疲労が原因の遭難が増加中。入山前に遭難のリスクを減らすための準備を! 島崎三歩の「山岳通信」 第238号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2021年9月29日に配信された第238号では、体力不足による遭難事故が増えていることを指摘。日頃からトレーニングを行い、体力や筋力を維持して遭難のリスクを減らすことを提案している。

 

9月29日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第238号では、期間中に起きた13件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月21日、北アルプス爺ヶ岳で、単独で入山した59歳の男性が、爺ヶ岳から柏原新道を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員、山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月21日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した56歳の男性が水俣乗越から上高地方面に下山中、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月22日、北アルプス涸沢で、2人パーティで入山した46歳の男性が、北穂高岳から上高地方面に下山中、疲労により転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。付近をパトロールしていた長野県警察山岳遭難救助隊員が男性を救助した。

  • 9月22日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した52歳の男性が、天狗池付近を槍沢へ向けて下山中に転倒して足を負傷する山岳遭難が発生。長野県警察山岳横遭難助隊員、長野県山岳遭難防止常駐隊員及び県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月23日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、2人パーティで入山した61歳の女性が、鹿島槍ヶ岳を南峰から北峰に縦走中に滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して救助したものの死亡が確認された。

  • 9月23日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、3人パーティで入山した57歳の女性が、木曽駒ヶ岳から濃ヶ池付近を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

中央アルプス木曽駒ヶ岳の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月27日付

 

  • 9月24日、北アルプス涸沢で、単独で入山した81歳の男性が、パノラマコースを涸沢へ向けて登山中に行方不明となる山岳遭難が発生。捜索中の県警ヘリが男性を発見して救助したものの死亡が確認された。男性は滑落した模様。

  • 9月24日、中央アルプス宝剣岳で、2人パーティで入山した52歳の女性が、宝剣岳から下山中に転倒して足を負傷する山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署員が出動して女性を救助した。

  • 9月25日、八ヶ岳連峰権現岳で、ツアー登山で入山した46歳の女性が、権現岳から赤岳に向けて縦走中に転倒して足を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

八ヶ岳連峰権現岳の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月27日付

 

  • 9月25日、下水内郡栄村の苗場山で、単独で入山した79歳の女性が、下山中に登山道から滑落して負傷する山岳遭難が発生。岳北消防本部消防署員及び飯山警察署員が出動して女性を救助した。

  • 9月26日、松本市保福寺地籍の二ッ石峰付近の山林内で、きのこ採りのために3人パーティで入山した64歳の男性が滑落して負傷。松本広域消防本部消防署員が出動して男性を救助した。

  • 9月26日、下伊那郡喬木村大島地籍の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した80歳の男性が滑落して負傷。飯田広域消防本部消防署員及び飯田警察署員が出動して男性を救助した。

  • 9月26日、下伊那郡泰阜村の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した76歳の男性が、行方不明となる事案が発生。男性の親戚が山中で男性を発見しましたものの、死亡が確認された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月4週は、3件の死亡遭難を含む、13件の遭難が発生しました。山の険しさや自然の厳しさは、いつまでも変わることはありませんが、人間は加齢とともに、体力(持久力)や筋力、バランスなどは、どうしても衰えてしまいます。登山は、ルートや行動時間によっては、非常にハードなスポーツで、身体にも大きな負荷が掛かります。体力や筋力の低下は、滑落や転倒の原因になるほか、疲労による行動不能や、心疾患などのリスクも大きくなります。そのため、日頃からトレーニングを行い、体力や筋力を維持し、遭難のリスクを減らしましょう。また、計画の際には、経験の浅い方は少しづつステップアップをする計画を、ベテランの方は自身の力量を過信しない計画を立てましょう。

なお、秋は寒暖差が大きく、標高の高い山域では、朝晩の気温が氷点下になることもあります。寒さに対する備えを忘れずにお願いします。また、日帰りの予定でも日没前に下山できない場合に備え、ヘッドライトや最低限の防寒具、ビバーク装備等を携行しましょう。

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(9月22日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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