尾瀬・燧ヶ岳、9月下旬~10月初旬、登山道中に点在する湿原や見下ろす尾瀬ヶ原は草紅葉に染まる

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東北地方の最高峰で、尾瀬のシンボル的な山でもある燧ヶ岳。9月下旬から10月初旬、登山道中に点在する湿原は草紅葉で色づき、見下ろす尾瀬ヶ原は秋錦の絨毯のように輝く。尾瀬の秋を堪能できる燧ヶ岳を縦走する山旅を紹介する。

 

尾瀬沼の北にそびえる燧ヶ岳は、柴安嵓と俎嵓の2つの頂上を持つ、尾瀬を代表する名峰です。人気の登山シーズンはニッコウキスゲが咲く夏ですが、空気が澄んで展望がよく、紅葉も始まる秋も楽しめます。

登山道は4方向につけられていますが、登りやすいのは北側の御池登山口です。広沢田代と熊沢田代の、2つの湿原を横切る、私の好きなコースとなります。さらに尾瀬沼を見下ろしながら歩く、長英新道を下山路とするプランを紹介します。

御池コースの六合目付近から見下ろした、2つの池塘が並ぶ熊沢田代。奥の山は会津駒ヶ岳


御池登山口から燧ヶ岳を目指す場合、本来は御池ロッジに宿泊して日の出と同時に歩き出すのが理想ですが、今年(2020年)の御池ロッジは営業自粛中。そのため、できるだけ早い時刻に御池に到着できる方法を考える必要があります。

10月10日までの週末ならば、東武鉄道の「尾瀬夜行」を利用すれば早朝5時50分に到着できますし、檜枝岐村の民宿に泊まって朝一のバスで移動すると07:00に到着します。ただし、出発が7時過ぎでは行程がタイトなので、尾瀬沼付近でもう1泊するなど、余裕のあるプランニングにしたほうが確実でしょう。

またマイカー利用の場合は御池駐車場に車を停めて、尾瀬沼へ下山後は沼山峠に向かえば、そこからシャトルバスで御池に戻ることができます。

なお、今シーズンの尾瀬は休業している施設も多く、体調不良時の登山自粛などを呼びかけているので、注意が必要です。なお、尾瀬への入山については、尾瀬保護財団のホームページの情報が便利です。

御池新道で燧ヶ岳に登り、長英新道で下山して一ノ瀬へ

行程:御池バス停・・・熊沢田代・・・俎嵓・・・柴安嵓・・・俎嵓・・・ミノブチ岳・・・尾瀬ビジターセンター・・・三平峠・・・一ノ瀬(約8時間30分)

⇒コースタイム付き登山地図を確認

 

9月下旬、尾瀬の湿原は草紅葉が輝く

朝、御池に到着した後は「山の駅 御池」で準備を整えて、正面の広い駐車場へ。一番奥が御池登山口で、森の中へと木道が続いています。すぐ先の裏燧林道分岐を左に進み、2合目付近の滑りやすい石の道を登って傾斜が緩むと、周囲が開けて広沢田代へ出ます。朝の光を受ける池塘のきらめきが美しい、心が和む湿原です。

池塘が点在する広沢田代


広沢田代を過ぎると周囲は再び森に変わり、4合目と5合目の急登区間を越えて熊沢田代へ。ここは山々の展望が良く、右手には思いのほか間近に平ヶ岳や越後の山々が望めます。

山頂方面の手前に広がる熊沢田代(左)と、熊沢田代から北西側に見える山々(右)。左から平ガ岳、中ノ岳、越後駒ヶ岳、荒沢岳


その先、階段状の木道を登って再び樹林帯に入ると、7合目の先で沢状のガレ場、8合目の先で土の斜面のトラバースと歩きにくい箇所が続きます。

9合目を過ぎる頃には右手に柴安嵓が大きく見えるようになり、さらに登って尾瀬沼が目に入ると俎嵓の頂上です。そこから最高地点となる柴安嵓までは、往復約40分です。

俎嵓から見た、燧ヶ岳の最高峰の柴安嵓


鞍部から急斜面を登るとたどり着く頂上は、360度の眺望が広がります。中でも目をひくのは、広大な尾瀬ヶ原をはさんで対峙する至仏山。また空気の澄んだ日は、南側遠くに富士山も見えるはず。ぜひ探してみましょう。

柴安嵓頂上から見た至仏山。その手前には尾瀬ヶ原が広がる


俎嵓から引き返したら長英新道へ。岩場混じりの急な区間を下り、8合目を過ぎると明るく開けたミノブチ岳に到着です。ここも眼下に尾瀬沼を見下ろす絶景スポットです。

ミノブチ岳から見下ろした尾瀬沼。背後の中央にそびえるのは奥白根山、左の台形の山は男体山


ミノブチ岳からは左の階段を下り、樹林帯に続く道へ。合目の標識はあるものの、下に行くほど間隔が広まります。特に1合目を過ぎてからが長く、時間もかかるので要注意です。

尾瀬沼湖畔に出たら左へ進み、大江湿原を横切って尾瀬沼ビジターセンター方面へ。さらに湖畔を歩いて尾瀬沼山荘前から三平峠に向かい、一ノ瀬まで下れば登山終了です。

ここからは、低公害車両による乗合タクシーに乗って大清水へ向かい、そこからバスで沼田駅に向かうのですが、バスの便が限られます。下山時刻によってはタクシーを利用し、バスの便が多い戸倉へ移動することも考えておくと良いでしょう。

 

プロフィール

木元康晴

1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。

 ⇒ホームページ

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