気圧の谷や低気圧が通過して大荒れとなった連休。天候を確認して慎重な行動を! 島崎三歩の「山岳通信」 第222号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2021年5月11日に配信された第222号では、連休期間中に断続的に気圧の谷や低気圧が通過したために、気象遭難が多発したことを指摘。最新の天気予報を確認のうえ、慎重な判断をすることを呼びかけている。

 

5月11日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第222号では、期間中に起きた14件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 4月30日、北アルプス常念岳で、単独で入山した45歳の男性が常念岳山頂付近で悪天候による視界不良のために道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 4月30日、北アルプス白馬岳で、単独で入山した29歳の男性が登山中に疲労及び悪天候により行動不能となる山岳遭難が発生。大町署警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月1日、八ヶ岳連峰赤岳で、2人パーティで入山した55歳の男性が、山頂付近で疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。翌2日に茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員及び県警ヘリが出動し救助したものの、死亡が確認さた。

  • 5月2日、北アルプス涸沢で、単独で入山した40歳の男性がテント泊で滞在中に体調不良で行動不能となる山岳遭難が発生。翌2日に長野県警察山岳遭難救助隊員及び北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月3日、北アルプス槍ヶ岳で、3人パーティで入山した49歳の男性が槍ヶ岳に向けて登山中に何らかの原因により滑落。通報した残り2名の男性(37歳、28歳)も、救助要請後に付近の山小屋に向かうも悪天候により行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して遭難者1人男性(49歳)を発見して収容しましたが死亡を確認。また、同行者男性2人は4日県警ヘリが救助したものの、いずれも死亡が確認された。

  • 5月3日、北アルプス蝶ヶ岳で、3人パーティで入山した72歳の男性が下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。長野県警察山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月3日、北アルプス白馬乗鞍岳で、単独で入山した46歳の男性が白馬乗鞍岳方面に入山したまま行方不明となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊などが出動して捜索中に、男性が自力下山して無事を確認した。

  • 5月3日、北安曇郡松川村の山林内で、山菜採りのために単独で入山した77歳の男性が、行方不明となる山岳遭難が発生。警察、消防団等が捜索をしたところ、翌4日に北安曇郡松川村の山林内で倒れている男性を発見、死亡が確認された。

  • 5月4日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、4人パーティで入山した69歳の男性が東尾根を登山中に滑落して負傷し行動不能となる山岳遭難が発生。消防ヘリが出動して男性を救助した。

  • 5月4日、松本市安曇の乗鞍高原で、山菜採りのために3人で入山したうち63歳の男性が、疲労により行動不能となる遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月4日、八ヶ岳連峰赤岳で、2人で入山したうち47歳の女性が地蔵尾根を下山中に滑落して負傷。同行する男性も装備不足により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して2人を救助した。

八ヶ岳連峰赤岳の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月6日付

  • 5月5日、中央アルプス宝剣岳で、5月3日に単独で千畳敷から宝剣岳方面に登山に向かったまま以後行方不明になっていた70歳の男性を、県警ヘリなどが出動して捜索。6日に宝剣岳西側斜面で男性の遺体を発見した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

4月30日から連休5月5日にかけて、県内では死者6名を含む14件の遭難が発生しました。期間中は断続的に気圧の谷や低気圧が通過し、標高の高い山域では、暴風雪となる日もありました。そのような条件下で行動をしたことにより、行動不能となるケースが多発しました。
春山は気象条件により、登山の難易度や危険性が大きく左右されます。週末にかけて県内のアルプス等の高山に登山を予定されている方は、最新の天気予報を確認の上、慎重な判断をしてください。また、各山域とも連休以降まとまった降雪が観測されていることから、雪渓や沢筋のコースを登山する際は雪崩に対して十分警戒をしてください。

5月6日から9日までの間に、山岳遭難の発生はありませんでした。山は季節ごとに美しい表情を見せる一方、時として、非常に厳しい一面を見せます。厳しい山の表情(自然環境・天候)に、登山者が打ち勝つことは、とても困難なことです。入山前には、しっかりとした準備や下調べを行い、自身や仲間の技量に見合った、無理のない登山をしましょう。また、天候や体調が悪い場合には、無事に帰るために、登山の中止や引き返す勇気を持つことが大切です。

今週も梅雨前線の影響により、周期的に天候が変化します。県内のアルプス等の高山に登山を予定されている方は、最新の天気予報を確認の上、慎重な判断をしてください。

 

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(4月28日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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