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“隣人”の生態と、日本の自然の奥深さ 『ツキノワグマのすべて 森と生きる。』

登る前にも後にも読みたい「山の本」
たしなみ 2020年06月29日

評者=前川貴行(動物写真家)

ツキノワグマのすべて 森と生きる。

著:小池伸介
写真:澤井俊彦
発行:文一総合出版
価格:1800円+税

日本の野生動物のなかで最も存在感を放つ生き物が、北海道のヒグマと、本州、四国に棲むツキノワグマだろう。特にツキノワグマは、我々にとってとても身近な存在だ。意外かもしれないが、宅地と入り組んだ森や山に生息し、人目を避けながらもすぐ隣で生活している。住み分けができていた昔と違い、土地開発が進み、農村での暮らし方が変化した現代ならではの状況と言える。本書はそうした我らの隣人の姿を、とても丁寧にわかりやすく教えてくれる。

まず目を引かれるのは秀でた写真の数々だ。まれなシーンを捉えながら、なおかつ生態写真にとどまらずに芸術として成り立たせたことに驚く。そして、それらの写真と相まって、詳細でありながら理解しやすい解説が本書の真骨頂である。なかでも、個々の月の輪模様や食物で変化するフンの数々、木の種類によってつき方が変わる爪痕などをずらりと並べた写真は、労力を惜しまず丹念に記録したものだと感心する。さらには、バイオロギングと呼ばれる小型カメラを装着した映像記録も興味深く、クマの視点で見る映像は、新鮮で驚きに満ちたものだ。

ツキノワグマを理解するにとどまらず、日本の自然の奥深さまで伝えてくれる本書。著者は「あらためて日本の森にはツキノワグマがよく映えることに気づくとともに、なくてはならない存在であることを強く心に感じることができた。」と最後に締めくくっている。まさにそのとおりだと確信する。

山と溪谷2020年6月号より転載)

書籍・書評
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