子どもと一緒に登山を楽しむ方法は、「登山をしないこと」だった! 納得の理由とは?

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はじめての親子登山に疑問はつきもの。子どもの野外体験や野外教育を手がけるアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんが、子どもと山に登る楽しみや成功のヒントを紹介します。

 

山登りは面倒くさくて辛い修行のようなもの

子どもや孫と一緒に登山を楽しみたいと思っている登山好きの方はたくさんいると思います。子どもを登山に誘ったときに、登山自体が好き、身体を動かすことが好き、といった子どもだったらきっと二つ返事で一緒に来てくれるけれど、残念ながらそういう子どもばかりではありません。

大人「今度の週末山登りに行こう!」

子ども「え〜やだ〜」

どちらかといえばこのパターンの方が多いのが現実…。この返答、はっきりいって大人の心にはグサッとささる辛い返答です。どうしてそんな返答が来るのか? 答えは簡単です。登山をしない人からすれば、登山は決して楽しいものではないからです。

登山のイメージを色々な子どもから聞けば、きっとこんな答えが返ってくると思います。

  • 面倒くさい
  • 疲れる
  • 登るのがつらい
  • もう行きたくない(一度行った経験から)
  • ○○○をしている方が楽しい
  • 虫が嫌いで会いたくない
などなど…

登山好きからすれば、頑張った先にあるポジティブなイメージが先に出てきますが、基本的にはネガティブなことが先に出てきて、脳はもう「登山をしたくない理由」に占拠されてしまうのが普通なのです。これは自分に興味がないジャンルや得意ではないジャンルに誘われた時の事を考えればすぐに理解しやすいと思います。

子どもの楽しみは山登りではなく「遊び」。おもしろい場所を見つけてたくさん遊んだら帰ってくるのもオススメ

 

登山者思考をやめて登山を考えてみる

「子どもと一緒に山を登りたい!」という大人の思いも大切だし、ぜひ実現して楽しい大人と子どもの山ライフを送ってもらいたいと僕は思っています。では、どうすればいいのか?

答えは簡単です。“登山をしなければいい”のです。

ではいったい“登山をしないで登山をする”という、相反する言葉の並びをどう理解したらいいのか? それはそもそもの目的や考え方を変えてしまえばいいのです。

登山好きは、当然のことながら“山の頂上に立つ”ことが目的の方が多いのでそのための行動をします。この目的を達成させるためには、時間の使い方や行動のしかたを登頂のために考えなくてはなりません。子どもからすれば、これこそ“つまらない”の極みなわけです。

「日本一美味しい?」ソフトクリームとうどんを食べるためにお山へ。 歩いたのは数キロだけど、これも立派な登山。

 

ちょっと子どもがその目的から外れて自分が好きな事を登山中に始めようものなら「頂上に間に合わないぞ!行くぞ!」と子どもを怒っているシーンを登山道で見ることもあります…。怒こらないまでも、イライラした経験がある子連れ登山者は多いと思います。

そんな大人にも、子どもにもいい思い出が残らない登山にならないためにも、子どもとの登山を計画するときは“登山者思考”を一度心の中にしまって次のような考え方をしてみてはいかがでしょうか?

お花を摘みに行くために山へ。…結局登山口手前の雑木林で花を摘んで帰ってきて終了。これもまた登山。※許可をもらって摘んでいます

 

山を登るのが目的ではなければ登山は楽しい遊びになる

先にも述べたとおり、興味が無い人からすれば登山はそもそも苦行です。子どもファーストで目的を立てれば、きっと子どもの心も少し「一緒に行ってもいいかも」に変わってきてくれるはずです。

いくつか思考の方向性を挙げてみますので参考にしてみてください。

  • ロープウェーで頂上まで行った後、下山だけ歩く
  • 登りがほとんどない所だけを歩く
  • ピクニックをしに行く
  • 自然遊び/自然体験/自然観察をしに行く
  • 美味しい○○○のお店の△△△を食べに行く
  • ○○○ごっこをしに行く
  • 川遊びをする場所まで歩く
  • 虫や花を探しに行く
  • キャンプをしに行く
  • 夜に野生動物を見つけに行く
などなど…

目的は子どもファーストで、そのための行動方法が“登山的”という思考にすれば、子どもからするとネガティブなイメージは最初に出てこないと思います。

イメージでいうと、「登山後の生ビールは最高!」ではなく、「生ビールのために登山をする!」でもなく、「生ビールを飲んだ後少し自然の中をお散歩する」が近いイメージです。

頂上付近まではケーブルカーでワープ。 のんびり下山は子どもにとって楽しいお散歩気分に

 

もちろん、最終ゴールは一緒に頑張っていつかは○○○山の頂へ!でいいと思います(僕もその思いがあるひとりです!)。でも、導入からしばらくは自分が好きな登山は自分で楽しみ、子どもとの登山は、これらのように一緒に楽しんでみるのがオススメです。

 

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プロフィール

長谷部雅一

アウトドア・プロデューサー。アウトドア系プロジェクトの企画・コーディネート・運営のほか、幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行なう。『アウトドアファブリック大全』(グラフィック社)、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』(東洋館出版社)、『ネイチャーエデュケーション』(みくに出版)など著書多数。
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はじめての親子登山のヒント

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