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今夏は特に注意して! コロナ禍における山岳地のテント場利用とテント泊山行について

Yamakei Online Special Contents
基礎知識 2020年07月16日

年間100日近くテントで泊まって過ごすという山岳・アウトドアライターの高橋庄太郎さん。雑誌への執筆のほか、テント泊に関する著書も多数ある庄太郎さんが、コロナ禍の中でのこの夏のテント泊について、テント場の状況について、寄稿してくれた。

 

もうすぐ本格的な夏山シーズンを迎えようとしている日本。新型コロナウイルスの問題が収束しないなか、今年の登山はどうなるのだろうか?

日本各地の山小屋のなかには、年内の営業を完全に中止したり、大幅に短縮したり、人数制限を行なったりするところが続出している。宿泊、食事、飲み水、トイレといったサービスを提供し、“緊急時の避難場所”としての側面もある山小屋がなければ、例年のような登山方法は成り立たない。これまで日本人はいかに山小屋に頼った登山をしてきたのかが、こういうときによくわかる。

山小屋は山中のテント場の大半を管理してもいる。つまり、山小屋が例年のように利用できないということは、テント泊山行もまた難しくなるということだ。だがそれなのに、人数制限があって山小屋に泊まれない、山小屋よりも“密”を避けやすい、などという観点から、今年はテント泊を選ぶ登山者が多くなることが懸念されている。その結果、これまでにはなかった“問題”が発生するかもしれないと危ぶまれている。

 

テントメーカーが共同呼びかけ文。テント場を守っているのは…

ところで、最近の登山店などで以下のような張り紙を見た方がいらっしゃるのではないだろうか。

この「山のテントサイトはだれが守っているの?」という “共同呼びかけ文”の出どころは、「アライテント」「ダンロップ」「MSR」「プロモンテ」「ビッグアグネス」といったテントメーカー各社。今年のテント場で起こりうる“問題”を懸念して、「テントを売るメーカーにも“責任”がある」と、アライテントの福永克夫さんがまとめたものである。

これがじつに考えさせられる内容だ。

例えば「水が補充できない」ときは、どうすればいいのか?

“呼びかけ文”では、なにも対策を講じない場合、脱水症状による熱中症などで行動不能になり、新型コロナウイルスへの対応に追われる地域の医療体制に負担をかけることを心配している。だが、“呼びかけ文”に明確な答えは書かれていない。山域によって事情が異なることもあり、状況に合わせて自分で考えるということだろう。大型の水筒を持参して麓から大量の水を持っていく、沢や池の水を浄水して使うといった方法で、それぞれの登山者が対応していかねばならない。

「トイレが利用できない」ときは、どうすればいいのか?

“呼びかけ文”が訴えるのは、山の環境が維持できなくなるという大問題である。これまでも山小屋がない山域では大きな岩の影などが公衆トイレと化し、地面に真っ白なペーパーが散乱している状態が珍しくなかったが、今年はそんな状況が多発するかもしれない。これからは携帯トイレの持参を“常識”として、必携装備のひとつに入れるべきなのかもしれない。

 

大切なのは登山計画。登山者自身が自覚を持ってテント泊を実行しよう

“水”“トイレ”といった具体的な問題に対する“対策”以上に重要なのは、出発前の「登山計画」だ。“呼びかけ文”の最後の言葉も「もう一度あなたの登山プランを見直してみませんか?」となっており、今年は例年以上に計画段階での熟考が求められている。

山小屋の営業状況に加えて、テント場の状態を事前に詳しく調べておきたい。例年ならば山中のテント場の大半は予約なしで利用することができたが、今年は多くの山小屋が“予約”を必須としている。今年のテント泊登山の計画の大前提は、早めに日程を確保したうえで、確実に予約を取ること。昨年までは、泊まる場所を曖昧にしたままの計画で入山しても、テント泊ならばよほど混雑した場所や時期でない限り、宿泊することができたが、今年は宿泊場所を確保できず、山中に取り残されかねないのである。

どこかのテント場に予約を入れるということは、その日は他のテント場を利用することはない/利用することができないということでもある。人気のテント泊山行のスタイルである“縦走”の際、例年ならば疲れたときには予定よりも手前のテント場に泊まることも可能だったが、今年は当初の目的地まで歩きとおさねばならない。これは悪天候の際も同様で、無理に歩こうとすれば事故や遭難の恐れが高まる。

前出のアライテント福永さんに伺ったところ、テント泊山行の中でも“ベースキャンプ型”がお勧めだという。「テント泊の装備は、テント以外に寝袋やマット、調理器具などの重さも加わります。しかし、麓にテントを張って山頂往復するスタイルならば、あまり体に負担がかからず、事故の可能性が少なくなります。それに稜線上のテント場に比べれば、水やトイレの問題も軽減されるでしょう」。いっそ今年は無理にテント泊をせず、比較的楽な日帰り山行に変更するのも一手である。

今年はとにかく無理をしないことがいちばんだ。今年は、宿泊地、水、トイレの問題を中心に、現地に入ってから「臨機応変に対応する」のが、非常に難しいのである。少しでも体調に問題があったり、悪天候が予想されたりするときは、いさぎよく計画をキャンセルするのが“正解”だと、僕は考える。それが、2020年のテント泊山行の「登山プラン」なのではないだろうか?

危機管理 マナー
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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