左右バランスを崩す原因は下半身のズレ、フォーム修正して安定した歩行を目指しましょう

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腰が引けて重心が後ろになってしまうと、効率よく歩けないことを、これまで説明したきたが、重心は「前後」だけではなく「左右」も大切だ。今回は、左右の重心のズレのついて解説し、その修正方法についてお伝えする。

 

こんにちは。登山ガイドの野中です。先月の記事では股関節の柔軟性の向上について解説しました。股関節を伸展させる柔軟性が低いと、歩行時に腰が引けた歩き姿勢になりがちとなり、歩行時の重心移動が非効率な形になってしまうことを説明しました。

★前号記事:ストレッチで股関節の柔軟性を高めれば、登りも下りも楽になる

歩行時は常に腰の前後位置(身体重心の前後のズレ)に注意し、おへそから身体が前に出るように歩くことを心がけましょう。

腰の位置が後ろの状態(写真左)と、腰の位置が前(股関節が伸展)の状態


今回は身体重心の左右のズレについて解説していきたいと思います。登山では段差が大きくなったり、歩きにくい道になればなるほど、身体が左右にバランスを崩しやすい状態になります。こうした場面でも、左右にバランスを崩さずに安定した歩行が出来ることで疲労が軽減されるようになります。

 

左右のバランス保持に注意したい2軸歩行と〇と○のズレ

左右への安定性を高めるためにまず重要になってくるのは、2軸歩行です。2軸歩行については以前の記事で解説していますので、未読の方は以下のリンク先の記事をご確認ください。

★過去記事:左右にバランスを崩さず歩くために必要な2軸歩行

 

1.2軸歩行

2軸歩行は、いたってシンプルな歩き方で、誰でもすぐに実践できるように思えます。しかし、人によっては固有の歩き癖が原因となって2軸歩行が上手くできない場合もあります。

2軸歩行にならず、1軸歩行になりがちな方の特徴と、修正点について解説したのが以下の記事になりますので、こちらも参考にしながら確認してください。

★過去記事:ふだんの立ち方や歩き方を修正すれば、下山時の膝の痛みの悩みを解消できるかも!

 

2.膝のズレ

次に注意したいのが脚を動かす際の膝のズレです。以前に説明した記事では、女性に多く見られる「膝が内側にズレる(ニーイン)」について解説しましたが、膝が外側にズレる人も見受けられます。

膝が内に入る場合は、中殿筋などのお尻の筋肉がうまく使えず、お尻が外にブレる歩き方をしているケースが多いです。この動きの修正についても、以前の記事でも解説しているのでご参照ください。

★過去記事:女性に多い膝が内側に入る癖「ニーイン」、3つのトレーニング法で膝痛を解消

 

このように膝がズレて動く癖がある場合は、膝をネじるため膝痛が起こりやすくなります。そのため、スクワットなどの筋力トレーニングやジョギングなどの運動をしていても、膝をズラす動きを反復してしまうことになり、単純に筋力を鍛えても問題が解決しません。

筋トレでやジョキング中は、膝が内にズレる人は膝を小指側に動かすように意識し(反対に膝が外にズレる方は膝を親指側に動かすように意識し)ながら、ゆっくりと集中して体を動かす習慣をつけましょう。

 

3.足角のズレ

「足角」と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、足を設置した時の爪先の向き(角度)のことを指します。通常は、進行歩行(正面)に対して外に10度前後開いた状態が正常です。0度以下であれば内股、20度以上であれば外股(ガニ股)だと捉えてください。

外股(ガニ股)歩行の登山者は多い


つま先の向きに偏りがある状態の場合、5本の足指に全てに均等に力が入らず偏りが生まれることになり、左右への安定性が悪くなりがちです。

また、安定性にそれほど問題がない場合であっても、爪先の向きがズレているだけで、脚の内側・外側で使う筋肉に偏りが生まれやすく、部分的に負荷が集中するので筋肉痛が起こりやすくなります。

さらに、足首が捻じれることで関節のトラブルが起こりやすく、これは足関節(足首)だけでなく、膝や股関節にも影響してきます。

そのため、出来る限り足角を10度前後に保つことが重要となってくるのです。これら膝のズレ、足角のズレは2軸歩行がしにくい原因にもなります。このズレが両方あると、高確率で関節痛が起きやすいので注意が必要です。

 

ズレを修正する足首ワイパー

膝のズレ、足角のズレの原因の一つには、大腿骨が内旋・外旋する癖があることが上げられます。また、下肢の筋肉で内側と外側の筋肉で筋力差があったり、柔軟性に差があったりする場合も考えられます。それらを解消するダイナミックストレッチ、「足首ワイパー」があります。

以下の動画を参照に、この運動を毎日、就寝前などベッドの上に横になった状態で行うことをオススメします。

 

 

歩行フォーム修正のための3ステップ

これまで登山ガイドとして指導してきて、バランスを崩しやすい不安定な歩き方をしている方ほど、上記のズレなど癖のある歩き方をしているケースが多い傾向にあります。つまり、これまでの連載で解説してきた理想的な歩き方・効率的な歩行フォームとは異なっている部分があるわけです。

しかし、癖のある方が上手く歩けるようになるためには、文章や動画で歩き方の知識を得たとしても、それですぐに課題が解決するわけではありません。実際に自分自身の歩き方のどこがどう違っているのかが分かりにくく、また違いが分かっても、どこをどう修正すればいいのかを理解するのは簡単なことではありません。

そのためには、以下のようなステップでご自身の歩き方を理解する必要があると考えられます。


これまで私が解説してきた内容は主に1の部分です。拙著『山の快適歩行術』では、ご自身の癖に気づけるようセルフチェックの項目を設けましたが、どうしても一般的な情報を得るだけでは、一人一人個別の課題となってくる2と3の部分を理解するのはハードルが高いのです。

逆に捉えれば、2と3の理解が早いと問題解決もしやすいと言えます。自分自身を理解するためにも整形外科や整体・整骨院などスポーツ診療を行っている専門家や、歩行指導を行っているガイドに相談することをオススメします。

私が主催している講習会も、是非機会がありましたら、ご参加いただければと思います。

お知らせ

11月末、「登山歩行術」をテーマにYoutubeに3本の動画を公開しました。これまで記事で書いてきた内容を総合的にまとめた内容で、動画での解説の方がより理解が深まると思いますので、是非こちらもご覧になってみてください。

プロフィール

野中径隆(のなか みちたか)

Nature Guide LIS代表。大学3年の夏に「登山の授業」で山の魅力に取りつかれ、以来、登山ガイドの道へ進む。「初心者の方が安心して登山できる」環境づくりを目標に積極的にWeb上で情報を発信するほか、テレビ出演、雑誌、ラジオなど各種メディアでも活躍中。
日本山岳ガイド協会・認定登山ガイド、かながわ山岳ガイド協会所属。
⇒ Nature Guide LISホームページ

理論がわかれば山の歩き方が変わる!

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