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八ヶ岳の横岳などにしか咲かない高山植物、ツクモグサの可憐な姿

高橋 修の「山に生きる花・植物たち」
たしなみ 2017年06月05日

夏を予感させるような暑い日々が続くと、そろそろ夏山シーズンだなあと思いだす。そうすると、まず登りたくなる山は、そう、八ヶ岳の横岳だ。

なぜ、八ヶ岳? なぜ横岳? と、思うかもしれないが、ここにしか咲かない高山植物があるからなのだ。その高山植物の名は、ツクモグサ
ちょっと変わった名前だ。日本では八ヶ岳、白馬岳、利尻岳など、わずかな場所でしか咲かない。

どんな花かというと、花の形はチューリップのような形で、地面からそのまま生えているような感じ。葉は花が咲いたころに展開し始め、パセリのように細かく切れ込んでいる。花の直径は2.5~3cmだが、もっと大きく見える。

地面に花だけを置いたような咲きたてのツクモグサ

花びらに見えるのは萼で、外側には細かい長い毛が生える。ツクモグサが一番きれいなのは、やはり咲きたての毛がたくさん生えている状態だ。写真のツクモグサは、咲きたてでまだほとんど葉が展開していない。

ツクモグサとは変わった名前だが、植物写真家の永田芳男さんによると、ツクモグサの発見者である城数馬が、城数馬の祖父の名前である九十九にちなんで、この植物にツクモグサ(九十九草)の名前を付けたとのことである。

 

6月上旬の八ヶ岳はもう高山植物のシーズンだ。降雪量の少ない八ヶ岳は北アルプスなどに比べ雪融けが早いのだ。

梅雨明けにはもう多くの高山植物が咲き終わっている。そこが、八ヶ岳が花の山なのに、花の山だとあまり知られていない所以である。

ここ、八ヶ岳・横岳の稜線に来ないとみられないツクモグサ

八ヶ岳ではウラシマツツジやオヤマノエンドウなど、早い開花期の高山植物はもう満開。このころまだ、沢筋には雪が残っている。登山者が少ないこの時期にツクモグサは八ヶ岳の横岳の稜線にひっそりと咲いている。

ツクモグサに出会うために大事なことがひとつ。ツクモグサは晴れないと咲かない、ということだ。雨の日はもちろん、霧が出ても花が開かない。ツクモグサに出会えるかどうかは天気次第ということなのだ。

最後にお願いしたいことがある。写真撮影のために、登山道を離れて山の中に入ることはやめていただきたい。ツクモグサの開花のころ、多くの高山植物はまだ発芽していない。そんな植物をちょっと踏むだけで、成長直前の新芽は大きなダメージになり、植物全体が枯れてしまうこともある。

登山道から、一歩もはみ出さないように、どんな植物も踏まないように気を付けて、いつまでも繊細で美しい高山植物を楽しめるように、気を使って行動してほしい。

 

教えてくれた人

高橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒高橋修さんのブログ『サラノキの森』

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