「マルチピッチクライミング」って何だろう? 自然の中の大岩壁を“登る”魅力への誘い

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オリンピックのスポーツクライミングを見た人も多いだろう。このスポーツの発祥は、登山であったことは知られているが、最もスリリングな「マルチピッチ」に挑戦してみてはいかが?

 

今年は東京オリンピックが開催され、スポーツクライミングが正式種目となり、「クライミング」が広く一般的に知られるようになりました。オリンピックで初めてクライミングを見た多くの方は、ホールドと呼ばれる、色とりどりのでっぱりが取り付けられている、人工の壁を登るスポーツと思われているかもしれません。

一方、登山を愛する読者の皆さんは、クライミングは山の中で自然の岩壁を登ることから始まっている、というのはご存じと思います。しかし、経験したことのない人にとっては、「はて?どうやって登っているの?」、「落ちたら死んじゃう~、こわすぎる!」、そんなイメージなのではないでしょうか?

歴史をたどると、クライミングは世界の登頂困難な山の頂を目指すための一つの手段でした。難しい岩場で手がかりや足がかりをセットして登ったり、ロープをつかんで登ったりすることが普通でした。要は「何でもあり」だったわけです。

その中から、山頂に登るための手段ではなく、手と足を使って純粋に登ることだけを楽しむ「フリークライミング」が生まれました。そこからスポーツ的な要素がどんどん強まって現在ではオリンピック競技にまで発展したのです。


ところで、フリーとはどういう意味かご存じでしょうか? 「フリー」=「なんにも無し」? と考えるかもしれません。何も無いところを手足だけで登り、もし落ちてしまえば死んでしまう、というのが一般的な考えかもしれませんが、これでは誰もやりたがらないでしょう。

そこで、高さのある壁を登る際には、登る人と安全を確保する人が2人一組となって、専用の器具を使って体にロープを結んだり、落ちた時にも地面まで落ちることのないようにして登ります。もちろん、専用の器具を使うためには知識が必要です。

山の中の岩場を登る場合、山頂までは数百メートルあることもあります。となると数百メートルの長さのロープを使うのでしょうか? いえいえ、ロープの長さで区切って登るのです。これを「ピッチを切る」といいます。

最初に1人が登り、安全を確保していた方が、後からついて登ります。そして次に役割を交代し、今まで確保していた方が登ります。これを、登り切るまで複数回繰り返すので「マルチピッチクライミング」と呼びます。

数百メートルを越える岸壁を、安全によじ登る技術「マルチピッチ」


最小限の器具だけで、自分の手足を頼りに、自然の中の大岩壁を登る!!そこには、登山道を歩いて山に登るのとはまた違った醍醐味があります。

ただし「マルチピッチクライミング」を安全に楽しむためには、登る技術の他に、安全確保に関する様々な知識や技術、そして的確な判断力が必須となります。経験豊富な先輩や指導者に十分学んでから行うことをお勧めします。

★一歩上のクライミング講習会、「マルチピッチクライミング教室」

長野県山岳総合センターでも登山やクライミングに関する様々な講習を開催しています。もちろんマルチピッチクライミングの講習も行っていますので、興味のある方は是非お問い合わせください!!

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
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