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とうとう降った!入笠山でスノーシュー アトラス/ツリーライン25[モンベル]

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2016年01月25日

今月のPICK UP アトラス/ツリーライン25 [モンベル]

価格:2万6500円+税
重量:1.88kg (ペア)
カラー:1色
適合荷重:54~93kg
※サイズの大きいモデルもあり

メーカーサイトへ >>

喜び勇んでスノーフィールドに!

1月も半ばを過ぎ、やっと山々に雪が積もり始めた。とうとうスノーシューの出番である。しかし山岳地帯の天候は安定しない。そこで出発前に天気予報を吟味し、晴れ間が期待できる入笠山に向かった。南アルプスの北端に位置づけられ、標高は1955m。富士見パノラマリゾートのゴンドラを利用すれば、山頂駅から先はなだらかな起伏が続き、急峻な場所、危険な場所はない。そのため、スノーシューでの山歩きの入門に適した山として有名だ。

今回持参したのは、アメリカのアトラス社のニューモデル「ツリーライン25」。「25」とは長さが25インチ(63.5cm)ということで、適合荷重は54~93kgだ。体重67kgで荷物の重さが5kg程度の今回の僕には充分である。スノーシュー自体の重量は、ペアで1.88kg。体重が重い人や重い荷物を背負う人には、適合荷重68~113kgの31インチ(76.2cm)も用意されている。

裏面につけられたトランポンのツメの形状は、比較的シンプルだ。黄色いバンドで固定され、シューズと連動する前のツメは前進する際にしっかりと雪に食い込み、シューズの真下に当たる後ろのツメは横滑りを防止する。ツメの長さは、どちらも2cm程度だ。

雪を押さえる部分になる平たいデッキ部分には、雪がこびりつきにくい素材が使われている。薄くて軽量だが、張りがあってかなり丈夫なようだ。

らくらくの新しいバインディングシステムとヒールリフト

山頂駅でゴンドラを降ると、小雪ながらも悪くはない天気。

ここから滑り降りていくスキーヤー、スノーボーダーを脇目に、ひとりスノーシューをシューズに取り付けた。

「ツリーライン」の最大の特徴は、なんといっても新型のバインディングシステムだ。

装着はシューズをバインディングに乗せてから、黒い樹脂製のテープを横に引っ張るのみ。これだけでつま先と甲の2カ所が一気に締められ、緩みはなくなる。そして、ほどよいフィット感が得られるのだ。

反対に外すときは、化学繊維で織られたテープを装着時と逆側に引っ張ればいい。

これまた一気に緩み、簡単にシューズを外せる。単純な作業なので、グローブをしたままでも非常に楽だ。また、バインディングは保水しない素材なので、低温下でも硬化しにくく、重くもならない。

かかと部分の固定も同様に簡単だ。

こちらもストラップを引っ張るだけで、ストラップの孔に突起が引っかかり、完全に緩まなくなるのである。

慣れれば装着にかかる時間は1分程度ではないだろうか? 外すときは数十秒だ。僕はこれまでに多くのスノーシューを試してきたが、このバインディングのスピーディーさは、間違いなくトップクラス。この作業ですら面倒だと思う人がいるならば、もはやスノーシューで遊ぶ資格はないといってもよいだろう。

雪が積もった林道から登山道に移り、入笠湿原に入っていく。このあたりには今回のルートでもっとも急な下り坂がある。

すでに先行していた登山者のスノーシューの跡がついており、それを避けながら新雪の上を下って行く。パウダー状で柔らかく、気持ちがよい雪質だった。

いったんスノーシューを外して歩いてみると膝よりも上まで雪の中に埋もれたが、再びスノーシューをつければ沈み込みは10cmほどだ。いわゆる「浮力」は充分で、歩行にはまったく問題がない。もっとも、これはツリーラインだからというわけではなく、他メーカーでも25インチ程度の長さのスノーシューであれば、浮力はほぼ同様だろう。単純に、浮力はスノーシューの面積に比例するからである。

入笠湿原の碑の前から、もう一度、林道に戻る。

このときはごくわずかな登りだ。

下り坂ではあまり実感できなかった、スノーシュー裏面のツメの効きがわかるようになる。

先に書いたようにツメの長さは約2cm。だが踏み込むと雪には5cmほど突き刺さり、しっかりと雪をとらえてくれる。前方に進むためのグリップ力も問題はないようだ。

マナスル山荘の前まで進み、山頂に向けて登り始める。

緩やかな登山道が少しずつ急になり、スノーシューの角度も前方が上がった斜めの状態に。そのまま歩き続けているとふくらはぎの裏が張り、次第につらくなってくる。そろそろヒールリフトバー(ヒールリフター)を上げたほうがいいタイミングだ。

