北アルプス・双六岳~雲ノ平 雲上の楽園を目指して花と残雪と大展望の稜線を歩く
双六岳から雲ノ平へと、稜線から見る槍ヶ岳の展望や、高山植物の花々を楽しむ山旅へ。
天空の花園が広がる、北アルプス最奥の地、雲ノ平は登山者の憧れの地。最低でも片道2日の行程が必要です。好天が続くことを祈念して新穂高へ。
今回紹介するコースは、新穂高温泉から、双六岳を経て、雲ノ平へ向かう往復コースです。残雪が残る7月は雪渓の通過に注意を。
1日目 新穂高温泉~双六小屋
梅雨明けの好天が続くことを期待して、双六岳・三俣蓮華岳を経て、天空の楽園、雲ノ平をめざしました。初日は予想以上に晴れて、新穂高温泉から左俣林道を快調に歩きだしましたが、想定以上に暑く、小池新道から秩父沢出合までの登りでじわじわと体力を奪われます。
雪渓はステップが出来ており、問題なく歩けました。シシウドヶ原を経由して、ようやく鏡平山荘で一服。「氷」の旗に思わず名物かき氷を注文し、ほてった体を冷やします。
かき氷のおかげか最後の弓削乗越までの急登はしっかり足が延びて、ようやく稜線に出ると、天を衝くような槍ヶ岳の雄姿に疲れも吹き飛びます。さらにハクサンイチゲ、キバナシャクナゲ、チョウノスケソウ、シナノキンバイ、コバイケイソウなどの群落が花盛りです。
やがて槍ヶ岳は雲に隠れてしまいましたが、双六池と双六小屋が雲の合間から姿を見せ、足取りが速まります。黒百合のベンチではひさしぶりにクロユリにも出会いました。1日目は双六小屋で宿泊です。
2日目 双六小屋~三俣蓮華岳~雲ノ平山荘
翌日は、天候は下り坂で、厚い雲が垂れ込める中を三俣蓮華岳へ。三俣山荘から黒部源流を渡る渡渉点に着く頃からしだいに雨模様になってきました。渡渉点のスノーブリッジも一部崩壊していて、雪渓の末端から降り、水流に足を入れて、恐る恐る渡ります。
雪田をいくつか横切り、雲ノ平にさしかかる頃には風雨も強くなりました。撮影する予定の日本庭園もスイス庭園も霧の中に沈み、ガスと雨の中をひたすら我慢の登行となりました。ようやく雲の切れ間から日が差し、雲ノ平山荘が見えてきたときにはほっとする思いでした。
3日目 雲ノ平山荘~双六小屋
前日の夜から猛烈な風と雨です。計画していた鷲羽岳・水晶岳への登頂はあきらめ、ひたすら風雨の中を体力の消耗をふせぐことに注意しながら、往路を戻ることとなりました。
行きはなんとか渡れた黒部源流のスノーブリッジも完全に崩壊して渡れず、雪渓が薄くなって危険な箇所を回避して上流側に迂回して雪渓を渡りました。ガスに視界が効かない中でトレースを見失なわないように注意深く雪田を横断し、まるで滝や沢と化した登山道を粛々と戻ります。三俣山荘で一息つき、冷えた体を温め、再び雨の中を中道を経由して双六小屋へ。増水した沢筋を足首まで水につかっての徒渉も何度かありましたが、双六小屋に無事到着。
4日目 双六小屋~新穂高温泉
翌日も朝から雨が続き、我慢の下山となりましたが、それでも雨に濡れたけなげな花たちの撮影に取り組み、登山道に現れたライチョウの親子連れに心も癒され、それなりに充実した山行になりました。
雨が上がり、青空が見えてきたのは、秩父沢出会いを過ぎた頃でした。帰路の北俣林道でも崖からの落石の跡があり、注意しながら帰りました。
プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
今がいい山、棚からひとつかみ
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