軽いだけじゃない! パッカブルタイプでもミステリーランチらしい質実剛健なバックパック|高橋庄太郎の山MONO語りVol.88
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、ミステリーランチのパッカブルタイプのバックパック「インアンドアウト22」です。
文・写真=高橋庄太郎
夏山シーズンを前に、今年はどの山に登ろうか考えている方も多いのではないだろうか?すでに新しい山道具を買い求め、早く使ってみたいと心が騒いでいるかもしれない。
さて、長距離縦走の際のサブパックや、山歩きを組み合わせた旅行など、さまざまなシチュエーションで活躍するのが、“小さく収納して持ち運べる”パッカブルタイプのバックパックだ。大半は大きくてもせいぜい容量30Lほどで、もちろん普通の小型パックとしても使うことができるものである。
今回ピックアップするのは、ミステリーランチの「インアンドアウト22」。アメリカ発祥の“質実剛健”という言葉が似あうブランドだけに、一般的には華奢なものが多いパッカブルタイプといえども、かなりタフな使用に耐えうる作りになっているのが特徴だ。
まずは機能をチェック!
何もモノを入れていない状態が、以下の写真である。
背面パッドは省かれ、フレームのようなものも入れられていないので、つぶすと非常に薄くなる。正面のグレーの部分はメッシュポケットで、この部分が本体を収納する部分でもある。
そんなわけで早速、収納した状態をお見せしよう。下の2枚の写真は、同じものを表側と裏側から撮影したものだ。
右の写真を見ると、先ほど説明したグレーのポケットに本体が収められている状態がイメージできるだろう。収納サイズは約18×24㎝。厚みは計測しにくいのだが、だいたい3~4㎝くらい。少し丸めると、500mlのペットボトルよりも少し大きいくらいで、大型バックパックに入れて持ち運ぶのが便利なサイズ感だ。
再びバックパックの状態に戻し、他の部分もチェックしていく。まずは先ほどバックパック本体を収納していたフロントポケットだ。
使用されているメッシュは目が細かく、非常に丈夫な素材で、伸縮性も抑えている。だから、歩いているときに周囲の枝や岩に引っかかりにくく、よほどのことがなければ破れそうにもない。
そのメッシュポケットの上にはもうひとつのポケットが設けられている。
内側はメッシュ素材。荷物を入れてから本体を圧縮したときに空気が抜けやすくなっている。こちらは入れたものがすぐ取り出せるように浅く作られ、財布やカギなどを入れるのに便利だ。しかし、それらをつなぎ留めるフックなどがついていないのは少し残念である。
だが、深さを変えたポケットが正面に2つあることで、収納性はなかなかよい。
インアンドアウト22は、リッド(雨蓋)の下に荷物の出し入れ口があるトップローディング式である。
ドローコードで締められ、タブを引くだけで大きく開くという、使い勝手がいい仕様だ。
荷室の内側にはハイドレーション用のポケットが付けられており、容量2Lのリザーバーを収めることができる。
チューブは左肩にあたる部分のスリットから引き出せる。
今回はテストのためにハイドレーションのリザーバーを入れてはみたものの、僕自身はあまりハイドレーションシステムを利用することはない。その代わり、そのようなポケットにはだいたいいつも薄く折りたたんだレインウェアなどを入れている。
このようにすると、背面パッドを省いたバックパックでも背中に柔らかく当たり、背負い心地が向上する。
荷物をたっぷりと入れて背負うと、以下のような感じになる。パッカブルタイプは小さく収納できるようにと、リッドを省略したり、ポケットの数を減らしたりして簡素化しているものが大半だ。そのために見た目がいくぶん貧相なものも多い。
だがインアンドアウト22のルックスは、一般的な小型パックに勝るとも劣らないカッコよさだ。細かなパーツもあまり省略してはいない。
サイドにはコンプレッションストラップが上下2段につけられている。パッカブルタイプはこのようなコンプレッションストラップも省略しているものばかりだが、インアンドアウト22はしっかりと充実させている。
