日没の早い秋山、下山中の遭難に特に注意し、綿密な計画を! 島崎三歩の「山岳通信」 第237号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2021年9月22日に配信された第237号では、下山中の転倒、滑落、疲労や道迷い、日没による行動不能事案が多発傾向にあることに言及。秋山における注意点を改めて説明している。

 

9月22日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第237号では、期間中に起きた20件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月13日、北アルプス蝶ヶ岳で、単独で入山した44歳の女性が、常念岳から蝶ヶ岳に向けて登山中に日没と疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動し、女性を救助した。

  • 9月14日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した50歳の男性が、槍沢を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員及び県警ヘリが出動して男性を救助した。

槍ヶ岳での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月21日付

  • 9月14日、北アルプス前穂高岳で、4人パーティで入山した78歳の女性が、奥穂高岳から吊尾根を下山中に、疲労で行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

前穂高岳での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月21日付

  • 9月14日、塩尻市洗馬地籍の長興寺山で、単独で入山した24歳の男性が、長興寺山を登山中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。捜索していた塩尻警察署員が男性を発見して同行下山した。

  • 9月14日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した59歳の男性が、槍沢を登山中に道に迷い、疲労で行動不能となる山岳遭難が発生。捜索していた北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が男性を発見し、山小屋に収容した。

  • 9月15日、松本市安曇地籍の山林内で、きのこ採りのため2人パーティで入山した77歳の男性が、斜面を滑落して行動不能となる遭難が発生。警察、消防が出動して男性を救助した。

  • 9月15日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した59歳の男性が、槍沢を下山中に疲労で行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員及び県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月16日、茅野市宮川地籍の下馬沢川で、単独で入山した49歳の男性が、下馬沢を下山中に沢沿いに転落して負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳救助隊員及び諏訪広域消防の消防署員が出動して男性を救助した。

  • 9月17日、大町市美麻地籍の山林内で、単独で大町市美麻の里山を散策していた27歳の女性が、道に迷って行動不能となる里山遭難が発生。北アルプス広域消防本部救助隊員、大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月19日、北アルプス白馬乗鞍岳で、2人パーティで入山した23歳の女性が、山小屋滞在中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 9月19日、北アルプス涸沢で、2人パーティで入山した54歳の男性が、テント泊中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月19日、上伊那郡辰野町伊那富地籍楡沢山東側の山林で、きのこ採りのため単独で入山した70歳の男性が行方不明となる遭難が発生。警察などで捜索を行ったところ、崖下で倒れていた男性を発見し、救助した。

  • 9月19日、北アルプス常念岳で、69歳の女性が滞在中の山小屋で転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生した。

  • 9月20日、北アルプス槍ヶ岳の北鎌尾根で、3人パーティ(男性56歳、女性62歳、女性59歳)が北鎌尾根でテント泊中に、地震による落石の影響にでルートが崩落して行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して3人を救助した。

  • 9月20日、北アルプス槍ヶ岳の北鎌尾根で、2人パーティで入山した61歳の男性が、北鎌尾根を登山中に地震による落石が当たり負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月20日、八ヶ岳連峰横岳三叉峰で、3人パーティで入山した58歳の男性が、硫黄岳から赤岳に向けて縦走中に三叉峰付近で滑落山岳遭難が発生。男性は死亡が確認された。

  • 9月20日、北アルプス大黒岳で、単独で入山した47歳の男性が、五竜岳に向けて登山中に大黒岳付近で転倒、負傷して行動不能となる山岳遭難が発生した。

  • 9月20日、南アルプス三伏峠で、3人パーティで入山した73歳の女性が、三伏峠から下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。飯田広域消防署員及び飯田警察署員が出動して女性を救助した。

  • 9月20日、北アルプス白馬岳で、単独で入山した43歳の男性が、大雪渓を下山中にルートを誤り行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員、北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員、山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月20日、中央アルプス空木岳で、単独で入山した71歳の男性が、空木岳から下山中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性は翌日、自力で下山した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月3週は、連休を中心に20件の遭難が発生しました。下山中の転倒、滑落の他、疲労や道迷い、日没による行動不能事案が多発傾向にあります。秋は寒暖差が大きく、標高の高い山域では朝晩は氷点下になることもあります。寒さに対する備えを忘れずにお願いします。また、日帰りの予定でも日没前に下山できない場合に備え、ヘッドライトや最低限の防寒具、シェルター等を携行しましょう。

今後、秋の紅葉の最盛期を迎えると、人気の山域では登山者が集中する傾向にあります。行き帰りの道路や登山口の駐車場等も混雑が予想されますので、人が集中する連休や週末を避ける、混雑を見越した余裕をもった計画にする等の柔軟な対応をお願いします。

 

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(9月22日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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