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ツバメの雛が落ちているとき、疑うべきは「〇〇〇」である

カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?
たしなみ 2020年07月08日

『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』の著者であり、動物行動学者の松原始さんによる連載。鳥をはじめとする動物たちの見た目や行動から、彼らの真剣で切実で、ちょっと適当だったりもする生きざまを紹介します。第3回は、軒先で巣をつくるツバメの話。

春に見かける光景の裏には攻防が…

 かつて、生物は種を保存するように行動する、と言われてきた。だからこそ仲間同士で殺し合いはしないのだ、と。
 いやあ、ふつーに仲間を殺しますが。それも、子どもを殺しますが。

 子殺しはライオンやチンパンジーなどが有名だ。ライオンはオス1頭と複数のメスからなる群れ(プライドという)を作るが、別のオスがプライドを乗っ取った場合、既にいる子どもを殺すことがある。子育て中のメスは発情しないからである。子どもを殺せばすぐに発情し、今度は自分の子どもを産んでくれる。

 言ってみれば戦国時代だか、海外テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』だかの世界なのだが、これは別に男性優位とか女性蔑視とかではない。見ず知らずの子どもに腹を立てて殺してしまうような危ない形質のオスが、より上手に子孫を残してきたからだ。

 こう書くとただの性格破綻なDV男だが、自分の子どもにも腹を立てて殺してしまうようでは子孫が残らないので、やはり「他人の子どもは嫌いだ」という程度のより好みはあるのだろう。

 もし種を維持したいのなら、誰の子どもでも分け隔てなく育てるべきである。だが、自分の子どもでなければ殺してしまうということは、ライオンが残したいのは自分の子孫であって、他人の子どもではないということだ。
 これが、種の保存という概念が否定される大きな理由である。

 さて、ライオンはいかにも「猛獣」だから、こういうことをやると聞いてもそんなに不思議に思わないかもしれない。だが、身近なところで子殺しをやるのはツバメだ。
 ツバメは渡り鳥で、春になると日本にやって来る。そして、営巣場所を見つけると巣を作り始める。

 ところが、巣の前にツバメが3羽、ないしそれ以上いることがある。仲良くお手伝いしてあげている、なんてことはもちろんない。2羽はペアで、もう1羽は割り込んできたよそ者だ。営巣場所、ないし巣そのものを乗っ取ろうとしているか、メスを奪おうとしているか、である。

 このストーカー野郎の攻撃はさらに続くことがあり、ひどい時はペアが産んだ卵や雛を捨ててしまう(営巣場所を狙っている場合、ペアでやる場合もある)。

 この時に攻撃しているツバメが何かを計算している、というわけではないと思うのだが、結果として、ペアがその巣を使うことを諦めたり、ペアを解消したり、ということはあり得る。そうなれば巣、あるいはメスを分捕れる可能性が出て来るわけだ。

 ということで、ツバメの巣の下に卵、あるいは雛が落っこちている場合、まず疑うべきは何らかの事故、次に疑うべきはツバメである。
 何でもかんでもカラスのせいにしてはいけない(笑)。

(本記事は『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』からの抜粋です)

 

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『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』
著者:松原 始
発売日:2020年6月13日
価格:本体価格1500円(税別)
仕様:四六判288ページ
ISBNコード:9784635062947
詳細URL:https://www.yamakei.co.jp/products/2819062940.html

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【著者略歴】
松原 始(まつばら・はじめ )
1969年奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。東京大学総合研究博物館 ・ 特任准教授。研究テーマはカラスの行動と進化。著書に『カラスの教科書』『カラス屋の双眼鏡』『鳥マニアックス』『カラスは飼えるか』など。「カラスは追い払われ、カモメは餌をもらえる」ことに理不尽を感じながら、カラスを観察したり博物館で仕事をしたりしている。

自然観察 知識・雑学
教えてくれた人

松原始

1969年奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。東京大学総合研究博物館 ・ 特任准教授。研究テーマはカラスの行動と進化。著書に『カラスの教科書』『カラス屋の双眼鏡』『鳥マニアックス』『カラスは飼えるか』など。「カラスは追い払われ、カモメは餌をもらえる」ことに理不尽を感じながら、カラスを観察したり博物館で仕事をしたりしている。

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