しかしサイドポケットは片側のみだ。
1Lの飲用ボトルがきれいに入るサイズだが、ピッタリすぎるといえなくもない。じつはこの状態だとバックパック本体が内側に押される形になるために荷物が少々収納しにくくなり、ボトル自体も圧迫されて取り出しにくいのである。
実際は1Lよりも少し小さく、細めのボトルのほうが収まりはいい。
コンプレッションストラップはサイドポケットの外側に位置しているので、より細身の500mlペットボトルを入れても落としにくいのがいい。
一方、ポケットが付いていないほうのサイドは、シンプルだ。
ポケットを少なくしたほうが製品としての重量を減らせるのだろうが、個人的にはこちら側にもポケットがあるほうがありがたいと思うが……。
また、両サイドに付けられたループとコンプレッションストラップを連動させると、トレッキングポールなどを簡単に固定できる。
ちなみにここで取り付けたのは、この連載でも以前取り上げたグリップウェルの「ラピッドカーボン」である。
ショルダーハーネスは薄い。パッドも最低限しか付けられていない。
しかし充分な幅は持たせてあり、体に沿うように曲線を描いたデザインである。簡素だが機能的、という印象だ。
ショルダーハーネスにはチェストストラップも付属している。
位置も変えられ、体形に合わせて調整できる。
果たして背負い心地は?
実際に背負ってみると、パッカブルタイプとは思えないほど快調だ。
これはショルダーハーネスがしっかりとしていることもあるが、厚みがある本体の生地とコンプレッションストラップによって荷物が揺れ動かないように押さえ込まれているからである。
ところで、そんなインアンドアウト22が省略したパーツが、ウエストベルトだ。パッカブルタイプでも簡易的なウエストベルトは残している製品が多いのだが、インアンドアウト22には見当たらないのである。
そのために、下り道をスピーディーに進んでいると、バックパックが揺れ動いて歩きにくくなることもあった。
その問題を緩和するために僕がしたのは、ショルダーハーネスをできるだけ締めて背負うこと。バックパックが体に密着すると同時に重心が上がり、いくぶん背負いやすくなる。
だが、ハーネスによる締め付けを強くすると、快適さが失われていくことは否めない。簡素なものでよいので、ウエストベルトはやはり付いていてほしいと思う。
もうひとつ気になったのは、背中が少し蒸れることだ。
裏側に防水コーティング施してある生地ゆえに吸収できる水分はわずかで、長く歩いていると、背中の生地が汗で湿っていく。最終的には、ウェアの背中が濡れてしまうのである。
軽量コンパクト化のために背面パッドを省略し、背中に生地が直接当たる構造なのだから、この点は我慢せざるを得ないだろう。
インアンドアウト22に使われている生地は100デニールのコーデュラナイロンである。耐摩耗性に優れ、引き裂き強度にも優れた素材だ。軽量コンパクトになるように設計されたものが多いパッカブルタイプとしては相当に分厚い生地で、その分だけ少し重くなるのは避けられない。
まとめ:ミステリーランチらしい個性を感じるバックパック
生地以外のパーツを含めた重量は、400g。22Lの小型パックとしては軽いほうともいえる。だが背面パッドやフレームなしの22Lと考えれば、はっきりいってけっこうな重さだ。つまり、インアンドアウト22の立ち位置は、“小型パックとしては軽いが、パッカブルタイプとしては重い”ということになる。言い換えれば、“少し重いけれど、丈夫で機能的でパッカブル”というのが、インアンドアウト22の個性なのである。
もっと軽量なパッカブルタイプを使いたい人には、インアンドアウト22ではないバックパックのほうがいいかもしれない。だが、この製品は質実剛健がイメージのミステリーランチらしい製品で、山では乱暴に扱っても壊れにくい道具を好む僕としては、かなりツボに入るバックパックであった。パッカブルタイプにも強靭さや背負い心地のよさを求める人には、強くお勧めしたい。
プロフィール
高橋庄太郎の山MONO語り
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