下山時は危険の少ない場所でも集中力を高めて油断のない行動を 島崎三歩の「山岳通信」第197号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2020年8月20日に配信された第197号では、遭難が起きている場所が、比較的危険性の少ない場所で起きた転倒・滑落事故が多いことを指摘、集中力を高めて油断のない行動を促している。

 

8月20日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第197号では、期間中に起きた20件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月11日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した62歳の男性が、槍沢を横尾へ向けて下山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月11日、北アルプス蝶ヶ岳で、家族2人で入山した58歳の男性が、槍見台付近を下山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は松本警察署山岳遭難救助隊員により救助された。

  • 8月11日、飯田市南信濃の梶谷川で、渓流釣りのために単独で梶谷川に出かけた70歳の男性が、何らかの原因により行動不能となり、死亡が確認された。

  • 8月12日、北アルプス大天井岳で、単独で入山した26歳の男性が、テント泊中に体調を崩して行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月12日、北アルプス後立山連峰白馬岳で、仲間と3人で入山した73歳の男性が、白馬岳大雪渓を下山中に疲労で行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐隊パトロール隊員、大町警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス山岳遭難防止対策協会白馬班救助隊員により救助された。

  • 8月12日、八ヶ岳連峰横岳で、単独で入山した67歳の男性が、硫黄岳から日ノ岳付近を縦走中に道に迷い、行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員により救助された。

  • 8月13日、八ヶ岳連峰の桜平夏沢峠登山道で、トレイルランニングのために単独で入山した48歳の男性が、下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員、諏訪広域消防本部救助隊が、登山口まで下山した男性と合流して救助した。

  • 8月13日、北アルプス奥穂高岳で、ツアー登山で入山した70歳の男性が、ザイテングラートを下山中に滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は松本警察署山岳遭難救助隊、長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐パトロール隊により救助された。

  • 8月14日、南佐久郡川上村小川山付近の廻り目平で、仲間と3人でロッククライミングのために入山した50歳の男性が、クライミング中にバランスを崩して転落し、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

小川山・廻り目平の遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月18日付

  • 8月14日、上田市の太郎山で、家族と2人で入山した69歳の女性が、裏参道を下山中に転倒し、負傷する山岳遭難が発生。女性は消防隊員により救助された。

  • 8月14日、北安曇郡小谷村の雨飾山で、家族と2人で入山した62歳の男性が、山頂から笹平付近を下山中に滑落・負傷し、行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月15日、北アルプス蝶ヶ岳で、3人パーティで入山した42歳の男性が、常念岳から蝶ヶ岳へ縦走中に転倒して滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月15日、下伊那郡阿智村の松沢山で、家族と2人で入山した44歳の男性が、登山中に家族とはぐれて道に迷い、行方不明となる山岳遭難が発生。飯田警察署山岳遭難救助隊員及び阿智村消防団員が捜索したところ、自力で下山してきた男性を発見し、無事を確認した。

  • 8月15日、中央アルプス将棊頭山で、単独で入山した48歳の男性が、将棊頭山から桂小場に下山中にバランスを崩して滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月15日、南アルプス林道北沢峠付近で、2人で入山した38歳および41歳の男性が、甲斐駒ヶ岳から北沢峠付近を下山中に道に迷い、装備不足により行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性2人は16日に伊那警察署山岳高原パトロール隊により救助された。

  • 8月16日、飯田市上村の北又沢上流で、渓流釣りのために入山した39歳、46歳、56歳の3人の男性が、下山中に疲労で行動ができなくなる山岳遭難が発生。飯田警察署山岳遭難救助隊員及び飯田市職員が捜索したところ、無人の小屋に休んでいた3名を発見し、無事を確認した。

  • 8月16日、南アルプス鋸岳で、単独で入山した33歳の男性が山頂付近を下山中に滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

南アルプス鋸岳での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月18日付

  • 8月16日、北アルプス後立山連峰唐松岳で、仲間と4人で入山した48歳の女性が、扇雪渓付近を下山中に転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は大町警察署山岳遭難救助隊員及び機動隊員により救助された。

  • 8月16日、北アルプス後立山連峰唐松岳で、単独で入山していた40歳の男性が、扇雪渓付近を下山中に、上記と同じ場所で転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は大町警察署山岳遭難救助隊員及び機動隊員により救助された。

  • 8月16日、北アルプス北穂高岳で、仲間と2人で入山した75歳の男性が、北穂高岳南稜を登山中に疲労及び体調不良により行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月3週は、20件の山岳遭難の発生があり、うち12件は、転倒・滑落によるものです。

遭難の多くは、疲労がたまりやすい下山中に発生しています。転倒・滑落の多くが、ハシゴや鎖が設置されている「危険箇所」よりも、比較的危険性の少ない登山道上で発生しています。これは視覚的に危険性が明らかな場所では、自然と緊張感が増して、慎重な行動を心掛ける一方、一見すると危険性が見えない登山道では、つい油断をしてしまったり、この季節は厳しい暑さによる脱水や疲労により、注意力が散漫になってしまったりすることなどが挙げられます。

木の根や岩のつまずき、浮石でのバランス崩し、濡れた岩場や木道でのスリップなど、わずかな不注意や気の緩みが、大きな怪我を負う事故につながることもあります。山頂はあくまでも通過点で、ゴールではありません。下山中も気持ちを引き締め、漫然と行動することがないよう、自身の体力にゆとりを持った計画をお願いします。

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「長野県内入山注意報」と、「登山者への5つのお願い」を発表しています。厳しい暑さはしばらく続く見込みですので、登山者の皆さんは、十分にレベルを落とした山域を選び、感染防止対策にご協力をお願いします。

 

長野県内入山注意報発表中

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「入山注意報」を発表しています。 6月以降、これまでの登山シーズンとの大きな違いは――

  • ①山岳における救助活動は、必要に応じて感染防止対策を講じた上で出動するため、通常より救助に向かう時間を要する。
  • ②多くの山小屋が例年より営業開始時期を遅らせているため、相談・休憩・避難・環境維持としての機能が低下する。

となっています。

また、以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

「登山者への5つのお願い」は以下の動画もご参照下さい。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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