山と人を繋げる多彩なイベントを主催。「グラウンドワーク大山蒜山」|日本山岳遺産の横顔 vol.05

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豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行われている。第5回は、鳥取県の大山・蒜山エリアで、自然景観の保全や自然体験会の開催などに取り組むグラウンドワーク大山蒜山を紹介する。

写真=グラウンドワーク大山蒜山、取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年5月号掲載記事

写真=グラウンドワーク大山蒜山
取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年5月号掲載記事

 

グラウンドワーク大山蒜山

グラウンドワーク大山蒜山 〈 2017年度認定 〉

Area:大山・蒜山周辺
Recent activity:ハイキングコースの整備
Group profile:
2008年に発足。市民や企業、行政が協力するイギリス発の環境保全運動「グラウンドワークトラスト」を参考に活動。メンバーは登山ガイドや農家ら36人。2018年に日本山岳遺産基金を活用し、環境マップを作成した。
http://gw-daisen-hiruzen.com/


鳥取県西部に位置する中国地方最高峰・大山(1729m)と、鳥取岡山の県境にまたがる蒜山(1202m)周辺が、「グラウンドワーク大山蒜山」のメインフィールド。「日本の美しい自然と風景の保全再生」をテーマに活動する。

「昔から人と山や森の距離が近いエリア。素朴で温もりがある自然が多く残っています」と魅力を語る代表の徳永巧さん。一方で、「集落の人々の高齢化などで耕作放棄地が増え、里山が荒廃しつつあります」と危機感も明かす。

その課題を解決すべく、遊休林野の再生に取り組んでいる。近年、注力しているのが大山南西麓の丘陵地帯、通称「ナメクジ山」のハイキングコースの整備。大山の絶景スポットがあるほか、生息するカスミサンショウウオやギフチョウ、ブナ原生林、大山火山溶岩の天然記念物「はまなんご」など、見どころが多い点に着目した。

ササを伐って道を開くグラウンドワーク大山蒜山メンバー

ササを伐って道を開くメンバー


約5年がかりでササや灌木を伐るなど登山道を開き、景観地に広場を設けた。2017年からコースを活用したハイキングツアーや自然体験会を開催し、大勢の地元小学生や保護者が参加。イノシシ肉のジビエバーベキュー体験といった食に関するイベントが特に人気だ。

そのほか山岳信仰の古道「大山道」を歩く森林学習会、蒜山の希少野生生物の観察会、企業と連携した環境学習プログラムなど、年に100回以上の多彩なイベントを主催しているという。

グラウンドワーク大山蒜山のイベント

ジビエのバーベキューを行うキャンプ企画は参加者に好評だ


「知ってもらい、人が関わることで保全につながると考えています。また、地域の自然を楽しんでもらえるのも純粋にうれしいです」

もともと環境調査の仕事をしていた徳永さんは以前から、〝知られざる名所〞が国内に多いと感じ、発信したいと考えていた。

「日本各地に遊んでいる土地がたくさんありますが、少しきれいにすれば、ものすごく魅力的になる〝宝のエリア〞。ナメクジ山の事例を紹介しつつ、里山の整備を他の地域にも広めていきたいです」

★日本山岳遺産認定地 詳細:伯耆大山 [ 鳥取県 ]グラウンドワーク大山蒜山 (2017年)

日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費。
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費。

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年4月号の特集は「全国 花と新緑の名低山」。木々や草花が芽吹き、山肌が華やかに彩られる季節となりました。うららかな春の日差しを浴びながら、花と新緑の低山をのんびり歩いてみませんか? 全国のガイド著者が厳選した春の名低山を紹介します。第2特集は、雪山登山、雪山ハイキング、山スキーの厳選コースを集めた「残雪の山」です。

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日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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