おとな女子登山部つじまいさん力説! 「女子のためのソロテント泊」のはじめかた

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好日山荘おとな女子登山部によるリレー連載。今月は、好日山荘なんば店勤務のつじまいさんによる「女子のためのソロテント泊」。北アルプスから日本海まで、13日かけてソロでテント泊縦走した経験もあるつじまいさんに、「女子」「ソロテント」のためのはじめの一歩について、教えてもらいました。

 

テント泊山行の醍醐味とは? ソロのメリット、デメリットも確認!

こんにちは。好日山荘なんば店勤務のつじまいです。

私が一番好きな登山スタイルである「テント泊縦走」。最近、女性ひとりで挑戦してみたいという方がどんどん増えているようで、お店で接客していてもよく感じます。

衣食住、全てを背負って歩き、大自然の中で眠る幸せは何ものにも代えられません。

ただし、たくさん山に登っていると楽しいばかりではなく、雨の日や寒い日にも当たってしまいます。そんな中でも、精神を研ぎ澄ませて自分自身の判断で乗り越えていくことにも喜びを感じます。困難であればあるほど、乗り越えたときの感動が大きいともいえます。

そして、一人で歩いていると、人の優しさやあたたかさが余計に感じられるんです。山頂で素晴らしい景色を眺めながら、「あの子に見せてあげたい」とか、「次はみんなで来よう」とか、ついつい思ってしまうのですが(笑)。

頑張ったご褒美は、雲の上の絶景


ソロテント泊に憧れる反面、心細い、不安、と思われる方には、私のテント選びや、ソロテント泊を楽しむための秘訣をご紹介したいと思いますので、ご参考にしていただければと思います。

ただ、今年の夏山は、コロナ禍の中で、例年とは様子が違ってきています。

新型コロナウイルス感染防止のために、今シーズンの営業休止を発表した山小屋もあります。大好きな登山が思うようにできない葛藤もありますが、いつか目標のあの山に行けるように。来たるべきその時に備えて今から準備をしてみてはいかがでしょうか。

寝るのも食べるのも自由なテント泊登山


ちなみに私がソロで登山をするのはこんな理由から。

  • 人と予定を合わせなくてもよい
  • 好きなことを思う存分できる
  • 自分のペースで歩ける

なんとなく思い立って(もちろん計画はしっかりと)山へ行き、写真を撮ったりお花を眺めたり。自分の好きなペースで歩く山登りほど、気楽で自由なものはないなと思います。

写真を撮ったり景色を眺めたり・・全部自分の時間です


ただし、ソロで行くことのデメリットももちろんあります。

何かあった時に助けてくれる人がいないことが一番大きいデメリットです。複数で行く場合と比べソロ登山は何倍にもリスクが高くなります。怪我や病気で歩けない。道に迷ってしまった。日が暮れて山道で真っ暗に…。野生動物に遭遇した・・・。

これらのピンチに遭遇したときも、判断や対応を全て自分ひとりで行わなければなりません。

 

テントの選び方ほか、これから始めようという女子登山者にアドバイス!

一歩を踏み出すために、どんなことを考えたらよいでしょう? 

初めてなら定番テントを選ぼう

テントは思い切りの必要な大きな買い物ですよね。「冒険しない」というのはおもしろくない気もしますが(笑)それにはちゃんとした理由があります。

定番テントは、いいテントだから定番なんです。まず、間違いないです。使っている人が多いので、使い心地や広さを聞いてみましょう。

はじめてのテント「エアライズ2」(限定色カラー) ※現在は販売無し


例えば、私が初めて購入した「エアライズ2」。

キャンプ場でいうと涸沢や雷鳥沢で見かけるテント、ナンバーワンです。このテントのいいところは、とにかく「普通」。実はこれ、すごく褒めてます。日本の老舗テントメーカー アライテント社のロングセラーで、バランスのとれた基本のテントですね。

重さと耐久性というのはある程度比例してきますので、軽すぎるものは、厳しい環境である高山の稜線で使用するのは不安です。ペグの使い方や風向きなどに熟知した上級者向きともいえます。「エアライズ2」は重量1,550gと超軽量では無いですが、基本的な山岳テントの重量だと考えられます。

色とりどりの涸沢キャンプ場


この重さをベースに耐久性をとるか、軽さをとるかを判断できると思います。

また、ダブルウォールということも初めてのテント選びには重要な点です。

ダブルウォールとは、その名の通り、本体と本体の上に被せる防水のフライシートで二重になっているテントのこと。反対にシングルウォールは本体が防水になっている一枚張りのテントのことです。ダブルウォールテントの良いところは、結露が少ないところと、本体とフライシートの間に靴を置いたり、調理したりするスペース(前室)が設けられているところです。

前室に置いているものが動物に狙われることもあるのでご注意を


私は、汚れたものをテントの中に入れるのは少し抵抗があるので、前室は必須です。逆にシングルウォールテントは結露しやすく、全て中に入れないといけない、というデメリットがありますが、軽くて設営が早いというメリットがあります。厳しい環境(冬山など)で使われることが多く、よりエキスパート向きだといえます。

 

何人で泊まるのか? テントサイズを決めよう

まず、絶対に一人でしか山に行かない、という方は迷わずソロテント(一人用)を選んでOK。たまには、二人で行くかもしれない・・という方は、2~3人用をオススメします。

ちなみにエアライズ1の重さは1,360g、エアライズ2の重さは1,550gです。その差は190g。この差を大きいととるか小さいととるかは分かれてくるところですが、女性の場合、中で着替えしたり体を拭いたり、必然的にテントの中にいる時間が多くなりますので、大きめを選んでも後悔はしないと思います。

