登山前は体調管理に努め、移動時間や睡眠不足を考慮した計画を 島崎三歩の「山岳通信」第199号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2020年9月4日に配信された第199号では、体調不良が原因で遭難事故となるケースが多いことについて言及。長距離移動による睡眠不足などを避けてゆとりのある計画を推奨している。

 

9月4日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第199号では、期間中に起きた5件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月26日、八ヶ岳連峰の編笠山で、単独で入山した66歳の男性が編笠山山頂から下山中に道に迷い、行方不明となる山岳遭難が発生。男性は翌27日に茅野警察署山岳遭難救助隊員と諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員により救助された。

  • 8月27日、北アルプス後立山連峰の白岳で、仲間と3人で入山した59歳の女性が白岳山頂付近を登山中に転倒して負傷し、歩行が困難となる山岳遭難が発生。女性は翌28日に県警ヘリで救助された。

  • 8月29日、御嶽山で、単独で入山した60歳の男性が御嶽山山頂(剣ヶ峰)付近を登山中、疲労による体調不良のため行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は木曽地区山岳遭難防止対策協会隊員により救助された。

  • 8月29日、八ヶ岳連峰の編笠山で、仲間と2人で入山した44歳の女性が編笠山山頂から不動清水へ下山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。女性は無事、救助された。

  • 8月30日、北アルプス槍穂高連峰の岳沢で、家族と2人で入山した17歳の男性が、奥穂高岳からは別々に行動し、単独で岳沢付近を登山中に転倒、負傷。一時、行方不明となる山岳遭難が発生。男性は翌31日に北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員により発見され、県警ヘリで救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月5週は、5件の山岳遭難の発生がありました。

これから秋山シーズンを迎え、登山をする上では気候的にも適したシーズンとなり、遠方から山深い北アルプスを訪れる方も多いと思いますが、例年、登山前日に、自宅から登山口までの長距離移動のため、十分な睡眠や食事をとらない方が見受けられます。その結果、登山中に疲労や体調不良で行動不能になったり、不慣れな登山道で疲労により、バランスを失い転倒・滑落して遭難になることも少なくありません。

また、車両やロープウェイ等を利用して、標高の高い登山口から入山する場合は、標高が身体に与える影響も十分に考慮しなければなりません。これらのことを含め、登山前は体調管理に努め、自宅からの移動時間等も考慮し、自身やメンバーの体力・経験に見合った、ゆとりのある日程を計画し、安全に登山を楽しみましょう
なお、テント場や山中で熊に遭遇し、食料やゴミを荒らされたり、襲われて負傷する事案が発生しています。自らが野生動物の生息域に入山していることを認識しましょう。

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「長野県内入山注意報」と、「登山者への5つのお願い」を発表しています。登山者の皆さんは、十分にレベルを落とした山域を選び、感染防止対策にご協力をお願いします。

 

夏山期間中の山岳遭難発生状況

(1)発生状況
令和元年に引き続き100件を下回る(H27年108件、H28年107件、H29年101件、H30年117件、R元年99件)
7月の遭難件数が前年比で大幅に減少。R元年32件⇒7件(前年比-25件)

(2)年齢別
40歳以上の中高年の遭難が約8割(44人 84.6%)。60歳以上の高年齢層の遭難は4割弱(20人 38.5% 昨年比-18.1P)

(3)態様別
転倒、滑落・転落が約5割(24件 51.1%)。病気、疲労が3割弱(13件 27.7% 昨年+10.5P)

(4)山域別
北アルプスの遭難が約5割(23件 48.9% 昨年-27.9P)。八ヶ岳、その他山域(里山)の遭難が約4割(19件 40.4% 昨年+26.2%)

(5)居住地別
県内6人 県外46人(県外者88.5% 昨年-4.9P)

 

長野県内入山注意報発表中

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「入山注意報」を発表しています。 6月以降、これまでの登山シーズンとの大きな違いは――

  • ①山岳における救助活動は、必要に応じて感染防止対策を講じた上で出動するため、通常より救助に向かう時間を要する。
  • ②多くの山小屋が例年より営業開始時期を遅らせているため、相談・休憩・避難・環境維持としての機能が低下する。

となっています。

また、以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

「登山者への5つのお願い」は以下の動画もご参照下さい。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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