蒜山(ひるぜん)/笹原が広がる爽快な稜線に、ヤマツツジのオレンジ色がアクセントを付ける

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鳥取県と岡山県の県境、伯耆大山の東側にたおやかな山容を横たえる山、蒜山(ひるぜん)。日本二百名山、花の百名山にも数えられるこの山、6月の中旬は美しい草原が広がる稜線に、ヤマツツジのオレンジが点々とアクセントを付ける。

 

中国地方で人気の山と言えば、何といっても大山でしょう。山頂台地からの景色は雄大で、何度登っても飽きることはありません。

ところが今年のグリーンシーズンは、その山頂台地に設置された登山道の全面改修工事が行なわれているた め、立ち入り禁止です。代わりにどこへ行こうかと、頭を悩ます人も多いのではないでしょうか?

明るい氷ノ山や、ダイナミックな火山地形を感じる三瓶山も楽しめますが、オススメしたいのは蒜山です。とてもアクセスが良いうえ、上蒜山、中蒜山、下蒜山の3つの頂上があって、体力に応じてさまざまなコースが選べます。

明るい稜線が続く蒜山。笹原の道をたどって山頂へ


三座を一気に、または二座を結んで縦走することも可能なほか、もちろん一つずつ登ることもできますが、今回、ここでは、もっとも登りやすい中蒜山の往復コースを紹介します。

八合目までは木陰の中の登山道をたどり、九合目からは爽快な稜線を歩く、景観の移り変わりも魅力です。

塩釜冷泉から中蒜山を往復する

塩釜ロッジ駐車場・・・五合目・日留神社・・・中蒜山・・・五合目・日留神社・・・塩釜ロッジ駐車場(所要時間/2時間15分)

⇒コースタイム付きの地図はこちら

 

笹原が広がる爽快な稜線と山頂からの展望を堪能する

中蒜山へは、マイカーで向かいます。登山者用の駐車場は塩釜冷泉の塩釜ロッジの裏で、広くて無料。ロッジの目の前が登山口です。

登り始めてすぐに現れる、小さな草原の右手の古い林道に入れば早くも一合目。

二合目付近では涸れた沢沿いをたどっていきます


涸れ沢を横切るあたりで二合目を通過し、その先で尾根に上がれば三合目に到着。あとはひたすら尾根をたどっていきますが、程よい間隔でこの「●合目」の標柱が現れるので気が紛れます。

登山道中には、このような大きなミズナラの木もあり、心が癒やされる


五合目のすぐ上にある祠は、大霊留女貴命(おおひるめのみこと)を祀る日留神社(ひるがじんじゃ)。その先、七合目を通過すると鎖場もありますが、傾斜は緩く特に頼る必要はないでしょう。

八合目を過ぎると周囲の木立は低くなり、次第に視界が開けてきて、九合目で稜線の縦走路へと辿り着きます。稜線からは進路を左へとりますが、6月中旬前後であれば、周辺は色鮮やかなヤマツツジが周囲で花を咲かせているでしょう。

6月中旬、稜線の点々と咲くヤマツツジは稜線上のアクセントとなる


頂上直下に大きな木はなく、左右には笹原が広がって爽快です。上蒜山分岐のすぐ後ろに立つ、避難小屋の横を通り過ぎると広い頂上に到着。見晴らしは最高で、ベンチなども設置されていて、ランチタイムには最適の場所となっています。景色を堪能しながら、ゆっくり時間を過ごすと良いでしょう。

中蒜山頂上から笹原の向こうに見下ろす蒜山高原


山頂を堪能したら、往路を引き返して塩釜ロッジへ下山しますが、塩釜冷泉にも立ち寄りましょう。登山道の隣の道を、100mほど歩いた先にあるひょうたん型の池が塩釜冷泉です。池の底の穴からは、毎秒300リットルの勢いで、水温10度の水が湧き出しています。

透き通った水を湛える塩釜冷泉。名水百選にも認定されている


そして、下山後にもう一つ楽しみたいのが、ソフトクリームです。蒜山高原で飼育される、ジャージー牛のミルクをたっぷり使っていて味は濃厚。暑い季節の登山でほてった体も、心地よくクールダウンしてくれることでしょう。

蒜山ジャージー牛のソフトクリームは、塩釜冷泉入口にある、塩釜茶屋などで食べることができます。ぜひ味わってみてくださいね。

 

プロフィール

木元康晴

1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。

 ⇒ホームページ

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