デッキのかかとの部分に倒されていたヒールリフトバーを立て、その上をシューズで踏む。かかとが5cm上がる。これで雪の斜面に対してスノーシューが水平気味になり、傾斜があまり気にならなくなった。ふくらはぎの緊張もなくなっている。

下の写真は、その状態がわかりやすいように足から外して撮影したものである。かかとが上がると同時につま先のツメが雪に深く突き刺さるようになるのがわかるだろう。

ヒールリフトバー自体はスノーシューではポピュラーな工夫である。メーカーやモデルによって差が出にくいパーツではあるが、僕にはチェックしたい部分があった。それは登り坂が終わり、再びヒールリフトバーを倒したくなったときの「手間」の問題だ。

どんなスノーシューでも、バーに手を伸ばして直接倒せばいいことではある。だが、そのためにわざわざかがむのは面倒なのだ。とくに荷物が重いと億劫になる。だから僕はいつもトレッキングポールの先端をバーに引っかけ、それをかかとで押すようにして倒している。だが、バーの固定力が必要以上に強いスノーシューもあり、結局手を伸ばして倒さねばならない場合も多いのだ。

しかしツリーラインはポールを軽くかかとで押すだけでバーが外れ、簡単に倒すことができた。だからといって、歩いているだけでバーが倒れることはなさそうだ。固定力が適度な感じで、とても使いやすい。リールリフトバーという基本的な仕組みでも、ツリーラインに不足はない。

先月掲載のスノーブーツとの相性も見る

ときおりパラついていた雪は完全にやみ、青空が広がってきた。

雪をまとった木々がとても美しい。このような風景を眺めながら歩くには、スノーシューは本当に適している道具だと実感する。

山頂に到着。それまでは充分に積もっていた雪は強風で吹き飛び、山頂付近だけは地面がなかば露出していた。森林限界も超え、標高のわりには高山気分が漂っている。

テストをしながらのんびり歩いても、山頂駅から1時間半。夏ならば30分程度の場所だ。

完全に晴れていれば眺望がすばらしいが、今回は薄曇りだった。だが八ヶ岳方向の視界は切れ、冬山の美しさは味わえる。

八ヶ岳自体は真っ白な雲のなか。しかし青空が見えるだけでも気分は違う。霧氷の上にさらに雪がうっすらと積もった樹木もきれいな絵になっていた。

山頂での短い休憩後、僕はバックパックから別のシューズを取り出した。この連載の前回でテストしたキーン「デュランドポーラーWP」である。アッパーが柔軟なこれを左足に履き、右足はアッパーが硬いアルパインブーツのままで、履き心地を比べようと考えたのだ。

バインディングで同じくらいの強さで締めつけると違いがよくわかる。アルパインブーツには圧迫感がほとんど感じられないが、柔らかなデュランドポーラーWPにはやはりいくらかの締めつけ感がある。だが、締めつけ感といっても、足に負担がかかるほどではない。他のスノーシューのように細いストラップ数本で固定するタイプならば、おそらく足に強い圧迫感をもたらし、不快なだけではなく、靴擦れを起こしたり、血行不良になって足先が冷えたりしたのではないだろうか。

その点、ツリーラインのバインディングは、ストラップのような「線」ではなく、大きなプレート状のパーツを用い、いわば「面」で固定するシステム。

ソフトなスノーシューズにも合わせやすいのであった。

下山中は先行者がつけたトレースを外れ、遠回りしながらさまざまな雪面を歩いてみた。

フカフカの新雪の上に自分だけの足跡をつけていくのは、雪山ならではの楽しみである。

坂道では斜面をトラバースするように使ってみる。すると、当然ながらシューズがスノーシューからずれてくる。

だがツリーラインの黄色いバンドは過度に伸びることはなく、シューズのずれはせいぜい写真程度。かかとがデッキの上から出てしまう程度である。荷重はスノーシューの上にかかったままになり、歩行に支障が出るほどではなかった。

ツリーラインにはとくに死角が見当たらない。1回使っただけでは耐久性などは判断しようがないが、総じてよくできていると感心した。なかでも簡単に脱着できるバインディングはすばらしく、誰にでも使いやすいはずだ。しかしながら、ツリーラインはあくまでも入笠山のような傾斜が緩やかで、柔らかめの雪質に向いたスノートレッキング用のモデルである。アイスバーンのようになった凍りついた斜面の登攀にはよりグリップ力が高い別のモデルを使うべきだ。だが、気軽に雪山を楽しむには、充分な実力を持っているのは間違いない。

記録・ルポ 冬山用品
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版)ほか著書多数。

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