大好きな山々をつなぐトレイルを作りたい。比良比叡トレイル協議会|日本山岳遺産の横顔 vol.14

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豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。第14回は、琵琶湖西方の比叡山・比良山地でロングトレイル整備や魅力の発信に取り組む「比良比叡トレイル協議会」を紹介する。

写真=比良比叡トレイル協議会 取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2022年2月号掲載記事

写真=比良比叡トレイル協議会
取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2022年2月号掲載記事

 

■日本山岳遺産候補地を募集中!

比良比叡トレイル協議会

比良比叡トレイル協議会 〈 2019年度認定 〉

Area:比叡山・比良山地
Main activity:トレイル整備
Group profile:
滋賀県内の12の企業・団体が発起人となって2017年に設立。比叡山と比良山地をつなぐ比良比叡トレイルの登山道整備や情報発信を行なっている。今後、トレイルでの小中高生の校外学習にも力を入れていく。
https://hirahiei.com/

歴史ある貴重な山々を大きな愛情とともにつなぐ
「本当にいい山なんですよ。景色はすばらしく、歴史は限りなく奥が深い。地元の誇りです」

比叡山・比良山地について、比良比叡トレイル協議会の事務局長を務める小川隆さんは感情を込めてこうたたえる。麓の滋賀県大津市で生まれ育ち、地元の観光会社の社長などを経て、2016年に比良比叡トレイルの構想を打ち上げた人物だ。

「大好きな山々をつなぐトレイルを作りたい」。小川さんの呼びかけに思いを共有した滋賀県山岳連盟や比叡山延暦寺といった有志の団体や企業が集まり、2017年に同協議会を設立。登山道の踏査や安全確認を繰り返し行なったうえで、約50kmのルートを決めた。

天台宗の荒行「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」で歩かれる比叡山の行路や、琵琶湖の大展望が広がる比良の山々や武奈ヶ岳などを経由。歴史・文化・自然を堪能できるルートとなっている。7つのパートに分かれ、それぞれ日帰りでも楽しむことができる。

ルート整備には多くの苦労があった。2018年秋、台風により土砂崩れや倒木の被害を受けた。同協議会は翌年、12回にわたる被害調査と整備を実施。倒木を撤去し、悪路を迂回する道標を設けて、安全登山の環境を整えていった。

信越トレイルの整備を担うスタッフやボランティアたち

2018年9月に発生した台風による倒木を撤去する比良比叡トレイル協議会のメンバーたち

そして2021年春、ついにルート全容が固まり、8月に地図を発売した。展望や花・植物の見どころのほか、メンバーが現場を歩いて確認した危険箇所や迷いやすい地点などが詳細に記載されている。約1000部の初版が数カ月で完売する好評ぶりだった。

現在、中学・高校などの校外学習の受け入れに向け、ガイドを養成中だ。年齢や体力、学習のポイントに応じてトレイル内の適切なルートを案内する計画で、東京や大阪、京都などの学校からすでに予約や問い合わせがあるという。

「歴史や自然だけでなく、電車で来られるアクセスのよさや日帰り可能という魅力もある。コロナ収束後には、海外からも多くの人に来てもらえたらうれしいです」

そう言って小川さんはまた「本当にいい山ですよ」と、ほほ笑みながら口にした。

トレイル完成に向け、多くの調査や整備を行なった

トレイル完成に向け、多くの調査や整備を行なった

★日本山岳遺産認定地 詳細: 比叡山・比良山地[ 滋賀県・京都府 ]比良比叡トレイル協議会(2019年)


日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費。
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費。

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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