バリエーションコースへは、技術・体力・経験の着実なステップアップの後に入山を 島崎三歩の「山岳通信」第198号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2020年8月28日に配信された第198号では、北アルプス槍ヶ岳・北鎌尾根で起きた遭難事故について言及。技術、体力、経験の着実なステップアップの後に入山することを促している。

 

8月28日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第197号では、期間中に起きた6件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月17日、小県郡長和町の殿城山で、家族2人で入山した70歳の男性と67歳の女性が、殿城山を下山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。2人は上田警察署員により救助された。

  • 8月18日、木曽郡木曽町の大棚入山で、単独で入山した35歳の男性が、大棚入山から野上川を下山中に発病し、体調不良により行動ができなくなる山岳遭難が発生。翌19日に、男性は木曽警察署員及び機動隊員により発見され、岐阜県警ヘリで救助された。

  • 8月19日、八ヶ岳連峰三ッ岳で、仲間と2人で入山した73歳の女性が、三ッ岳から雨池山へ縦走中に雨池山付近で転倒して負傷する山岳遭難が発生。女性は静岡県防災ヘリで救助された。

  • 8月20日、浅間連峰車坂山で、単独で入山した67歳の男性が、車坂峠から黒斑山へ向けて登山中、疲労により行動ができなくなる山岳遭難が発生。小諸警察署山岳高原パトロール隊員、佐久広域消防本部員及び浅間連峰地区山岳遭難防止対策救助隊員が連携して男性を救助した。

  • 8月21日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した72歳の男性が槍ヶ岳山頂付近・北鎌尾根を登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。男性は翌21日に県警ヘリで救助された。

長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月24日付
 
  • 8月21日、北アルプス常念岳で、単独で入山した56歳の男性が常念岳山頂付近を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月4週は、6件の山岳遭難の発生がありました。21日に発生した槍ヶ岳北鎌尾根における単独遭難は、初めてのルートであったことから、行動に時間がかかって日没になり、更に天候の悪化によって、足を滑らせて滑落してしまったものです。北鎌尾根は、バリエーションコースとして人気がありますが、近年は技術・体力不足の登山者による遭難が後を絶ちません。

北鎌尾根は、アプローチを含め標高差も大きい長大なルートです。また、複雑な岩稜帯を進むため、一旦、尾根を登り始めたら途中で引き返したり、脱出することは非常に困難です。技術、体力、経験が揃っていることはもちろん、それに加えて、気象条件が揃っていなければ大変危険です。

高みや困難を目指すことは登山の醍醐味の一つですが、着実なステップアップを心がけて下さい。

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「長野県内入山注意報」と、「登山者への5つのお願い」を発表しています。登山者の皆さんは、十分にレベルを落とした山域を選び、感染防止対策にご協力をお願いします。

 

長野県内入山注意報発表中

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「入山注意報」を発表しています。 6月以降、これまでの登山シーズンとの大きな違いは――

  • ①山岳における救助活動は、必要に応じて感染防止対策を講じた上で出動するため、通常より救助に向かう時間を要する。
  • ②多くの山小屋が例年より営業開始時期を遅らせているため、相談・休憩・避難・環境維持としての機能が低下する。

となっています。

また、以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

「登山者への5つのお願い」は以下の動画もご参照下さい。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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