショウモンカズラなどリーフレットの花図鑑が大活躍です。

第2鍾乳洞分岐を過ぎると、「こうぞう岩」と呼ばれる湧き水があります。岩の形がフクロウに似ているからだそうです。冷たく美味しい水が涸れることなく湧き出していて、登山者を癒してくれます。ボトルに水を満たしたら、その先にはベンチがある水無分岐が現れます。水音と小鳥の声が癒やされる休憩のポイントです。

こうぞう岩には冷たくて美味しい湧き水があります(写真=池田浩伸)

森の景色を楽しみながら、夏に橙色の花を咲かせるオオキツネノカミソリ群生地を過ぎると、歩きやすかった道から途中にはロープまで現れる急坂に変わります。木の幹に捕まりながら高度を上げていくと、やがて縦走路水無分岐に飛び出します。

水無コースは7月下旬にはオオキツネノカミソリのお花畑になる(写真=池田浩伸)

ぱっと展望が開け稜線に降り注ぐ眩しい光の中、コバノミツバツツジのトンネルを抜けて井原山山頂に到着です。東西に伸びた稜線はコバノミツバツツジと新緑に鮮やかに彩られ、玄界灘と博多市街地、有明海に浮かぶ雲仙岳など遮るもののない展望が広がっています。

展望が良い井原山山頂(写真=池田浩伸)

お弁当を開いて展望を楽しんだら、雷山方向へ足を伸ばしてみましょう。花に埋もれるような稜線歩きが楽しめます。

井原山山頂から脊振山への稜線(写真=池田浩伸)

下山は、先程の縦走路水無分岐まで戻り、三瀬峠方向へ尾根を下ります。新村分岐からは、左折して谷道を下り第2鍾乳洞分岐を目指します。あまり登山者が通らない道ですが踏み跡はしっかりと付いています。小さな流れの周りには緑の絨毯が広がっています。この谷はイチリンソウやニリンソウの群生地です(花期は4月中旬)。

井原山山頂から脊振山への稜線(写真=池田浩伸)

第2鍾乳洞分岐まで戻ったら、往路を登山口まで戻りましょう。

 

 

プロフィール

池田浩伸

佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。

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