スノーシューとスパイスカレー。 癒やしのワンコとともに@長野県白馬村

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のんびりと雪山を楽しむにはもってこいのスノーシュー。長野県白馬村で、おいしいスパイスカレー付きの半日ツアーがあると聞きつけ、参加してきた。はからずも、ツアーメンバーには“癒やしの存在”がいて……。

写真・文 = 小野泰子

 

 

MOUNTAIN HUTに集合し、
ツアーメンバーとご対面

深々と雪が降り積もった1月下旬。「今シーズンは平年よりも多いのよ」。そう話すのは山岳ガイドの羽山菜穂子さん。スノーシューツアーの集合場所となった白馬村のMOUNTAIN HUT(マウンテン・ハット)は、羽山さんがガイド業のかたわら営むカフェ&ワークショップスペース。この山小屋さながらの小さな建物もすっぽりと雪に覆われ、入口脇には雪かきついでにかまくらが造られていた。

 

ハーフビルドで建てたMOUNTAIN HUTと、 白馬の山々を熟知する羽山さん

 

今回、雪山ハイクを楽しみたいと集まったのは隣町に住む縫部さんと、彼女が誘った友人の川村さん&愛犬ハウルくん。そこに小野が加わり、「はじめまして」とごあいさつ。縫部さんは何度か羽山さんのガイドツアーに参加しているが、スノーシューは初だそう。「ジャケットと靴は自前だけれど、パンツは夫、手袋は娘から借りたの」とにっこり。防水性と保温性のあるウエアを準備さえすれば、スノーシューとトレッキングポールは貸してもらえるので、気軽に体験できる。

いっぽう、「犬連れで参加できるのがうれしい」と川村さん。羽山さんのツアーは半オーダーメイドで、参加者の人数、ペット同伴といった要望、雪のコンディションなどに合わせ、行き先や行程を組んでもらえる。そして、ランチに本格スパイスカレーが味わえるとあって、口コミで評判が広まっているのだ。

犬好きの私は、思いがけず一緒に過ごせるメンバーの存在にテンションが上がってしまう。聞けば、ハウルくんは7歳のミックス犬。普段は一般社団法人「いぬとのんびり」で、「ふれあい犬」として動物介在活動を行なっている。そんな彼と山を歩くことで、終始、気持ちが癒されたのはお察しのとおり。

 

穏やかで、人懐っこいハウルくん。彼のお陰でこのハイクがより思い出深いものに

 

広々とした雪原を闊歩する爽快さ。
後方には戸隠連峰が

この日、向かったのはMOUNTAIN HUTの裏山、嶺方山(みねかたやま)。地元で知る人ぞ知る隠れたスノーシュースポットで、バックカントリースキーで訪れる人もいる里山だ。人間たちはスノーブーツや冬山登山靴にスノーシューを装着し、出発準備。ハウルくんも雪玉対策のウエアを着て、人生2度目の雪上散策を待ちわびているようす。

歩き始めの林道から、落葉樹に囲まれた広々とした東斜面に入っていく。一面の雪景色のなか、なだらかなフィールドを歩くのは、人間にとっても犬にとっても本当に気持ちがよいものだ。開放感いっぱい! 私たちは笑顔になるし、ハウルくんは尻尾を振ってうれしさを表現している。

 

カラフルなパンツのご一行。前から羽山さん、ハウルくん&川村さん、縫部さん

 

標高1010m付近から後ろを振り返ると、戸隠連峰の最高峰・高妻山(標高2353m)や乙妻山、戸隠山が凛とそびえている。少し先に進んだポイントは、西側の白馬三山から鹿島槍ヶ岳まで一望できるのだが、こちらは残念ながら頂に雲がかかっていた。

 

写真中央、台形の雪山が高妻山。その左に乙妻山、右に戸隠山が

 

香ばしいスパイスカレーをほお張り、
青空ランチに大満足

お待ちかねのランチは、標高1020m付近の木立ちのなかで。羽山さんが持参したカレーを温める間、私たちはシャベルを使い、雪面から円卓を掘り出していく。周りを囲むように座る場所も整える。ハウルくんはというと、香ばしいカレーの匂いに誘われ、調理のようすをガン見していた(笑)。

