冬こそ美味しい! 楽しい! 「山ごはん」を始めよう! 基本の道具や山ごはんのコツを紹介します

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好日山荘おとな女子登山部によるリレー連載。今月のテーマは、山ごはん。初冬の低山ハイキングは、山ごはんにもピッタリ。おとな女子登山部あややさんに、山ごはんのコツを教えてもらいました。

 

みなさんこんにちは。好日山荘おとな女子登山部のあややです。

11月に入り、ぐっと気温が下がって来ましたね。今年は全国的に紅葉が遅いので、低山ではまさにこれから彩り豊かな山の風景に出会えるのではないでしょうか。反面、登山をする季節としては、風も冷たく、山中でゆっくり休憩するのが辛い時期でもあります。

私もソロの場合はあまり休憩を取らず、サクサクっと歩いて下山してしまうことが多いのです。でも、こたつで食べるアイスクリームが美味しいように、少し寒空の下、温かい山ごはんを食べるのは、いつもより美味しく感じるんですよ!

ということで、今回は初冬にこそ始めたい、山ごはんに関して、私なりにご紹介していきたいと思います。

※ここでいう山ごはんは、シャリバテを起こさないようにこまめに食べる行動食ではなく、ゆっくり時間を取って楽しんで調理する山ごはん、というイメージです。

 

山ごはん初心者の「2大ロマン」とは?

お客様からよく聞く、山ごはんの2大ロマンが、「山でカップラーメンが食べたい」と「山で美味しいコーヒーが飲みたい」です(笑)。

カップラーメンはお湯さえあれば食べられるので、お湯を持って行く場合におすすめしたいのがサーモスの「山専ボトル」です。6時間経過しても80度をキープする(※900mlの場合)という優れもの。山ごはんのアイテムとして手始めに用意してみるのはいかがでしょうか。

そしてコーヒー。

登山用品店で、軽量コンパクトなコーヒーミルやバネットなど、コーヒーアイテムが充実していることからも、たくさんの登山者の方が、山でのコーヒータイムを楽しまれていると想像できます。疲れた身体にホッとひと息、温かい飲み物を飲むとリラックスできますよね。

実は私、コーヒーが飲めないので、これに関しては熱く語ることはできませんが、紅茶や、お湯に溶かしてすぐに飲めるスープ系は必ず持参しています。

カフェインを含んだものはどうしてもお手洗いが近くなってしまうので、山へ持って行く飲み物は極力ノンカフェインにすることを心掛けています。

よく購入する無印良品の商品。
様々な種類を気分に合わせて持って行きます

 

山ごはんを始めるには? バーナーとコッヘルを揃えよう!

山ごはんをしたいけれど、道具を揃えること、装備が重たくなることがハードルになる場合があります。

日数、人数、行程にもよりますが、日帰り装備の平均重量5~6kgに、山ごはんの道具や食材として、プラス1~2kgが加わってきます。ですので、山ごはんを始める時は、いつも行く山よりも少し難易度を下げたり、あまり標高差のない山を選んだりすることで、余裕を持って楽しめると思います。

山ごはんに必要な基本の道具は、バーナー本体、ガスカートリッジ、そしてコッヘル(鍋)です。

特に、お客様が迷っているのが、登山用のバーナー選びでしょう。

バーナーとひと口に言ってもたくさんの種類がありますが、大きくは「一体型」と「分離型」に分かれます。初めて購入するという場合は、断然「一体型」をおすすめします。バーナー本体とガスカートリッジをくっつけて使うタイプです。軽量、コンパクトでモデル数も多いです。

ゴトクの数は、できれば4本あると安定してコッヘルをのせることができます。地面からコッヘルまでの高さが出る分、やや安定性にかけるので、調理する場合は必ずコッヘルから目を離さないように使用しましょう。

私も愛用している「一体型」のSOTO「ウインドマスター」


これは私の失敗談ですが、振り向きざまにヒジがコッヘルに当たり、ごはんを地面に落としてしまったこともありました。長期山行の時なら、笑えない惨事(食べられなくなると喧嘩勃発!?)ですので、十分注意しましょう。

コッヘルに関しても、形・材質が様々です。まずはアルミでできた深型タイプが使いやすいでしょう。

比較しながらじっくり選びたい場合は店頭スタッフに相談してみよう

 

山ごはんは、小物でもっと便利に!

