女性に多い膝が内側に入る癖「ニーイン」、3つのトレーニング法で膝痛を解消しよう

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「ニーイン」という、膝が内に入る歩行癖は女性に多い歩行癖だ。歩行時には膝への負担が大きいので、できれば登山では解消しておきたいもの。今回は、普段の生活の中でも簡単にできる解消法を3つ紹介する。

 

質問:膝が内に入りにくくなるトレーニングは?

階段が続く下りで膝のお皿が痛くなります。下りはサポートタイツと膝サポーターを併用しています。幼少期から膝が内に入る歩行癖があるのですが、膝が内に入りにくくなるトレーニングはありますか?

(48歳・女性・登山歴1年未満)

 

回答:柔軟、内股・ガニ股、お尻の筋力の3つに注目

膝が内側に入る癖(ニーイン)は女性に多く、女性登山者の膝痛要因の中で、恐らく過半数を占めていると思います。歩行時にニーインになる女性が多いのは、股関節を開かない座り方が子どもの頃から習慣づいていることが原因です。

日常生活の歩行時にはそれほど気になることはなくても、登山で大きな一歩を踏み出したり、大きな段差を登り下りしようとしたりすると、脚を大きく動かすために、その分だけ膝が内側に入ってしまうことがあります。

しゃがんだ際にニーインする脚の動き(正面から)


このようなニーインする動きで最も問題になってくるのは、膝関節を真っすぐ曲げ伸ばし出来ずに、捻じる動きが加わってしまうために、関節に大きな負担がかかってしまうことです。

高齢女性に変形性膝関節症になる方が多くなるのは、このようなニーインによる不自然な関節の動きが大きく影響しています。したがって、女性登山者でニーイン癖がある方は、少しでも早くその癖を治しておくことで、将来に渡って長く登山を楽しむことが出来ると言えます。

では、このニーインを起こさない歩き方をするためには、どのようなトレーニングをすればいいでしょうか? 
今回は対策としてのトレーニング法を3つ、紹介したいと思います。

 

①股関節を左右に開く柔軟性を向上させる

このようなニーイン癖がある方は、肩幅に足を広げて立った時に股関節が内に閉じる傾向があります。膝のお皿がやや内側を向いている一方で、逆に股関節を左右に広げる柔軟性が不足しています。

そこで、力士が四股を踏むように、毎日股関節を左右に広げるストレッチを行いましょう。

背骨が曲がらないように姿勢を起こしたまま股関節を左右に開く

 

②内股・ガニ股の癖を解消する

もし、日頃から歩行時に内股や外股(ガニ股)になる癖がある場合はそれを解消しましょう。

内股の癖があると、どうしてもそれに釣られて膝が内側に入る動きをしやすくなってしまいます。また、外股(ガニ股)の癖があると、膝が少しでも内側に入る動きをしただけで、大きく膝関節が捻じれることになります。つま先も膝も常に進行方向に真っすぐ向いて動かすことが重要です。

日常生活での歩き姿勢、立ち姿勢を見直して、日常から内外に偏りのない歩き方を身に付けるようにしましょう。

 

③お尻(殿筋群)の筋力を鍛える

歩行時にニーインする動きを抑制する上で重要な役割を占めるのがお尻の筋肉(殿筋群)になりますので、この部分の筋力トレーニングを行いましょう。

膝が内に入るということは、その分お尻が外側にブレる歩き方になっているのです。もう少し、分かりやすく解説すると、歩く一歩ごとに体幹部である腰やお尻が外側にブレていると、そのぶん膝が内側に入りやすくなる、一方ブレずに安定していると、膝が真っすぐ正面に動くようになるのです。

そこで足を前に踏み出した時にお尻の筋肉が使えるようにする必要がありますが、日常動作の中ではあまりお尻の筋肉を使う機会がありません。そこで以下の要領で、お尻の筋力トレーニングを行ってみてください。

まず壁に左ひざと左手を付けて、右手で右側のお尻に触れ、お尻の筋肉に力が入る状態を確認する


普段お尻の筋肉を使う機会が少ないため、どうすれば力が入るのかが分からないので、まずは静止した状態で左右交互に両方のお尻の筋肉に力が入る状態を確認してください。


写真と同じように片手を壁につけ、膝を壁に着けず腰の高さ程度に上げた状態で、軽く腿上げする動作を行います。

この際に腿を上に大きく引き上げようとするのではなく、あくまでお尻の筋肉に力を入れることで腿が上がるようにします。

これを短時間でもいいので定期的にトレーニングをするとお尻に力が入るようになっていきます。

まずはお尻の筋肉に力が入る感覚を掴めるようになり、その上で、例えば駅の階段などでコッソリお尻に手を当てて登り、お尻の筋肉に力が入っているかどうかを確認しながら登ってみてください。最終的には登山の際(特に大きな段差を登るときなど)にお尻の筋肉を使って登れるようになることを目標にしましょう。

これに加えて、以前の記事でご紹介した2軸歩行で歩くことを忘れないようにしましょう。

また、より安定した下山歩行が出来るためには、やはり以前紹介したスプリットスクワットを、膝が内に入らないように注意しながら毎日行うこともオススメします。

最後に膝が内側に入る癖が簡単に治りそうもない場合は、スポーツ診療を行っている整形外科に診てもらうこともオススメします。専門医や理学療法士の方などに、ご自身にあったストレッチやトレーニングを教えてもらうことで、癖を解消する近道になるはずです。

ニーインのように、脚の内外で偏ってしまう歩行癖と、その対処法については7月に発売しました、「膝を痛めない、疲れない Q&Aでわかる山の快適歩行術」の中でも解説しています。こちらも是非参考にしてみて頂ければと思います。

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プロフィール

野中径隆(のなか みちたか)

Nature Guide LIS代表。大学3年の夏に「登山の授業」で山の魅力に取りつかれ、以来、登山ガイドの道へ進む。「初心者の方が安心して登山できる」環境づくりを目標に積極的にWeb上で情報を発信するほか、テレビ出演、雑誌、ラジオなど各種メディアでも活躍中。
日本山岳ガイド協会・認定登山ガイド、かながわ山岳ガイド協会所属。
⇒ Nature Guide LISホームページ

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