初夏の蔵王山に山形県側から登り、蔵王温泉おおみや旅館で白濁の硫黄泉に癒やされる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
※緊急事態宣言は解除されましたが、お住まいの地域と訪問する山域の自治体の情報を確認して行動をお願いします。

ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第5回は初夏の蔵王山と蔵王温泉の老舗旅館へ。

写真・文=月山もも


宮城県と山形県の県境に位置する蔵王連峰。中でも山形県側の山形蔵王と言えば、冬の「樹氷」が特に有名なスノーリゾートですが、私は初夏や夏の蔵王も好きで、何度も訪れています。
山形駅から路線バスに40分ほど乗車し、終点の蔵王温泉バスターミナルで下車しました。山形側から蔵王山に登る際は、バスターミナルから徒歩15分ほどのところにある蔵王ロープウェイに乗り、地蔵山頂駅から歩き始めるのが一般的ですが、今回はロープウェイを使わず山頂を目指すことに。

  

稜線に出るまでは誰ともすれ違わず、静かな山歩きを楽しめました。スキー場のゲレンデから登り始めて樹林帯を歩いていると、頭上をロープウェイが通り過ぎていきます。稜線に出ると火山らしい荒涼とした景色が広がり、あちらこちらに残雪が残る道を歩いて最高峰の熊野岳山頂を目指しました。

熊野岳山頂を踏んだ後は宮城県側の山頂の刈田岳まで足を延ばし、御釜を眺めてから元来た道を戻ります。帰りはロープウェイを使ってショートカットし、蔵王温泉に戻ってきました。

下山後は蔵王温泉「おおみや旅館」に宿泊します。
創業から千年以上、現在の館主の方が33代目という蔵王温泉でも屈指の老舗旅館です。新しいサービスも取り入れながら進化を続けている快適な宿で、これまで何度か宿泊しています。

蔵王温泉は硫黄の成分が多く金属が錆びやすいため、おおみや旅館にはエレベーターがありません。ですが館内の廊下や階段がすべて畳敷きでスリッパを履く必要がないため、登山後の疲れた足でも苦にならずに部屋に着くことができました。

宿泊するお部屋は日当たりがよく、どことなく懐かしさを感じさせるレトロな雰囲気の和室です。冷蔵庫を開けるとサービスのフルーツが!さっそくいただいてしまいました。登山で疲れた体にフルーツの甘さが染みわたります。

一休みした後は浴室へ!おおみや旅館の浴室は2つあり、時間帯で男女が交換になります。
雰囲気ある木造の浴室に足を踏み入れると、濃厚な硫黄泉の香りに包まれました。内湯が2つと露天風呂が1つありますが、温度や色が少しずつ異なるので入り比べるのも楽しいです。

  

また、露天風呂はよしずに覆われていて眺望はありませんが、外の空気を感じながら楽しむ湯浴みはやはり格別でした。

お風呂あがりは浴衣に着替えて、2階の「おくつろぎラウンジ」へ。

マッサージチェアを使ったり、サービスのコーヒーやお茶をいただきつつ本を読んだりしながら夕食までの時間を過ごします。外から入ってくる風が気持ちよく、慌ただしい日常をしばし忘れて、ゆっくりと時間が流れていくのを感じました。

夕食は食事処でいただきます。お酒は、おおみや旅館オリジナルのお酒「八右衛門」をオーダーしました。「じゅんさい」など夏らしい料理をつまみにいただく辛口の冷酒。地元の食材でおいしい地酒がいただける幸せを噛みしめます。

 

お品書きには「できるだけ郷土の味をそろえました」と書かれており、同じ山形県の日本海側、庄内地方出身の私にとっても馴染み深い料理や食材が並びました。お刺身は日本海で獲れた鯛、サーモン、生だこ。とても新鮮です。

 

箸休めは「麦切り」という、庄内地方の郷土料理の冷たい麺です。小麦粉をこねて伸ばしたものを包丁で切るというシンプルな麺ですが、なめこやミョウガなど薬味もたっぷりで大変おいしくいただきました。

夕食後は登山の疲れもあって早々に寝てしまいましたが、翌日は早く起きて、男女が交代した浴室へ朝風呂に入りに行きます。

 

こちらの浴室は円形の内湯と露天風呂が一つずつ。源泉は浴槽の奥に見える石垣の隙間から湧き出ており、直接浴槽に注がれています。湧き出たばかりの新鮮な源泉を存分に楽しみ、お腹が空いてきたところで朝食会場へ。

「山形のだし」や「庄内産焼豚と温野菜の陶板焼き」「揚げ茄子と紫蘇味噌巻き」など、懐かしくもしみじみとおいしいおかずで、ご飯が進みます。お米はもちろん、山形県産の「つや姫」で、朝からお腹いっぱいにいただいてしまいました。

 

チェックアウト後は温泉街のお土産屋さんを覗いて地酒を購入し、山形駅に向かうバスに乗り込みます。冬の蔵王もいいけれど、山の美しい景色と名湯をのんびり楽しめる夏の蔵王もやはりすばらしいな、と再確認した旅でした。

(取材日=2019年7月上旬)

*掲載情報は、取材時の内容です。

おおみや旅館

蔵王温泉にある創業1000年以上の老舗旅館。

料金:1泊2食付き/1室1名15000円~、1室2名12000円~
住所:〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉46
電話:023-694-2112
HP:http://www.oomiyaryokan.jp/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

編集部おすすめ記事