毎日15分+5km。山岳ガイド山田哲哉さんに聞く、登山自粛中に習慣にしたいトレーニング

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新型コロナウィルス感染拡大防止のため自粛で登山に行けないだけではなく、通勤する回数も減って、いつも以上に運動不足の登山者も多いはずだ。そこで、山岳ガイドという仕事柄、体力を維持していなくてはいけない山田さんに普段からできるトレーニングについて伺った。

登山シーズンイン。山に行きたいストレスに加え・・・

新型コロナウィルスの影響で登山を自粛されている方が多いことと思います。見上げる街路樹の枝先も、いつの間にか新緑の美しい葉をつけて、毎日、大好きな“あの山”も少しずつ緑色が斜面を登りだしているはずです。「うーん!行きたいなぁ・・・」。

山に行けないストレスも大変ですが、運動不足とテレワークで、何やらお腹周りも膨らんできたみたいです。山どころか、クライミングジムも扉を閉ざしているところが多く、一般のスポーツジムも閉鎖です。これでは、山に行ける環境が再び訪れても、元気に山を歩ける身体を取り返すには、時間がかかりそうです。

どうしたら良いでしょう? 登山を運動量で考えてみると、実は大変な運動量です。身近な日帰りの登山でも、5~6時間を歩きます。登山をしている間、心臓はドキドキと心拍数を上げ、ハーハーゼーゼーと呼吸して肺機能を使います。これだけの時間、心肺機能をはじめとして、全身の運動能力をフル稼働させるスポーツは少ないです。月に一、二回程度は登山をしていた方がピタッと登らなくなれば、少しずつですが、確実に、体力、筋力は落ちていきます。そして、「山に行かないから食事制限する」わけではなく、摂取するエネルギーが変わらなければ確実に身体を重くさせているはずです。

登山は誰でも始められる運動のために、意外とトレーニングを軽んじる傾向があります。「山に行くのがトレーニングです」という人が多いです。普段はそれでも良いのですが、今は登山の為のトレーニングが必要です。

15分の筋力トレーニングと5kmのランニング

自宅でできるトレーニングは何でしょうか? 室内でできるトレーニングは、ずばり筋力トレーニングです。体幹を鍛える腹筋、背筋。脚、特に大腿を鍛えるスクワットなどのトレーニングは、登山に伴う腰痛や膝痛を克服するうえでも、普段から行っておきたいトレーニングです。毎日続けるためには、一日15分程度のメニューを作って習慣づけておくこと。私は、二日酔いでも、疲れていても必ず毎朝、行っています。

登山に必要な心肺機能の強化、維持のために効果的なトレーニングは、やはり屋外でのランニングです。毎朝、5km程度を基本に、無理のないスピードで行うのが理想です。現状ではランニングの際にもマスクの着用が推奨されていますが、感染拡大抑止のためと考えずに、心肺トレーニングの強化と考えたらよいかと思います。マスクランニングは呼吸力のアップに効果があり、将来、高所を目指す登山者は、ぜひ、マスクを着用してランニングをしてみてください。

ただ、ランニングは膝、踝への負担も大きいので、関節などに不安のある方には、早歩をおすすめしています。早歩は、いわゆるウォーキング的にゆったりと歩くのではなく、全力で、呼吸が荒くなる程度に速度をあげて歩くことです。ランニングでも早歩でも大股でのロングストライド走法ではなく、細かく足を運ぶピッチ走法が腰、膝への負担は少ないと言われています。

室内の筋トレも、屋外でのランニングでも大切なことは、絶えず「山」を意識して行うことです。筋トレでも、いつも重荷を背負い、山に向かう自分を意識することで、漫然としたトレーニングではなく、意識的に楽しく励むことが可能になります。辛い時期ですが、ここでつけた習慣が実際に山に行けるようになったとき、みなさんの体力に余裕のある登山に、きっと役に立つと思います。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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