梅雨時期は視点を変えて海岸線のウォーキングはいかが? 三浦半島・荒崎海岸で鎖場・岩礁歩きを満喫

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天候が不安定な梅雨時期の登山は気が進まない人も多いだろう。こんなときは、視点を変えて海辺を歩いてみてはどうだろうか? 海を見ながら岩稜登山(気分)を楽しめる三浦半島・荒崎海岸を紹介する。

 

天候がはっきりしない梅雨は、行き先選びが難しい季節です。そんなときこそ少し視点を変えて、海岸線のウォーキングを試してみるのはいかがでしょうか? 行き先は「いい山」ではありませんが、コース次第で一風変わった、山歩き気分が楽しめます。

歩き始めてすぐに現れる「どんどんびき」と呼ばれる細長い入江。このような、山とは違った地形が連続します


なかでも神奈川県の三浦半島は、登山者が楽しめるような海岸線のウォーキングコースが充実しています。中でも、初めての人にオススメなのが荒崎海岸です。ここは「荒崎シーサイドコース」として整備されていて、岩礁伝いに歩くことができるほか、鎖場も現れて変化に富んでいます。

荒崎シーサイドコースハイキング

コース行程:
荒崎バス停・・・潮騒の丘・・・弁天島・・・栗谷浜漁港・・・長浜海岸・・・矢作入口(約2時間)

⇒モデルコースはこちら

 

新鮮な海の景色と地層、そして潮風を満喫するトレッキング

荒崎海岸の入口となる荒崎へは、京急久里浜線の三崎口駅から、京急バスで向かいます。所要時間は約23分で、運賃330円。休日は1時間に2本程度の運行があります。

荒崎でバスを降りたら、海沿いの車道を歩いて荒崎公園へ。まずは右手の「潮風の丘」へと向かいましょう。階段を登りきった上の広場が、標高22mの城山頂上で、二等三角点も設置されています。

眼下には表面がギザギザになった、白と黒の層が縞模様を描く岩礁の向こうに海が広がっています。山にはない景観に、とても新鮮な気持ちを味わえるはずです。

城山の二等三角点と、そこから見下ろした岩礁。泥岩と火山岩が交互に積もって出来た岩です


道を引き返して、「どんどんびき」という狭まった沢のような入江を見てからトイレ前を過ぎると、いよいよ本格的なシーサイドコースがスタートします。海蝕洞窟の十文字洞を回り込み、コンクリートの橋を渡って弁天島の脇を通過します。

島とは言いつつも地続きの弁天島。切通しのようになった部分を通り抜けます


岩場の側面を鎖伝いに慎重にトラバースする箇所はスリルを味わうこともできるでしょう。洞門を潜り抜けて小さな砂浜である箕輪の浜へ。続いて左の大きなこうもり穴ぐらを過ぎ、私有地になっているお仙ヶ鼻を急な階段で通過すれば、小栗湾の漁港へと出て一息つけます。

まるで山の岩稜帯のようなしっかりした鎖場を通過して、岩の穴を通り抜けます


漁港の先の小さな砂浜からは、今度は佃嵐崎の岩礁帯へと進みます。岩の区間を通過して左に回り込めば、砂浜が広がる長浜海岸です。

例年であれば7月中旬には海水浴場が開設されるこの砂浜を横切って、その先の防波堤の手前まで歩けばコース終了。あとは車道を東へ進み、国道134号を渡れば三崎口駅に戻る矢作入口バス停です。

迫力ある佃嵐崎の岩礁帯を過ぎると、ガラリと雰囲気が変わりおだやかな長浜海岸を歩きます


海岸の美しさを満喫できるこのコースの、もうひとつの楽しみが海浜植物です。海の間近という生育環境の厳しさは、高山にも似ています。まるで高山植物を思わせるような、色鮮やかな花を咲かせる植物も目立ちます。

6月下旬から7月にかけてのこのコースでは、ハマユウやスカシユリ、ハマゴウなどの花が咲いているので、探しながら歩いてみましょう。

長浜海岸のハマゴウと、箕輪の浜近くで咲いていたスカシユリ


なお、このコースは市街地からは、さほど離れていないため、本格的な登山装備は不要です。それでも、できればローカットのトレッキングシューズをはいて、動きやすい服装で向かうことをオススメします。行動食と飲料水、それにレインウェアと、簡単なファーストエイドキットも忘れないようにしましょう。

そして、もう一つ気をつけたいのが海水面の高さです。満潮時には水位が上がるため、トラバースを強いられる箇所が増え、飛び石伝いにジャンプしなければいけない場面も現れて一気に難易度が上がります。

海水面の高さは、事前に気象庁のウェブサイトで知ることが可能です。以下に手順を紹介すると――、

  • ①「潮位表」で検索して気象庁のウェブサイトにアクセス。
  • ②「関東地方・伊豆諸島」→「油壺」とクリック。
  • ③「表示期間」に行きたい日の日付を入力。
  • ④「毎時潮位(グラフ)」と「毎時潮位(表)」にチェックを入れて、「各項目を入力してクリック」をクリック。

すると、その日の予想が表示されます。コース前半の、岩礁帯を通過する時刻の潮位が80cm以下であれば、問題なく行動可能です。

気象庁のウェブサイトで自由に閲覧できる潮位表。行動可能の目安は、潮位80cm以下


このコースは、一気に歩けば2時間ほどのコースですが、海の景色は新鮮で、あれこれ寄り道したくなるはずです。行動時間は、たっぷり余裕をとっておくのが良いでしょう。

 

プロフィール

木元康晴

1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。

 ⇒ホームページ

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