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氷の壁を登る達成感を味わいたい! アイスクライミングにトライ、アイスアックス&縦爪アイゼンの実際

登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
道具・装備 2018年02月16日

凍りついた滝などの氷の壁を登るスポーツ「アイスクライミング」。冬山登山とクライミングの両方の経験・技術を要するために、上級者オンリーなイメージだが、近年は人工のアイスゲレンデも登場して、じわりと距離が縮まってきている。そこでICI石井山専新宿ビックロ店の植田寿洋さんに、アイスクライミングをするための用具について説明してもらった。

 

POINT
  • 冬山登山とクライミングの道具&技術が必要なので敷居は高いが、人工のアイスゲレンデの登場で入りやすい環境が整ってきている
  • アイゼンは「縦爪」タイプがオススメ。モノポイントを選べばさらに登りやすい
  • アイスアックスの種類は豊富、登りやすさならピックを垂直に打ち込めるタイプがオススメ

八ヶ岳ジョウゴ沢でのアイスクライミング 写真/TangoYankyさんの登山記録より

 

相当のスキルと道具と心構えが必要なので、まずは体験から始めてみよう

編集部T: 今回はアイスクライミングについて教えてください。

植田さん: アイスクライミングは、「アイス」+「クライミング」というくらいなので、冬山登山でもあり、クライミングでもあるスポーツです。そのため、冬山登山の道具一式とクライミングの道具一式、さらにアイス専用の道具が必要になるので、道具を揃えるとなると相当のお金がかかります。始めるためには、ある程度の「心構え」が必要になってくるでしょう。
仮に冬山道具一式とクライミング用品一式とアイスクライミング専用の道具をイチから一式、購入するとなると、たぶん50~60万は必要になると思います。それを使いこなす技術も必要なので、気軽にできるスポーツではないことは理解する必要があります。

編集部T: 冬山登山・クライミングの両方のスキルが必要となると、敷居が高いスポーツですね。

植田さん: まずは体験することから始めてもらえると良いと思います。今であれば、赤岳鉱泉や岩根山荘で、人工のアイスゲレンデがありますので、そこで第一歩を踏み出すことをお勧めします。
こうした場所ではアイゼンやアイスアックスなどの用具は借りられます。また、定期的に行われている初心者向けの講習会や体験会に参加すれば、ハーネスやロープやヘルメットなどのクライミング用具も用意してくれる場合もあるので、ここから体験するのが手っ取り早いと思います。

 

八ヶ岳 赤岳鉱泉アイスキャンディ

赤岳鉱泉の人工アイスゲレンデ「アイスキャンディ」 写真/赤岳鉱泉

期間: 12月中旬~3月下旬(氷の状況により変わる)
料金: 宿泊者/初回のみ1000円、テント泊・日帰り/1日1000円
講習: 定期的に開催。アイスクライミング初心者体験会はこちら
レンタル: ヘルメット、アックス、アイゼン、冬山靴などは貸出可能
 ⇒アイスキャンディ利用の詳細はコチラ

 

長野県川上村 信州百名山の宿 岩根山荘 アイスツリー

岩根山荘の人工アイスゲレンデ「アイスツリー」 写真/岩根山荘

期間: 12月中旬~3月初旬(氷の状況により変わる)
料金: 宿泊者/1日1000円、日帰り/1日2000円
講習: プロによるレッスンを定期的に開催中。初心者対象の講習も行われている
レンタル: アックス、アイゼン、ヘルメットなどは貸出可能
 ⇒岩根アイスツリー利用の詳細はコチラ

 

編集部T: アイスクライミング専用の用具となると、アイゼンとアックスということですね。

植田さん: はい、そこでまずはアイゼンから説明します。冬山登山をする人なら、アイゼンは持っているとは思いますが、アイスクライミングに必要なアイゼンは、つま先に爪のある12本爪タイプのものとなります。
また、縦爪タイプが適しています。アイゼンの爪の形状には「平爪」と「縦爪」があります。見比べてれば一目りょう然ですが、前爪の形状が縦向きになっています。

左が平爪、右が縦爪。前爪の向きの違いに注目 

 

編集部T: 登山だと平爪のタイプを使っている人が多いと思いますが、なぜ縦爪のほうが適しているのでしょうか?

植田さん: 簡潔に言えば縦爪のほうが登りやすいからです。氷に蹴り込んで爪を入れた時に“サクッ”と氷に刺さりやすく、氷を割りにくいのが縦爪の特徴です。
アイスクライミングの際に使う爪は、先端の2つだけではなく、二列目の爪も使っています。実際には4箇所を氷に乗せて安定させているのです。平爪の形状だと氷を面で捉えるので、どうしても氷を割りやすくなってしまい、氷に乗りにくくなりますす。縦爪だと点で捉えるので荷重を乗せやすくなります。
上手い人は道具をあまり選ばないし、私も先輩から「平爪でも登れる」と言われたこともありますが、やっぱり基本は縦爪を選んだほうが良いでしょう。
さらに言うと、デュアルポイントではなく、モノポイントのほうが、さらに乗りやすくなります。

左が前爪が1本のモノポイント、右が前爪が2本のデュアルポイント

 

