日帰りで、格安に公共交通機関を使って、中央アルプスの高山植物を楽しもう

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日本アルプスに登って高山植物を鑑賞となると、日帰りでは難しいうえに、時間的にも経済的にももったいない気がする。しかし「駒ヶ岳千畳敷カールきっぷ」を使ってリーズナブル&楽チンに訪れた宝剣岳では、多くの高山植物が迎えてくれた。

 

下界では、うだるような暑い日が続いている。こんなに暑い夏には、涼しい高山に登って、一面に広がる高山植物のお花畑に行ってみたいと思う。
 
しかし、北海道や日本アルプスの高山植物を見に行くためには、きつく長い急坂を登り、山小屋に泊まり、何日もかかるイメージがある。それに伴い、交通費だけでなく宿泊代も重なり、出費もかなりのものになる。休みもそう簡単には取ることはできない。これらの理由が絡み合い、山は遠くになってしまう。こうして、高山植物が、言葉通りの高嶺の花になってしまうのだ。

ところが、これらの高山植物の花畑に行くことを阻む理由を、一気に取り除くことができる方法があった。私も数年前に知ったのだが、東京から日帰りで、公共交通機関を利用し、価格も安く、日本アルプス登山が楽しむことができるものである。

それは、「駒ヶ岳千畳敷カールきっぷ」という、バスタ新宿からの高速バスと路線バス、中央アルプス駒ヶ岳千畳敷ロープウェイの往復乗車券がパックになった、おトクなセット券だ。価格は11,000円。これで、新宿からのすべての乗り物の乗車券が含まれている。もちろん日帰りでなくてもOKだ。

チングルマの綿毛の果実が風に揺れていた


始発朝6時55分にバスタ新宿を出た高速バスは10時18分に駒ヶ根インターバス停に到着。ここから5分ほど歩いて地下道を通り、女体入口(駒ヶ根インター前)バス停に移動する。10時37分発のバスに乗り、11時15分にしらび平に到着し、さらに11時30分しらび平発のロープウェイに乗れば、11時37分に千畳敷に到着だ。千畳敷カールはもう高山植物のお花畑。つまり、朝、新宿を出るとその日の午前中には公共交通機関を使って、高山植物のお花畑に行くことができるのである。

帰りは、最終17時00分千畳敷発のロープウェイに乗れば、17時20分しらび平発の路線バスに乗ることができ、18時00分に女体入口(駒ヶ根インター前)バス停に到着、18時50分駒ケ根インター発のバスに乗って、22時15分にバスタ新宿着となる。

山の滞在時間は5時間というところ。コースタイムであれば登り3時間、下り2時間程度の山だろう。足が早くて、天気がよければ、お花畑で遊ぶだけでなく、木曽駒ヶ岳まで日帰り登頂することも可能だ。ちなみに昨年は木曽駒ヶ岳に登り、今年は宝剣岳に登った。

千畳敷カールから歩く高山植物のお花畑はすばらしい。黄色のシナノキンバイやミヤマキンポウゲの花が終わると、真っ青のミヤマリンドウの花や、黄色のミヤマアキノキリンソウ、ウサギギクなどが咲く。その頃稜線まで登れば、白いトウヤクリンドウも咲いていることだろう。宝剣山荘の前辺りにこの花は多い。

 

左/イワカガミの花は細かい切れ込みがあるのが特徴だ
右/木曽駒山頂付近で咲くコマクサ


木曽駒ヶ岳山頂付近には中央アルプスの固有種であるコケコゴメグサという珍しい高山植物も生えているが、花があまりに小さく、まさに苔のような植物なので、コケコゴメグサを見つけることは難しい。

 

左/キバナノコマノツメ
右/クロユリが咲くのは7月上旬


 涼しい日本アルプスの高山 を11,000円で、日帰りで、遊ぶことができる「駒ヶ岳千畳敷カールきっぷ」を利用した登山は、気軽な山歩きのひとつの形である。天気予報を見て、明日は木曽駒ヶ岳に登ろう! なんてことが可能。ひと夏に何度も登ることも気軽にできる。もちろん本格的な夏山登山のトレーニングにもぴったりだ。

日帰り登山といえども、木曽駒ヶ岳や宝剣岳の登山は気象条件の厳しい高山登山である。登山装備と計画は、きっちりして行くことだけはお願いしたい。

文字がかすれて読めないが、木曽駒山頂に日帰りで到着

 

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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