快適なテント生活には内部のレイアウトも重要! テント泊登山の基本テクニック

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テント泊登山の装備や計画、設営などあらゆる基礎知識を網羅した一冊『テント泊登山の基本テクニック』。山岳・アウトドアライター高橋庄太郎さんが長年培ったテントのノウハウが詰まっています。本書から一部抜粋して紹介します。

重要なものこそ いつも「定位置」に

テント生活を快適に行なうには、内部のレイアウトも大切だ。テントを設営したらバックパックから荷物を取り出し、テント内にきちんと配置していく。

下の写真のようにきれいに並べ、いつも同じものを同じ場所に置くように癖をつけると、たとえ夜の暗闇のなかでも手探りするだけで必要なものが取り出せる。これは紛失の防止にもなり、壊れやすいものを体でつぶす恐れも減らせる。

天上付近には細いロープを張り、小型カラビナなどを利用し、内部を立体的に使用すると使い勝手がいい。

 

テント内部のポケットには大事な貴重品や壊れやすいものを入れる。小さな袋をすっぽりと収め、ゴミ箱代わりにしても重宝する。

 

テント内部の天井に取り付けられたループを利用し、ランタンをぶら下げる。こういうときに小型カラビナがあると便利だ。

 

ロープには濡れたタオルなども干せる。悪天候時はほとんど乾かないが、好天時にベンチレーター付近に下げれば乾燥は早い。

 

足元へバックパックを横倒しにして立てかけ、テント内部の壁に発生した結露で寝袋が濡れるのを防止。これは思いのほか有用なテクだ。

 

天上に張ったロープには、小型のフックでヘッドライトを取り付けると便利。角度をうまく調整すれば、ランタン代わりになる。

 

テント泊登山者が覚えておきたい基本テクニック(序文より)

日帰り登山ならば、下山後に腹いっぱいの食事をとることができ、自宅のふかふかな布団で眠れる。小屋泊登山ならば、温かな食事が用意された山小屋でくつろぎ、真っ平らな床の上に横たわれる。

だが、テント泊登山はそれらのスタイルと決定的に異なる。気象条件が厳しい山中で、温かな食事をとり、体を休めるためには、自力で山中にテント、調理器具、着替えなどの「衣食住」すべてを用意しなければならない。そのための体力や手間は相当なものだ。

装備を的確に使いこなす知識も必要である。特に、厳しい外界から自分を守ってくれるテントは、正しく使えば快適な空間を生み出すが、誤った使い方だと不快なばかりか、暴風でテントごと深い谷間に飛ばされ、命を失う可能性すら出てくる。

僕が以前、北アルプスの剱岳へ登った際、テント場で台風のような暴風雨の夜を経験した。

天候が悪化する前にすべてのペグを根元まで打ち込んでおいたが、時間とともに雨で地面はゆるみ、テントには強烈な風圧がかかった。そしてついにペグは抜け、テントは地面から引き剥がされそうになった。

僕は風が弱まるタイミングを見計らい、テントから出てペグを打ち直した。風の勢いに負けないように、予備のペグや周囲の大岩も利用して張り綱にテンションをかけ、テントがつぶれないような工夫もした。最後にはテントの周りは大量の水で川のようになったが、事前にしっかりと補修していた僕のテントは、フロアからの浸水はほとんどなくて済んだ。

暴風雨が収まり、昨夜のことがうそのように太陽が輝く朝が訪れた。僕のテントは生き延びた。だが、周囲のテントは原型をとどめていないものもあった。

その差は何だったのか?

それぞれのテント自体の強度の差もあるだろう。だが周囲の様子を見ていると、壊れたテントはもともと正しく設営できていなかった可能性が高かった。しかし、テントのもつ耐風性をしっかりと発揮させてやれば、大惨事は防げたように思われるのだった。

大切なのは「基本」である。まずは“知っているつもり”の知識を再確認し、場合によってはアップデートしてほしい。小難しい応用編の技術は、それからで充分だ。基本に忠実なテクニックを身につけ、必要な情報を得ておけば、それだけで誰もが安全で楽しいテント泊登山が行なえるようになることだろう。

※本記事は『テント泊登山の基本テクニック』を一部掲載したものです。

 

『テント泊登山の基本テクニック』

テントを背負って歩く縦走は、夏山登山の醍醐味。テント泊登山に必要な装備や知識を詰め込んだ一冊。


『テント泊登山の基本テクニック』
著: 高橋 庄太郎
発売日:2021年7月19日
価格:1100円(税込)

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プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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