ちなみに、3人用以上を一人で使うのは、重すぎる上にキャンプ場の限られたスペースを多くとってしまうのでやめましょう。

北アルプスを13日間縦走したときに大活躍だった「カミナドーム1」


ソロテントの内部


私は、長期縦走用でファイントラックの「カミナドーム1」を使っています。軽くて使いやすいテントで、体力に不安のある女性にオススメです。おとな女子登山部の女性限定テント泊ツアーを行ったときも、一番人気でした。

おとな女子登山部・はじめてのテント泊ツアーの様子

 

メンテナンスやアフターケアも欠かさずに

メンテナンスをしっかりしてあげるとテントは長持ちします。

私はあらゆる登山道具の中でテントが一番好きなアイテムです。なので、特にテントはきれいに使ってメンテナンスもしっかりしてあげます。

具体的には、

  • 山から帰ってきたらすぐに乾かす。
  • 汚れていたらお風呂場で洗ってあげる。
  • フライシートが撥水しなくなってきたら撥水コーティングをしてあげる。
  • テントポールチェックも忘れない。ポールの中のゴムも劣化しやすいです。山でゴムが切れたりポールが折れないよう、使う前に見ておきましょう。


使い続けるとこのように曲がってくるので、パーツを購入し修理する


これらのメンテナンスを忘れず行った結果、エアライズ2で50泊以上していますが、まだまだ現役です。

ちなみにコンロなどの火で焼けたり、破れたり、ポールが壊れてしまったり・・・といったトラブルの場合、その修理対応をしっかりしてくれるメーカーのものを選ぶことが大事です。好日山荘で取り扱うテントメーカーのものはすべて修理対応ができますが、通販サイトで海外メーカー製のテントを購入する場合は注意が必要です。

好日山荘では、テント泊が大好きなスタッフがたくさんおりますので、アフターケアのご相談もお気軽にしていただければと思います。

おとな女子登山部メンバーは全員テント泊好き!

 

テント重量、どこまでOK? 軽さ、安全性、快適さで考え、リスク管理も忘れずに

軽量化と安全性と快適さのバランスについて

私自身を含めて女性にとって一番気になるのは、「重量」の部分ですが、徹底的な軽量化が登山をより楽にしてくれるかというと、悩ましいところです。

例えば、シュラフやマットを小さいものにした結果、寒くて寝られなかったり、超軽量の非自立型テントが、悪天候の中設営することもできなかったり、という話はよく耳にします。

ツエルトは設営にコツがいる


多少重くても快適な居住空間をつくることで、心の余裕を持たせ、身体を休ませてくれることもあります。

私は登山初心者の頃、テント泊で色々な余計なものを持っていってしまい、荷物が重くて辛かった経験があります。経験を重ねるにつれて、必要なものとそうでないもの、軽量化していいところとダメなところ、山の内容によって装備を変えることを学んでいきました。

最初のうちは、失敗してしまうことが多いですが、山に行くたびに「自分のスタイル」が完成していくと思います。それもテント泊の面白いところですね。

 

リスク管理は? 一人で山に入る前の注意点

一人で山に入る前に、最低限気を付けないといけないことがあります。

  • 山岳保険に入る (ココヘリに入るとさらに安心)
  • 山行計画を必ず人に伝える(「COMPASS」で登山届を出すとさらに安心)
  • 自分の体力や技術の限界を把握し、それを超えるようなことを行わない
  • 装備やファーストエイド(応急セット)をしっかり揃える

これらの準備を完璧におこなって初めて、単独で山に入る資格が与えられると思います。

頼れるのは自分だけ


さらに、コロナ禍の中で、テント泊でも予約が必要になったり、テント場自体も営業していなかったりするエリアもあります。

なので、例年とはちょっと違った楽しみ方として、山の稜線や山中でテントを張るのではなく、麓のキャンプ場にテント泊をし、荷物を置いて登山に行くベースキャンプ型をオススメしたいと思います。

小川山の廻り目平キャンプ場でのテント泊

 

*****

いかがでしたか?

好日山荘登山学校では、テント泊初心者の方に向けた講習会、実技講座などを用意していますので、自信のない方は、好日山荘登山学校の実技講座などで基礎技術を学んでからソロに挑戦するのもよいでしょう。


おとな女子登山部・危急時対応ツアーの様子

好日山荘ホームページでは、山小屋・テント場営業情報を随時更新しています。チェックしてみてください。
⇒好日山荘ホームページ「【ベースキャンプ登山】おすすめフィールド」はこちら

安心して山に行けるようになって、気持ちよく縦走登山ができる日に向けて、今のうちにテント泊の過ごし方を研究してみてくださいね!わからないことがあったら、好日山荘おとな女子登山部のメンバーが、女性登山者のみなさんの相談に乗りますので、ぜひお店でお声がけください。

プロフィール

つじまい(好日山荘おとな女子登山部)

奈良県生まれ。26歳の頃に屋久島を訪れ、登山に目覚める。2018年夏に、焼岳~親不知まで13日間かけテント泊単独縦走を行う。好きな山域は、屋久島、北アルプス、奈良大峰。ジャンル問わずクライミング活動に休日を費やす。2021年現在、好日山荘なんば店勤務。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・奈良山岳自然ガイド協会所属。
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら

好日山荘 なんば店

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチNAMBA」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。

所在地/大阪府大阪市中央区難波千日前12-35 スイングヨシモトビル3F
TEL/ 06-6645-0630
営業時間/ 11:00~21:00
アクセス/ 大阪市営地下鉄御堂筋線・千日前線・四ツ橋線難波駅より徒歩約5分、近鉄・阪神大阪難波駅より徒歩約6分、南海難波駅より徒歩約8分、JR難波駅より徒歩約10分

好日山荘おとな女子登山部 リレー連載

登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。

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