GWの北アルプスなら燕岳が目指しやすい! 雪山初級者にも取り組める、明るく展望の良い頂へ――
登山道はまだ雪に覆われていて完全な雪山登山となるゴールデンウィークの北アルプス。雪山の経験が少ない人には、まだまだ近寄り難いかもしれないが、山小屋が営業を始める場所では登山しやすい環境が整い、多くの人が入山するのでトレースもしっかりしていて安心感も高い。中でも燕岳は、最も目指しやすい場所の1つとなる。
4月も末になると、北アルプスの主要な山小屋は次々と小屋開けします。冬の間は近づき難かった山々も、山小屋を利用できることで目指しやすくなります。
5月いっぱいくらいの残雪シーズンに人気の山は、涸沢周辺や室堂周辺、あとはゴンドラが使える唐松岳や五竜岳など数多いですが、私がよく足を向けるのは、燕岳。雪山初級者にも取り組みやすい、明るくて展望の良い山です。
モデルコース:中房温泉から燕岳を往復
行程:
1日目/中房・燕岳登山口・・・第2ベンチ・・・合戦小屋・・・燕山荘<宿泊>
2日目/燕山荘・・・燕岳・・・燕山荘・・・合戦小屋・・・第2ベンチ・・・中房・燕岳登山口
雪山初心者も安心、GWの燕岳登山
燕岳の登山口となる中房温泉へは、公共交通機関利用の場合はJR大糸線の穂高駅からバスで約50分。マイカーで行くことも可能です。
中房温泉の敷地手前の、立派なトイレがある登山口から歩き始めると、すぐに急登が始まります。頑張って登るうちに次第に傾斜が緩み、少し下ると第一ベンチへ。右に標識がある水場は、穴の中から豊富に水が湧き出す泉です。ぜひ味わっていきましょう。
その先も、樹林の中の登りが続きます。おおよそ30分ごとに第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチと休憩ポイントが現れるので、休んでいきましょう。
また年によって違いはありますが、おおむね第一ベンチの先から、登山道は雪に覆われるはず。しばらくはキックステップで登っていけると思いますが、バランスをとりにくいと感じたら、その時点でアイゼンを装着して慎重に登りましょう。
やがて樹林が途切れると、合戦小屋に到着。夏はスイカが大人気の小屋です。さすがにこの時期はスイカはありませんが、いろいろな飲み物を販売しているので、しっかり水分補給していきましょう。
そこからまばらになった樹林の中を登り、合戦沢ノ頭が近づくと左手に、鋭い槍ヶ岳が姿を現します。思わず声が上がるところです。
森林限界を抜け出た合戦沢ノ頭でひと休みした後は、大きな雪の尾根をたどっていきます。すると、真正面の高い所に見えてくる建物が、宿泊先となる燕山荘。その右手に延びる鋸歯状の尾根の、もっとも大きなピークが目指す燕岳です。
なお、合戦小屋から燕山荘の間は、視界が悪いと進路に不安を感じるところ。そのような場合の目印として、赤布をつけた竹竿が設置されているので、見落とさないように進みましょう。
残雪期の燕山荘は、夏道とは違って左から回り込んで玄関前へ向かいます。燕岳頂上は翌日にして、チェックイン後はゆっくり体を休めましょう。
翌朝は日の出前に起き出して、まずは小屋の後ろに回り込んだところにある展望デッキへ。そこでは雄大な日の出を正面に迎えつつ、朝日を受ける槍ヶ岳も見渡せます。
朝食後は、燕山荘に荷物を預け軽快な出で立ちで燕岳山頂を目指しましょう。歩き始めると、すぐに人気のビュースポット・イルカ岩が出現。
周囲の景色を楽しみつつ進み、メガネ岩を過ぎるといよいよ最後の岩場混じりの急斜面。そこを慎重に登ると、360度の視界が広がる頂上です。
振り返ると槍穂高連峰、その右には裏銀座の山々、さらに立山や剣岳、針ノ木岳や鹿島槍ヶ岳など、北アルプス北部の山々の姿も望めます。
十分に景色を堪能したら、往路を引き返して燕山荘へ。荷物を回収したら、合戦尾根を引き返します。ところで合戦尾根の下部は、樹林の中なので気づきにくいのですが、ヤセ尾根の区間も少なくありません。不意の転倒が、登山道からの転落になり得るので、より慎重な足運びが必要です。
中房温泉登山口へ下山後は、中房温泉、または10分ほど下ったところにある、有明荘で入浴しつつ、充実した登山を振り返るのがオススメです。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、2021年度の燕山荘は宿泊料金を改正。定員は半分以下に減らして、予約制での宿泊受付となっています。以下のウェブサイトで詳細を確認の上、混雑する日を避けたプランニングで目指すのがベターでしょう。宿泊時に記入が必要となる、「COVID-19チェックシート(PDF)」もこちらからダウンロードできます。
※2021年のゴールデンウィークは、日程によってはすでに満室になっています。宿泊を予定する方(テント泊含)は、必ず予約をお願いします。
▼燕山荘ウェブサイト
https://www.enzanso.co.jp/enzanso
プロフィール
木元康晴
1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。
今がいい山、棚からひとつかみ
山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。