登山中に何らかの体調不良の徴候があった際には、早めに決断・対処を 島崎三歩の「山岳通信」 第278号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年9月22日に配信された第278号では、疲労や病気に起因する遭難事故について言及。登山中に何らかの体調不良の徴候があった際には、遭難の一歩手前にいると自覚して早めに対処することが重要と説明している。

 

9月22日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第278号では、期間中に起きた10件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月12日、北アルプスの涸沢で、2人パーティで入山した78歳の男性が、上高地から入山して涸沢の山小屋で宿泊中に体調不良となり、13日に県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月14日、八ヶ岳連峰の美濃戸南沢で、単独で入山した64歳の男性が美濃戸南沢の登山道上に倒れているのを通りかかった登山者が発見。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪広域消防特別救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助したものの死亡が確認された。男性は登山中に発病した模様。

  • 9月14日、浅間連峰のトミーの頭で、2人パーティで入山した48歳の男性が、車坂峠から前掛山に向けて登山中に、トーミの頭草すべり付近で石につまずき滑落・負傷する山岳遭難が発生。群馬県防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月15日、北アルプスの鹿島槍ヶ岳で、単独で入山した49歳の男性が、鹿島槍ヶ岳から八峰キレットに向けて縦走中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス八峰キレットでの遭難救助現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月20日付

  • 9月15日、北アルプスの涸沢で、5人パーティで入山した67歳の女性が、テント場に滞在中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助しました。

  • 9月16日、北アルプスの針ノ木岳で、単独で入山した42歳の男性が、針ノ木岳に向けて登山中、浮き石を踏み外して崩れた際に岩が足に当たって負傷し、山小屋で行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス針ノ木小屋の遭難救助現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月20日付

  • 9月16日、北アルプスの涸沢で、13日から単独で入山していた65歳の男性が、北穂高岳から下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。16日、県警ヘリが出動して救助しました。

  • 9月17日、飯山市大字静間地籍の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した76歳の男性が、きのこ採り中に自分の居場所が分からなくなって遭難。飯山警察署員及び岳北消防署員が出動して男性を救助しました。

  • 9月18日、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で入山した58歳の男性が、槍ヶ岳から上高地に向けて下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月19日、北アルプスの不動岳で、単独で入山した59歳の男性が、船窪岳から烏帽子岳に向けて縦走中、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊、北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月3週は、死亡遭難を1件含む10件の遭難が発生しました。滑落や転倒による遭難が多発しましたが、疲労や病気による遭難も後を絶ちません。
疲労や病気は突然起こるのではなく、何かしら事前に兆しがあるものです。「いつもより体が重たい、脈が速い、息が切れやすい」、「道標を見落としてしまった」、「バランスを崩した」など、登山中にこのような兆候があれば、自分や仲間は遭難の一歩手前にいると自覚して早めに対処することが重要です。
突然死を含む発病による遭難は、平素からの体調管理や登山前の体調チェックと準備運動をしっかり行い、歩き始めは自分の体調をよく確認しながら慎重に行動することで防ぐことができます。

2週からきのこ採りによる遭難が発生しています。きのこ採りは、整備されていない山林や崖等の斜面に入って行うため、通常の登山よりもはるかに遭難のリスクが高く、きのこ採りに夢中になり自分の居場所が分からなくなってしまいます。
きのこ採りに行く際は、登山と同様に必ず地図・携帯電話・防寒着・ヘッドライト・非常食飲料等を携行し、家族に必ず行き先を告げましょう。

 

秋の長野県の山への入山前に「令和4年秋山情報」を確認しよう

長野県警察本部山岳安全対策課では、ホームページ上で「令和4年秋山情報~無事帰るまでが登山~」(PDF)を発表している。


本情報では、秋山で遭難しないための情報を中心に、きのこ採りに出かける人への注意点など、秋山ならではの山岳遭難について説明している。「秋山は周期的な晴天に恵まれやすく、気候的にも登山に適していますが、日没時刻が早くなるほか、ひとたび悪天候となると真冬並みの寒さになるなど、秋山特有のリスクがあります」とし、登山前に情報収集や事前準備をしっかりと行うことを呼びかけている。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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