南アルプス・北岳にだけ咲くキタダケソウの見分け方

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梅雨のさなか、南アルプス・北岳の山頂付近にだけ咲く花、キタダケソウ。花の色や大きさ・姿は、ハクサンイチゲに似ているが、見分けるポイントは?

 

「北岳」の名前が付いているキタダケソウは、雪融けすぐの南アルプス・北岳の高山帯だけに生える高山植物だ。日本での近縁種は北海道のヒダカソウとキリギシソウなどがある。
これらはすべて氷河期からの生き残りの絶滅危惧植物だ。キタダケソウの花期は梅雨の最中なので、雨に降られ、雨の中を歩く覚悟がないと、なかなか見ることができない。

梅雨時の南アルプス・北岳の高山帯に咲くキタダケソウ

漢字では「北岳草」。キンポウゲ科。草丈は15cm程度。梅雨時の北岳の山頂付近の草地や岩場だけに生え、まだ花の少ない草地に純白の花を咲かせる。
白い花弁は6~8枚あり、花の直径は2.5cm。花びらの先端はくぼみ、葉には毛がない。北岳山頂付近にしかないこともあり、キタダケソウの花の数は少ないが、咲いている場所にはけっこう生えている。キタダケソウ自生地にはロープが張ってあるので、これを超えないように。また絶対に盗掘はやめよう。

恥ずかしい話をすると・・・、まだ植物写真家になろうと心を決める前の20年以上前のこと、実はキタダケソウとハクサンイチゲを間違えて発表したことがある。

花は両方とも白く、雄しべと雌しべは黄色~緑色で花はよく似ているのだ。特に咲き始めのハクサンイチゲは地面から立ち上がらず、キタダケソウとよく似ている。

しかし、もう間違えない。見分けるポイントを押さえれば問題ないからだ。キタダケソウの花びらの先端はくぼみ、葉には毛がない。
ハクサンイチゲの花びらの先端はとがり、葉には毛が生える。このポイントを押さえておけば、キタダケソウとハクサンイチゲを間違えることはない。

 

キタダケソウ(左)とキタダケソウにそっくりな咲きたてのハクサンイチゲ(右)。キタダケソウの花弁は先端が丸いなど、違いのポイントを知っておこう!

梅雨時の北岳に登ってキタダケソウの清楚な花を見ると、きっと忘れられない出会いがあるだろう。この時期の北岳は、オヤマノエンソウ、チョウノスケソウ、イワウメ、キバナシャクナゲなどたくさんの高山植物の花が咲いている。
きちんとした雨具、防水のきいた登山靴、これさえあれば、梅雨時の北岳は最高の花の山歩きになるだろう。

 

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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