ツクシショウジョウバカマの群生地を訪ね、福岡・佐賀県境の羽金山へ

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ツクシショウジョウバカマの群生地を訪ね、福岡・佐賀県境の羽金山へ。山頂には標準電波送信所と電波塔が立つ一風変わった場所です。

写真・文=池田浩伸

暖かい九州でも、今シーズンはたくさん雪が降り寒い日が続きましたが、3月になると早春の雨で大地も潤い始めました。

春の日差しを感じると「草木萌動(そうもくめばえいずる)」の言葉を思い浮かべます。木の芽がほころぶ少し前に、春を待ちわびて咲き始めるツクシショウジョウバカマの群生地を訪ねることにしました。

ツクシショウジョウバカマ

ショウジョウバカマは、ユリ科の多年草でへら状の葉の間から花茎をのばし、うつむき加減に数個の美しい花をつけます。ショウジョウバカマという変わった名前の由来は、葉が常緑ではなく冬に一時的に赤くなることがあることから、酒を好んで飲む猿に似た想像上の動物「猩々(しょうじょう)」の赤ら顔に似るとか、赤い袴に見えるなど諸説あるようです。

スプリングエフェメラルと呼ばれる早春咲く花たちの一種で、最近は生息地が減り見ることが少なくなった花ですが、福岡・佐賀県境の羽金山には群生地があることで知られています。

佐賀市富士町から見た羽金山

 

モデルコース:白糸の滝駐車場~デッカ橋~河童山~羽金山~白糸の滝駐車場

羽金山地図

コースタイム:2時間10分

⇒羽金山周辺の地図

 

登山口は、福岡県糸島市の白糸の滝から登りはじめます。白糸の滝は落差24m、雄大で絹糸のように繊細に流れ落ちる滝は糸島の観光名所として知られています。

白糸の滝ふれあいの里の駐車場には、登山コース図と花図鑑が一緒になった「糸島の山歩き」リーフレットが用意されています。ぜひ手に取ってスタートしましょう。

しばらく林道を歩くとゲートがあり、ここからは、はがね山標準電波送信所の電波塔専用道路となり一般の車は通ることができません。

 

直進は山頂まで続く車道。右折して縦走路へ

 

ゲートを過ぎてすぐデッカ橋を渡ると、羽金山と縦走路の標識から車道を右へ外れ谷沿いに伸びる羽金山登山道を進みます。

やがて、縦走路に合流します。背振山地は福岡県と佐賀県の県境沿いに東西に稜線を連ね、西から十坊山・浮岳・女岳・羽金山・雷山・井原山・金山・脊振山・蛤岳・九千部山・基山などの主峰を形成していて、全長が70kmにも及んでいるそうです。

始めは平坦な道ですが、傾斜が増し始めるとツクシショウジョウバカマの群生地が現れます。日陰の湿った斜面を好む植物で、木立の薄暗いなかに愛らしい白くて小さな花がたくさん咲いています。踏みつけないように注意しながらレンズを向けました。

暗くてやや湿り気のある山の斜面を好むツクシショウジョウバカマ

 

茎が10cmほど伸びているのですが、うつむき加減の花なので腰をかがめてつらい姿勢での撮影になってしまします。隣で写している友人の不格好を見て吹き出してしまいました。

 

ひとしきり撮影した後は、羽金山の西にある河童山を往復します。縦走路の分岐付近から西側を振り返ると背振山地の最西端の浮岳や女岳と海の景色がきれいに見えます。樹木に囲まれた山頂では羽金山頂が近くに見えます。

河童山と羽金山の鞍部には、アブラチャンの林が広がりとてもいい雰囲気の場所です。

 

不思議な冬芽を持つアブラチャンも春の準備

 

羽金山と河童山の鞍部に広がるアブラチャンの森

 

羽金山頂は、はがね山標準電波送信所敷地内にあり施設敷地内での飲食禁止なので、ここの陽だまりでお弁当にすることにします。

はがね山標準電波送信所は、日本に2つしかない重要な施設なので関係者以外の施設内に入ることはできないのですが、インターフォンを押して、許可を得れば敷地内に入ることができます。

 

羽金山の山頂。電波塔が立つ

 

背振山地の山々や、多良山地、雲仙岳など見事な展望を楽しんだら下山します。

専用道路の道脇にもたくさんのツクシショウジョウバカマが迎えてくれるので、きれいな株をみつけてはレンズを向けながら、デッカ橋まで下ってくると往路に合流し往路を戻ります。

 

下山路の日当たりのいい場所にはオオイヌノフグリがたくさん咲いていた

プロフィール

池田浩伸

佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。

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