気温上昇の時期、寒暖の差から起きる雪面状況の変化に対応できる準備を 島崎三歩の「山岳通信」 第294号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年3月2日に配信された第294号では、今後の気温上昇予測に関して言及。一日の寒暖差が大きくなることで起きる雪面状況の変化に対応できる準備を促している。

 

3月2日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第294号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 2月20日、志賀高原の岩菅山で、2人パーティでバックカントリーを滑走していたニュージーランド国籍の68歳の男性が、同行者とはぐれて道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。スキー場のパトロール隊が男性を救助した。

  • 2月20日、下高井郡野沢温泉村の毛無山で、単独でバックカントリーを滑走していたカナダ国籍の40歳の男性が、道に迷い行方不明となる山岳遭難が発生。翌21日、飯山警察署員、県警山岳遭難救助隊員及び志賀公園地区山岳遭難防止対策協会救助隊野沢温泉班隊員が出動して男性を救助した。

  • 2月24日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、単独で入山した52歳の女性が、天狗岳から下山中に視界不良などにより行動不能となる山岳遭難が発生。諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 2月24日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、アイスクライミングのため2人パーティで入山した59歳の男性が、摩利支天大滝でアイスクライミング中に滑落して両足を負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪広域消防本部消防隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 2月24日、北アルプスの八方尾根で、2人パーティで入山した49歳の男性が、下山中に右足首を負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 2月26日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、3人パーティで入山した29歳の男性が、木曽駒ヶ岳から千畳敷に向けて下山中に転倒して左足を負傷する山岳遭難が発生。消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 2月26日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、単独で入山した44歳の女性が登山中に登山道から滑落して足などを負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。静岡県警ヘリが出動して女性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

県内では、週末を中心に7件の遭難が発生し、うちバックカントリー遭難が2件、アイスクライミング中の遭難が1件発生しました。特にバックカントリー遭難は、毎週発生しています。
バックカントリーでの滑走は、雪崩、立木への衝突、道迷い等、非常に危険の高いスポーツです。樹林帯では、ヘリコプターでの救助が困難であり、地上から救助に向かわなければならず、相当の時間を要します。自分たちでトラブルに対処できるような知識や技術、経験を積んでから入山しましょう。
自分の技術を過信した無理な滑走は、命に関わる行為です。大切な家族や友人のことを考えた行動をお願いします。

登山においても、雪崩や滑落など、常に危険と隣り合わせである認識が必要です。そのため、行動中の危険を事前に予測して回避したり、対応できる知識や技術、装備が必要です。

今週は、気温が上昇し暖かい日が続く予報となり、一日の寒暖差が大きくなることが予想されます。高山帯でも気温の上昇により、雪が溶け、気温の低下とともに一気に凍結してアイスバーン状になることが少なくありません。歩行中や滑走中は、雪の状況をしっかりと確認するとともに、急斜面での下りやトラバースの際は、特に慎重な行動に努めてください。また、アクシデントにより救助要請をしても、時間帯や天候状況によってはすぐに救助ができない場合がありますので、日帰り登山でも万が一に備えた装備(ビバーク装備等)を必ず携行しましょう。
入山前には、登山道の状況等を確認するとともに、必ず最新の天気予報を確認し、慎重な判断をお願いします。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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