基本の3点セットが揃ったら、ナイフ、カトラリー類、テーブルなど、山ごはん小物もチェックしてみてください。

私がよく使うのが、ナイフとシリコンスプーンです。

以前は、十徳ナイフのナイフを使っていた時期もあったのですが、使用頻度が高いのでナイフ単体の方が良いと思い、現在は折り畳みのナイフを使用しています。小さい方が収納しやすいのですが、あまり持ち手が小さいと食材が切りにくいので、持ち手が10cm程度あるのが、使い勝手が良いです。

「RUBYTEC CERAM(セラム)」のセラミック製ナイフ。
重量わずか21g、お値段も1,000円程度と手頃


シリコンスプーンは、炒める、すくう、煮る、混ぜるなど、ほぼどんな料理にも使えるので一番良く使っているカトラリーです。カレーなどのドロッとしたスープ系の食事をした際、しっかりと拭うことができるので、後片付けがとっても楽になるのもお気に入りポイントです。

その他にも、SOTOのポケトーチはライターに装着することで、強い炎が出せるアイテムで、炙り料理にもぴったり。このように、様々な小物を使って、スムースな調理を楽しんでいます。

 

山ごはんに適した食材は?

山ごはんの食材は①軽い②嵩張らない③腐りにくい④調理しやすいの4つのポイントを意識して選ぶとよいでしょう。

ひとつずつ見て行きましょう。

①“軽い”の代表はフリーズドライ食品、アルファ米、インスタント食品等です。

好日山荘の店頭にも様々な種類が並んでいます。私がよく使うものは、アルファ米です。思い起こせば、学生時代、海外旅行に行った際、日本食が恋しくなった時は、尾西の五目御飯や梅ごはんなどホテルで食べたこともありました。味もとても美味しいんですよ。

自宅にストックしているアルファ米やフリーズドライ食品


ただ、いきなり食べたこともないものを山ごはんにしてしまうと、口に合わなかったり、量が多かったりするので、気になったものは予めお家で食べてみるのがおすすめです。お気に入りを見つけてストックしておけば、いつでも山ごはんに持って行くことができますし、家庭での災害用備蓄食料にもなり、一石二鳥です。

 

次に②“嵩張らない“と言えば、例えば、パスタ。

私はよく、パスタを半分に折ってジップロックに入れたり、サラスパのような短いパスタを準備したりします。コッヘルの中に入れてコンパクトに収納できると、なお良しです。

現地で30分~1時間ほど水に浸けてから調理すれば、茹で時間も短縮でき、かつモチモチの生パスタのような触感を味わうことができます。

木曽駒ヶ岳~空木岳縦走の際に作ったエビとキノコのパスタ。
簡単で美味しい♪


③“腐りにくい”は、イコール、水分の少ないもの、ということになります。

よく挙げられるのが以前ご紹介させていただいた、乾燥野菜などです。

自宅で作った乾燥野菜。
お家で残ってしまった野菜があれば、ぜひトライしてみてください!


栄養価も高く、重量も軽いキノコは、使用頻度が高い食材です。あとはまるごと持って行きやすい野菜、オクラやナス、ネギなんかを持って行くことも。夏場は特に食材が腐りやすいので、保冷バック等に凍らせたペットボトルを一緒に入れ、しっかりと保冷して持ち運びするようにすると良いでしょう。

保冷バックは食材の持ち運びに便利


最後に④“調理しやすい”というのは、いかに現地で素早く調理できるかということです。

例えば、具材を予め細かく切っておけば早く火が通り、ガスの節約にも繋がります。また、食材に下味をつけておくと、あとは現地で加熱するだけ、などなど。少し複雑な料理でも簡単に作れ、片づけも楽になり、時短になります。

登山は長時間の歩行、重たい荷物による負荷、様々な外的要因等で、想像以上に体力を要するスポーツです。少し難しい話をすると、山ごはんとは、単に楽しい、美味しいだけではなく、必要なエネルギーを補給する行為でもあります。

慣れてきたら、更に、積極的に摂取したい糖質、脂質、タンパク質などの栄養素も考えたいものです。

ただ、そうは言っても、結局は自分が食べて美味しいと思うもの、元気の出るものを食べるのが一番です。たくさんの荷物を背負わなければならない縦走時は、軽いフリーズドライ食品は欠かせませんが、フリーズドライばかりでは飽きてしまいますよね。

自分の体力も見極めつつ、自分のテンションがあがる山ごはんを作るのが大切だと思います!!

