喧騒を避けて春を満喫、草戸山からかたくりの里へ。サクラとカタクリの共演を楽しむハイキング
春が一層深まり、里山では春の花が多く咲く始めこの時期に、展望と春の野草をのんびりと楽しむコースはいかがだろうか。喧騒の高尾山から、静かな草戸山を登り、城山湖、そして神奈川の花の名所100選「城山かたくりの里」へ。思う存分に春の風景を楽しめるはずだ。
各地で桜の開花が始まって、いよいよ春真っ盛り。山の花を訪ねるハイキングを計画する人も増えてきているはずです。とはいえ、晴れた休日のアクセスの良い人気の山は、かなりの混雑になるることが少なくありません。密集を避けることが求められる現状では、そのような山へ出向くことに、抵抗感を持つ方もあると思います。
そんなときにお勧めしたい穴場の山が、東京と神奈川の境にある草戸山です。東京都町田市の最高峰ながらも標高は364mと低く、お土産物屋も食堂もありませんが、訪れる人は少なくて静かな山歩きが楽しめます。
もちろん花も楽しめる山で、途中で通過する城山湖周辺は桜が咲いて見事です。さらに下山場所には「城山かたくりの里」があり、一面に咲くカタクリの花も楽しめます。雑木林の区間では野の花も咲いていますし、頂上からは展望も楽しめます。
モデルコース:高尾山口から草戸山、城山かたくりの里へ
工程:
高尾山口・・・四辻・・・草戸山・・・城山湖(本沢ダム)・・・金刀比羅宮・・・龍籠山展望台・・・評議原・・・城山かたくりの里・・・城山総合事務所入口バス停(約3時間20分)
賑やかな高尾山を背に草戸山、そして「かたくりの里」へ
草戸山登山の起点となるのは、大人気の高尾山の登山口でもある京王線の高尾山口駅。高尾山に向かう大勢のハイカーを横目に、正面の国道20号に出て南へ進み、橋本屋というそば屋の裏手に回り込んだところが登山口。
出だしは狭い裏道ですが、すぐ先の四辻という小さな峠で稜線へ。そこからは程よいアップダウンを繰り返しつつ、明るい樹林の中の尾根道を歩きます。
ベンチの並んだ草戸峠を過ぎて、木の根が目立つ坂を登り詰めたところが、山之神が祭られた草戸山の頂上です。ここは城山湖散策路の松見平休憩所にもなっていて、展望台が設置されています。その上に立てば、都心の高層ビル群が望めます。
頂上からは東側の階段を下り、はなさき休憩所へ。ここからは城山湖沿いの道を進みます。
右に湖面を見ながら本沢ダムの上端を渡り、いったん城山湖を離れてゲートを抜けた先が金刀比羅宮。その境内の右手が龍籠山の登り口で、階段を登るとすぐに展望台です。ここでは周囲に咲く桜が見渡せます。
さらに登ると頂上手前で、花の添えられた小さな祠が目に入ります。これは「航空神社」との名前がある、パワースポット好きの人には人気の神社なのだそうです。反対側が城山湖を見下ろす広場で、休憩にも最適です。
広場から下って車道を左へ進み、金刀比羅宮の前に戻ったら正面の階段を下り、古い参道へ。この道はキブシなど、春の花が咲く林の中の歩きやすい小道で、ベンチのある評議原を過ぎると、かながわの森林50選に選ばれたヒノキ林を通過します。
小松城跡の案内板がある分岐を右へ下り、宝泉寺というお寺の前で車道へ。これを400mほど進めば、右手に現れるのが「城山かたくりの里」です。草戸山から下山する時刻であれば、さほど混雑はしていないのでぜひ立ち寄っていきましょう。
園内には一面にカタクリの花が咲く箇所があるほか、ショウジョウバカマやヒカゲツツジなど、山の花もたくさん咲いています。お花好きの人だけでなく、これから植物のことを学びたいという人にも、充実した時間が過ごせるでしょう。
ところで例年であれば、春はこの「城山かたくりの里」からJR横浜線の橋本駅へ向かうバスが出ているのですが、今年(2021年)は運行しないとのこと。そのため、もっとも近い城山総合事務所入口バス停まで、住宅地の中を歩くことになります。
ただし住宅地に標識はありませんし、地図で見ても解りにくいもの。このようなときは、スマートフォンでGoogleマップのアプリを開いてバス停名を入力すると、ナビゲーションをしてくれるので確実です。
もし登山用のGPSアプリの使い方に習熟しているのであれば、城山かたくりの里東側の小道を抜けるコースもお勧めです(上のモデルコースにはこちらを示しています)。
城山総合事務所入口バス停からJR横浜線橋本駅行きのバスは、1時間に4~5本程度。急ぐ必要はないので、のんびり歩いていきましょう。
なお、城山かたくりの里の開園期間は4月18日(日)まで。また開園時間は、午前9時から日没まで。入園料は500円です。
プロフィール
木元康晴
1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。
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