早くも咲き出したアカヤシオ。春の奥多摩・最初の一歩は、高水三山で!

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山岳ガイド山田哲哉さんから、奥多摩の最新情報が届きました。早くもアカヤシオが咲き始めたという、シーズンはじめの一歩に最適な高水三山を紹介します。

奥多摩・高水三山で早くもアカヤシオが開花


「高水三山・岩茸石山(いわたけいしやま)のアカヤシオが、来週あたり、見頃になりそう」と奥多摩ビジターセンターの田端伊織さんから電話をもらったのが3月20日。「いくらなんでも早すぎませんか?」と懐疑的だったのですが…。

アカヤシオとは、4月中旬から5月上旬にかけて、新緑前にピンクの花が一斉に咲く、「春を告げる花」。例えば、奥秩父の北端・両神山では、5月初旬、山頂付近をピンクに染めることで知られています。

高水三山を訪れたのは3月31日。月末とはいえ、暦は3月。「いくらなんでも…」と思いながら、北側の展望に恵まれた、明るい岩茸石山(793m)の山頂に立ち、教えられた山頂の西斜面を覗き込みました。

咲き誇るトウゴクミツバツツジ

咲き誇るトウゴクミツバツツジ

最初に目に入ったのはピンクがかった紫色のトウゴクミツバツツジ。そして、その先に見えたのは、見間違うはずのない柔らかいピンクのアカヤシオが2株、満開と言ってよい見事さで、誰も気が付かないような斜面をヒッソリと飾っていました。想像を超えて早く見られたアカヤシオに、小さくガッツポーズしました。

予想外に咲いていたアカヤシオに小さくガッツポーズ

予想外に咲いていたアカヤシオに小さくガッツポーズ

高水三山は奥多摩の入口の山です。雲取山から東京都と埼玉県を分けながら東へと延々と伸びる県境尾根が棒ノ折山まで続き、更に南へと伸び、青梅の市街地へと落ち込んでいく、その最後にある3つのピークからなる山です。

山頂に常福院という古刹のある高水山、最高峰で優れた展望を持つ岩茸石山、山頂に青渭神社と言う大きな神社が、建ち杉の木立に囲まれた惣岳山と。ひとつひとつは小さな山頂でありながら、それぞれに全く違う個性を持っています。

高水山山頂下にある常福院

また、軍畑(いくさばた)駅と御嶽(みたけ)駅のどちらからも取り付け、バスの時刻を気にすることなく駅から登り、駅へと降りることができ、歩行時間もゆっくりと歩いても4時間ほど。春が来たので山に行こう…と思い立った登山者が、シーズン初めに歩くのに適している山です。

今回は長閑な軍畑駅から平溝川と言う穏やかな流れに沿って歩き出しました。榎峠の分岐までは青梅市成木や飯能方面へとトラックも走り抜ける舗装路ですが、脇道に入り、高源寺という大きなお寺を過ぎる頃からは静かな道になります。一度に春が来たようにサクラ、ツツジ、ヤマブキが登山道の両側を飾ります。

釣り堀で舗装路は登山道に変わり、杉木立の中を登り、青梅丘陵方面からの登山道を合わせると前方に大きなお寺が現れ、常福院の境内へと入ります。お寺の裏側には点々とカタクリが咲いています。

ひと登りで高水山へ。青梅方面が春霞の中に見えます。ここから岩茸石山までが、この三山で一番楽しい場所。谷を隔てて、奥武蔵の「子の権現」や竹寺、日和田山方面が見られます。明るい広葉樹の中を歩き、岩混じりの急峻な斜面を登ると岩茸石山です。山頂からは、川苔山、御前山、大岳山が霞んで見えました。

岩茸石山の山頂付近にひっそり咲いているアカヤシオ

岩茸石山の山頂付近にひっそり咲いているアカヤシオ

本当は雲取山や大菩薩も見えるはずなのですが、晴れているのに見えませんでした。惣岳山への道は途中から数年前から東斜面の大規模な伐採で木々が伐られ、荒涼としていますが、振り返れば辿ってきた稜線が見事に見られます。

ここもまた、急な岩場を攀じ登り、惣岳山のヒンヤリと冷たい空気が漂う、展望も無い静かな山頂に立ちます。下りは延々と、御岳山のケーブルを正面に見る、杉、檜の道を歩けば、御嶽駅へと降り着きます。

最高峰でも800mもない、低山と言ってよい高水三山ですが、例年ですと、4月上旬まで北側斜面には雪が凍り付いていることも少なくありません。今年は、暖冬だった昨年と同様に、特別暖かいのかもしれません。

アカヤシオからトウゴクミツバツツジ、足元にはミヤマカタバミや各種のスミレ。奥多摩に春が来たことを全身で感じる高水三山、登山シーズン最初の山におすすめの一山です。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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