 

最初は簡単なレシピから。コンビニを味方にしよう!

山岳会にでも入っていない限りは、大人数のごはんを一気に作って・・・なんてことはなく、せいぜい友達や家族分を作ることが多いかと思います。山ごはんのハードルとして、道具を揃えること、装備が重たくなること以外にも、準備が面倒、ということがあります。

そんな時に味方になってくれるのがコンビニです。

何てったって、ちょうど良い量がすぐに手に入ります。カット野菜なんかもそのまま使えるので便利ですし、彩りに欲しいゆで卵1個も、割れないように包装されていて、至れり尽くせりです。コンビニのおにぎりにお雑炊の素をかけて食べるだけでも十分美味しいのです。
もちろん、準備も楽しいと思える方は、スーパーで色々と探検するのも楽しいんですけどね。

私は山ごはんを作るのは好きですが、お料理が上手かと言えばそうでもなく・・・。特に人の分を調理する時は失敗しないかとても不安になるタイプで、目分量が苦手で適当に作れません。

山ごはんを始めたばかりの頃、見栄を張って、作ったこともないレシピを山で作って、大失敗した経験があります(しかも縦走初日だったので、その食べられないほどまずい食べ物を背負って歩かなければなりませんでした。トホホ)。

そんな時は積極的に「●●の素」を使います。色々な調味料を少量ずつ準備するのはたいへんな手間なので、これだけで味が決まる、というものを使えば、余計な心配をする必要もありません(笑)。

よく使う調味料。個包装を見つけるとついつい買ってしまいます

 

山ごはんで注意したいこと

楽しい美味しい山ごはんですが、特に注意すべきことを2点だけ。

1つ目は、せっかく用意したバーナーも、低温下では点火装置がうまく作動せず、火が使えないなんてこともあります。火は他のもので代用できませんので、特にこれからの寒くなる時期は、必ずライターやマッチを一緒に持って行くようにしましょう。

2つ目は、基本的なことですがゴミは持ち帰ること。最初にもお話しした通り、山でカップラーメンを食べたいという方はとても多いです。反面、スープなど食べきれずその場に捨ててしまうという方も、見かけます。山では平地のように分解されず、生態系に悪影響を及ぼします。残った場合は、お雑炊にしてアレンジしたり、どうしても食べきれないのであれば、密封容器などに入れて持ち帰ったり、工夫しましょう。

少しの人のルーズな行為が、たくさんの人に迷惑をかける場合があります。山への感謝を忘れずに、気持ちよくルールを守りたいですね。

 

デザートを用意して、サプライズに

先日、友人が大好きだというメロンソーダをサプライズで用意したところ、とても喜んでくれました。登山だけでも楽しいのですが、山ごはんを通してさらに充実した山時間を過ごせたことがとても嬉しかったです。

キンキンに冷やしたメロンソーダの上にパウチ型のアイスをトッピング


ぜひみなさんも、次に行く山の想像をして、冬も思いっきり登山&山ごはんを楽しみましょう。

 

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プロフィール

あやや(好日山荘おとな女子登山部)

兵庫県生まれ。山ガールブームの波に乗り、好日山荘への転職をきっかけに山にはまる。岩場や鎖場などスリリングな場所が好きだが、最近はのんびり登山も楽しんでいる。2020年は3回も東北に遠征するなど大の東北好き。どちらかと言うと山ごはんより山スイーツを作るのが得意。
現在、好日山荘・広報室に所属。女性目線で様々な企画の立案や情報発信を行っている。
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好日山荘 センタープラザ神戸本店

ハイキングから本格登山までさまざまな登山スタイルに対応するアイテムを取り揃える登山用品店。

所在地/兵庫県神戸市中央区三ノ宮町1丁目9-1
TEL/ 078-335-8166
営業時間/時短営業中につき好日山荘のWebサイトを参照
アクセス/JR、阪急・阪神・地下鉄・ポートライナー「三ノ宮」駅より徒歩約5分
http://www.kojitusanso.jp/shop/kinki/kobe/

好日山荘おとな女子登山部 リレー連載

登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。

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