 

せっせと雪を掘り出し、円卓とイスを整える

 

卓上に運ばれたプレートには、羽山さん自慢の鹿肉のキーマカレーをはじめ、「エリックサウス」のゴア風ポークビンダルーカレーとフィッシュカレー(ブリ)の3種類が! 自家製の鹿肉パテ、キムチ、ターメリックライス、桑の実のシロップ漬け、食用ホオズキも添えられている。「よく体を動かし、きちんとした食事から大地のエネルギーをしっかりと受け取ってほしくて」という羽山さんの言葉どおり、「食」はツアーのなかで大きな柱になっている。すすめられるまま、私たちはおかわりをし、おいしい時間を満喫したのは言うまでもない。

 

ヤギミルクのチャイで乾杯! 「食」の充実ぶりは羽山さんのツアーならでは

 

素材の味を生かし、ほどよくスパイスが効いたカレーはどれも美味。エリックカレーの案内は最後に

 

小さな発見をしながら林を下る。
下山後はかまくらでまったり

帰路はシカのフンやウサギの足跡を見つけながら、杉が林立する南斜面を下っていく。省エネスイッチが入ったハウルくんは、道をそれることなく、すでについたトレースを進んでいくから、賢いなぁと感心してしまう。

 

明るい林のなかを歩く。いつしかハウルくんが先頭に

左)思わず、たどってしまいそうになるウサギの足跡 右)おもしろい形の氷柱を発見

 

約3.5kmのルートを歩き終え、再びMOUNTAIN HUTへ。店内でくつろぐも、かまくらでくつろぐもよし。かまくらの内部は見かけよりも広く、大人3人と1匹が入っても余裕がある。半日のツアーを振り返りながら、縫部さんと川村さんは、浮力があるスノーシューの歩きやすさと楽しさにはまったようすで、「今シーズン中に買うわ!」と笑顔で宣言していた。

 

MOUNTAIN HUTの前にあるかまくら。なかは意外と広くてびっくり

 

■ガイド

羽山菜穂子さん(はやま・なほこ)

日本山岳ガイド協会認定 山岳ガイドステージⅡ。ハードな岩稜帯の登攀からゆったりとした低山ハイクまで、幅広く対応。クライミング、スキー、ヨガのインストラクターも務める。2017年にエベレスト登頂を成し遂げ、アドベンチャーレースの世界大会にも参戦。小柄で温和な人柄とのギャップが魅力的。

 

■ツアー紹介

白馬界隈でのスノーシューツアーは、雪が残るゴールデンウィークごろまで可能。参加者の要望に合わせ、随時開催する。費用は人数や行程などにより異なるが、今回のような3人での半日ハイクの場合、目安は1人7000円~(ガイド料、保険料、スノーシュー・トレッキングポールのレンタル料、食事、飲み物含む)。問い合わせは下記まで。

 

MOUNTAIN HUT

長野県北安曇郡白馬村神城15150
電話:090-4829-0125
メール:telemousenaho@gmail.com
URL:www.facebook.com/mountainhut.hakuba

 

■山ごはん

南インド料理専門店「エリックサウス」による、無添加の冷凍カレーは、山で本格的な味を楽しみたいときにおすすめ。15種類ほどのラインナップで、定番のエリックチキンカレーのほか、青唐辛子ラムカレーといった個性的な味も。封のまま熱湯に入れ、5分ほど火にかければOK。MOUNTAIN HUTでも取り扱っている。1袋650円~。

 

エリックサウスの通信販売 www.erickcurry.jp

プロフィール

小野泰子(フリーランス編集者)

長野県大町市在住。登山、トレッキング、散歩といった歩くこと全般をテーマに、山岳系の雑誌、書籍、ウェブに携わる。プライベートでも四季を通じて山に入り、縦走、アルパインクライミング、雪山登山にいそしんでいる。ZINE作りのワークショップを随時開催。山のみならず、街で出合った“山の片りん”をインスタグラム(@ono_b_yasuko)に投稿中。

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