植田さん: デュアルポイントとは前爪が2本あるタイプで、モノポイントは1本のタイプを指します。モノポイントのほうが何故、乗りやすいかといえば――、アイスクライミングも通常のクライミングと同じで、身体を捻りながら登るので、壁(氷壁)と身体の間に空間を作ってあげたほうが、登りやすくなります。モノポイントの場合は、必ず3本の爪が氷面に接しているので、身体を捻りやすい。
一方、2本爪だと、身体を捻ったときには片側の爪しか接していない可能性があります。すると、食いつきもバランスも悪くなる。そのため、モノポイントのほうが安定して登りやすくなります。
デュアルポイントでもモノポイントでも、自分が使っている縦爪のアイゼンに慣れることは大切です。たくさん登って、アイゼンの癖をつかんで欲しいと思います。

 

曲がっているのには意味がある! ピッケルとはかなり違うアイスアックス

編集部T: 次はアイスアックスについて教えてください。

植田さん: アイスアックスは、今は色々なタイプが色々なメーカーから出ています。それなりに高価な買い物(1本2万5千円~4万円程度が相場)になるので、慎重に選びたい用具です。
「振りやすさ」というところが選ぶポイントとなりますが、軽い=使いやすというわけではなく、重さやバランスなど色々な要素があると思います。感じ方に個人差もあるので、持っている人のものを借りてみたり、人工ゲレンデにあるレンタルで借りて試してみたりなどの機会を作るのも良いと思います。
降りやすさ・登りやすさと言っても、なかなかわからないかもしれません。直感で選んでしまう場合も多いと思いますが、大切なのは「選んだアックスに徹底的に慣れていく」ことだと思います。

編集部T: アイスアックスの特徴といえば柄が曲がっていることだと思いますが、これにはどんな理由があるのですか?

植田さん: まず、シャフト(柄の部分)の曲がっているカーブにも違いがあることを知ってほしいと思います。実際、こうして並べて置いてみると、角度がだいぶ違うことがわかります

アックスのシャフトの曲がり具合には違いがある。写真上のほうがシャフトのカーブが大きい

 

植田さん: 基本的には、握ったときに、アックスの先端と壁が垂直に近くなるカーブを持ったシャフトほど登りやすいと考えてください。何故登りやすいかといえば――、登る時にはアックスを振って先端部分(ピックという)を氷に5mm程度がめり込ませるのですが、めり込ませたのを下に引くと氷への掛かりが垂直のほうが効いてくるんです。
アックスのピックの形状を見てもらうとわかるんですが、ピッケルは半円形に対してアックスは少し反り返っているのがわかります。

先端(ピック)の形状に注目! 上がピッケル、下がアイスアックス。アイスアックスは先端が反っているのがわかる

 

植田さん: ピックを氷にめり込ませて、下に引く力が加わると、接雪面にピックが乗ってきて抜けにくくなります。一方、シャフトが真っ直ぐな場合は荷重をかけたときに、抜ける方向に力が行きやすくなります。ピックの入りが悪いコンディションでは、力が逃げやすくなります。
壁が垂直だったり、かぶってくる場所だったりで、ぶら下がるような格好になる場所では、垂直に刺さるカーブを持ったアックスのほうが登りやすくなります。

編集部T: ピッケルではアイスアックスとしては厳しいですか?

植田さん: ベテランの人に聞くと、昔はピッケルを使っていたと聞くので無理ではないと思いますが、自分の年代だと使ったことはありません。登れないことはないとは思いますが、アックスのほうが圧倒的に楽だし、安全性も高くなると思います。
ほかにも、レベルが上がればアイススクリューなど必要になってきますが、まずはアイゼンとアイスアックスについて考えると良いと思います。

 

上級者のスポーツだが、できる環境は増えてきている!

編集部T: 冬山とクライミング、両方の技術と装備が必要となると、始めるのは簡単ではないですね。

植田さん: アイスクライミングは、用具面でも技術面でも求められる要件が高い世界ですが、今は人工のゲレンデもあるので、昔より入りやすい環境が整ってきていると思います。
前に挙げた人工の施設では初心者向けの講習会を定期的に行っています。また、ICI石井スポーツでも岩場でのクライミングの講習会は行っています。
一般的には、ロープを掛けたり、確保してもらったりなどが必要なので、知識のない人が一人で行って気軽に始められるというものではありません。道具と知識に精通している上級者のものとなりますが、魅力的なスポーツですので、体験会などの機会を見つけてぜひ一度トライして欲しいと思います。

 

冬山用品 クライミング
教えてくれた人

植田 寿洋(石井山専新宿東口ビックロ店 勤務)

石井山専新宿東口ビックロ店で登攀具を担当。三度の飯より岩が好き。四季を通じて、沢登り、ロッククライミング、アイスクライミングを楽しんでいます。

石井山専新宿東口ビックロ店

首都圏最大級の山・アウトドアの大型専門店。「安全」をテーマに、ユーザーのライフスタイルに合わせたさまざまな商品を提案している。店内では、登山学校の講習やワークショップなども開催中。

住所/東京都新宿区新宿3-29-1 ビックロ 新宿東口店内 8F
TEL/03-5312-9550
営業時間/11:00~20:00
アアクセス/新宿三丁目駅A5直結、新宿駅・西武新宿線西武新宿駅下車徒歩5分  ⇒ホームページ

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